©Kazuo YAMADA/WWF Japan

地球の大先輩!幾度もの大量絶滅を乗り越えてきたサンゴたち


私は、自然保護活動を推進するスタッフをサポートする傍ら、大学院で群集生態学の研究をしています。自然保護のためには、食う食われるなど、そこに生息する個体間の相互関係から、水、大気などの無機的環境も含めた群集レベルの相互関係を総合的に理解することが必要です。

複数種が共存するサンゴ群集
©Kazuo YAMADA/WWF Japan

複数種が共存するサンゴ群集

先日、沖縄県石垣島白保にあるしらほサンゴ村に出張をする機会がありました。白保の海にはアオサンゴの世界最大とも称される群集が広がっています。「アオ」サンゴという名ですが、実は青いのは体内の骨格で、表面は赤っぽい褐色がかった色に見えます。

アオサンゴは八放サンゴ亜綱で8本の触手を持ち、宝石サンゴとよばれる比較的深海に生息するサンゴや、サンゴ礁でよくみられるソフトコーラルと呼ばれる種の系統に属します。

また、サンゴは1ミリ程度の巾着袋のような形状をしているポリプの集合体で、イソギンチャクやクラゲの仲間の刺胞動物です。サンゴは、炭酸カルシムを主成分とする骨格を生成し、年間数ミリから数センチずつ成長し、産卵による変異、分散による遺伝子流動、自然選択による進化を繰り返し、種ごとに異なる複雑で個性豊かな形を作りながら、複雑な海底を作り出すことによって、多様な海洋生物の住処になります。

サンゴは、こうした命の繰り返しによって幾度もの大量絶滅を乗り越えてきました。

ツツユビミドリイシのポリプ
©Kazuo YAMADA/WWF Japan

ツツユビミドリイシのポリプ

しかし、世界海洋生物種アセスメントの報告では、世界の造礁サンゴの約1/3は、地球温暖化などによる急激な環境変化に適応できず、絶滅の危機に瀕していることがわかりました。サンゴの絶滅は海洋生態系システムの崩壊を招く恐れもあり、バランスが崩れてしまった生態系は容易に回復できません。

私たちにできることとして、陸域からの赤土流入防止など地域の人たちが取り組む活動や、地球全体の環境負荷を減らすなど、それぞれのスケールでの対策を、これからも応援してゆかねばと思います。(企画管理 山田)

サンゴ礁生態系でイソギンチャクと共生するセジロクマノミ
©Kazuo YAMADA/WWF Japan

サンゴ礁生態系でイソギンチャクと共生するセジロクマノミ

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企画管理室 IT担当
山田 一夫

修士(地球環境学/ 上智大学)
専門はPopulation Biology。ロッタリモデルを使用して地球温暖化により減衰するサンゴの個体密度を推定する研究。現在は、地球温暖化によるサンゴー共生藻複合体の共生進化速度の変化を推定する数理モデルを研究中。
海とダイビングをこよなく愛し、ダイバーや研究科の仲間たちとGlobalな環境保護活動に取り組んでおります。

局内ではIT担当として局内情報機器インフラおよびスタッフの機器利用等のサポートを通じて環境保護活動に参画しております。

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環境保全団体です。

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