国境を越えて旅する「渡り鳥」たちの視点から(動画あり)


自然保護室の安村です。
アサリやハマグリなどの豊かな漁場であり、渡り鳥の重要な飛来地でもある黄海の沿岸。

その一角に位置する中国北東部、遼寧省の鴨緑江干潟に先月行ってきました。

黄海沿岸でも特に肥沃なこの一帯は、生物多様性を保全しながら、環境負荷の少ない暮らしを実践していく必要のある、私たちにとっても大事なフィールドです。

今の時期、ここには何万羽ものシギやチドリが大集結します。

これから始まる繁殖の季節に向けて、ここで可能な限りのエネルギーを蓄え、シベリアやアラスカへと旅立つためです。

しかし、いくら数が多くとも、遠く広大な干潟に舞い降りた鳥たちをはっきりと見るのは簡単ではありません。

ここには私も何度か訪れていますが、特に映像の撮影はうまく行ったためしがありませんでした。

そこで今回は、バードウォッチングに使うフィールドスコープ(望遠鏡)に、スマートフォンを組み合わせるパーツを自作。撮影に挑戦してみました。

自作のアダプター。材料費500円!

結果はご覧のとおり。

風でちょっと振れますが、脚にフラッグを付けたオオソリハシシギを、間近で見ることが出来ます。

渡り鳥の飛来を楽しみにしているのか、強風が吹きつける干潟には、地元の人たちも集まっていて、撮影しているといつの間にか、画面の周りに人だかりが。ちょっとした観察会のようになりました。

急激な沿岸の開発により、自然とその恵みが脅かされているこの黄海。

実は、日本にも深いかかわりがあります。

ここを訪れる渡り鳥は、日本にもやってくるだけでなく、日本で消費されるアサリなどは多くがこの海で生産されているためです。

国境を持たない鳥たちの視点から、この自然を未来に引き継ぐ取り組みを、続けてゆかねばと思います。

 

関連情報

右脚上の黄色フラッグ。左脚下にもメタルリングが付けられていたことから、越冬地であるオーストラリア北西部で放鳥された個体だと思われます。

ちょっとした観察会。動画再生している画面を動画撮影する強者も!

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自然保護室長(淡水・リーダー開発・PSP)
安村 茂樹

修士(生物化学・早稲田大学)
サンゴ礁センター駐在時に地域住民主体の環境調査を立ち上げ(現在も石垣島、久米島で継続中)。南西諸島域にて、多分野の研究者と協働した野生生物有害化学物質汚染調査、生物多様性評価調査を指揮。GIS手法を用いた保全重要域図は生物多様性条約で示されたEBSAに、野外調査ではオキナワトゲネズミ再発見や久米島沖のサンゴ大群集発見に寄与。UNEP/GEF黄海プロジェクトと連携した日中韓湿地保全活動をリードし、2020年より緊急支援や淡水・教育活動に関わる部門を統括。

沖縄のサンゴ礁と森、中国・韓国の干潟の保全に従事。国際会議でサイドイベント主催やロビー活動をする機会をいただきました。国際、環境、NGO-この3ワードが合わさるWWFで、何をすべきか考え、その仕事の醍醐味を実感し、行動する。そんな機会を一人でも多くのスタッフに提供したいです。晴れの日に気が向いたら、自転車で通勤し、休みは、川でカヌー漕いでいます。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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