難航するボンの国際交渉:日本提案で非公開に


ドイツ・ボンで開催されている国連気候変動会議3日目の交渉が続いています。

昨日、共同議長が提示した新しい合意素案はなんとか各国に受入れられ、それを基にした交渉が、「スピンオフ・グループ」と呼ばれる、論点毎に分けられた分科会で続けられています。

この分科会に分かれる前の全体会合で、会議の共同議長が分科会の交渉を非公開にする提案をしたことに対して、途上国グループが「いやオブザーバー(NGOや産業団体、労働組合などの政府代表団以外の参加者)に対してもオープンにするべきだ」と主張しました。

これに対し、日本が「本当の交渉は公開では行なわれない。パリまでの交渉を本格的にするためには非公開にするべき」と述べたため、結果として、交渉は非公開になりました。。

会議の透明性を保つことの意義や市民社会の参加を真っ向から否定するこの発言には、市民社会から大きな失望の声が挙がっています。

新しい国際枠組み成立の流れ(クリックすると拡大します)

しかし、昨日から今日にかけての交渉が、それによって加速したかというと、漏れ伝わってくる情報によっては、そうでもないようです。

国連気候変動会議の交渉では、終盤になると、会議が非公開になるのはよくあることです。

政治的な駆け引きが本格化するタイミングでは、そのようにした方がよいということは、暗黙の了解としてはあります。

ただ、現段階では、交渉はそのような局面にはほど遠く、交渉を非公開にしなければならない理由があるとすれば、交渉のための会議場の部屋が小さくて人があふれるということ以外にはあまり見当たりません(それはそれで大事な課題ではあるのですが)。

1週間の会議も折り返し地点。

12月のパリでのCOP21に向けて、充分な素地を作れるかどうか、正念場に入ってきています。(温暖化担当:山岸)

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自然保護室長(気候エネルギー・海洋水産・生物多様性・金融)
山岸 尚之

立命館大学国際関係学部に入学した1997年にCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催されたことがきっかけで気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大学を卒業後、9月より米ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連気候変動会議に毎年参加し、国際的な提言活動を担当。2020年より自然保護室長。

京都議定書が採択されたときに、当地で学生だったことがきっかけでこの分野に関心をもち、大学院を経てWWFに。以来、気候変動(地球温暖化)という地球規模の問題の中で、NGOがどんな役割を果たせるのか、試行錯誤を重ねています。WWFの国際チームの中でやる仕事は、大変ですがやりがいを感じています。

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