北海道・ラムサール条約湿地ウトナイ湖の生命線「美々川」流域開発方針の差し戻しを 国内三大環境保全団体である日本野鳥の会、日本自然保護協会、WWFジャパンが北海道知事に要望書を提出
2026/04/24
奇跡的に残された美々川流域の豊かな自然に開発の危機
(公財)日本野鳥の会、(公財)日本自然保護協会、(公財)世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は連名で、美々川流域での市街化調整区域の規制緩和を行わないよう、強く求める要望書を北海道知事宛てに提出しました。
ラムサール条約*湿地ウトナイ湖に注ぐ美々川とその周辺に残る湿原や河畔林は、道内でも有数の豊かな生態系を保ち、希少鳥類をはじめ多くの渡り鳥が利用する国際的に重要な自然環境です。美々川は北海道の「美々川自然再生事業」が進められているほか、「生物多様性条約国家戦略」を受けた「北海道生物多様性保全計画」および「苫小牧市生物多様性地域戦略」でも、ウトナイ湖と連動し生物多様性の保全を図るべき重要な地域に位置づけられています。
美々川流域を含む美沢地区は、これまで市街化調整区域として開発が制限されてきましたが、北海道が策定する「苫小牧圏都市計画 都市計画域の整備、開発及び保全の方針」の中間見直しに伴い、苫小牧市都市計画審議会に承認された「美沢地区土地利用方針(以下、対象方針)」を受け、大規模な半導体工場進出を契機とした物流倉庫等が建設可能となる規制緩和が進められようとしています。
国・道・市が進めてきた保全事業と矛盾するこの動きに対して、環境保全3団体は、北海道知事宛てに美々川流域での市街化調整区域の規制緩和を行わないよう、対象方針の苫小牧市への差し戻しを強く求める要望書を提出しました。
なお、日本野鳥の会は単独で、対象方針を審議する「北海道都市計画審議会」に対しても同日同様の趣旨の要望書を提出します。
<要望書の主なポイント>
- 美々川流域周辺に生息するタンチョウなど希少鳥類や渡り鳥に深刻な影響を及ぼす恐れがあるため、十分な精査を行うよう対象方針を苫小牧市に差し戻すこと
- パブリックコメントの結果とその対応について、地域の自然環境の重要性から北海環境審議会等にて複合的かつ慎重な審議を行い、その過程を公開すること
- 奇跡的に残された美々川流域の自然を、道自然環境保全地域もしくは環境緑地保護地区に指定すること
- 開発計画には地域の合意形成を条例等で義務付けること
美々川は希少種タンチョウにとって極めて貴重な新天地

美々川を利用するタンチョウ
美々川流域とその周辺の湿地、草原、河畔林などは、タンチョウ、オオワシ、オジロワシなどの希少鳥類やオオハクチョウ、マガンなどの渡り鳥が利用する生物多様性豊かな自然環境です。特に、国の特別天然記念物で、国内希少野生動植物種に指定され保護増殖事業が進められているタンチョウの最も西に位置する生息地であり、将来的には営巣する可能性も十分に考えられます。
また保護増殖事業計画においても感染症回避等のため道東地域からの分散化が進められており、冬期の餌資源が確保できる美々川流域はタンチョウにとって極めて貴重な生息地です。物流倉庫の建設などによる河畔林の消失は、生息環境の悪化につながると強く懸念されます。
美々川について

全国的にも珍しい原始の姿を残す美々川
美々川はウトナイ湖に注ぐ主要河川で、全国的にも珍しい直線化する河川改修がされていない、原始の姿を残した川です。この蛇行流路では、水の流れの速さや深さの違いから、それぞれの環境を好む魚類や水草などの生物が生息・生育することができます。河川周辺にはヨシが広がる湿原や河畔林など多様な植生が存在し、タンチョウをはじめとした様々な野鳥や哺乳類の利用があり、生物多様性が非常に高い場所です。また、原始の河川景観が残る美々川はカヌーで下るエコツアーなどでも利用されています。
ウトナイ湖について

国際的に重要なラムサール条約湿地ウトナイ湖
ウトナイ湖は、1991年に日本政府により「国際的に重要な価値をもつ湿地」としてラムサール条約に登録されています。また国際的な基準による重要野鳥生息地(IBA)にも選定され、東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ(EAAFP)の生息地ネットワークへの参加基準を満たす自然環境が残る貴重な場所です。美々川からウトナイ湖にかけての流域は、勇払原野本来の原生的自然環境が残されており、様々な保護対策がとられていますが、周辺の工業基地計画や新たな土地利用の変化による孤立化など、常に開発と隣り合わせとなっています。
*ラムサール条約:特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約
参考資料
・資料1:北海道知事宛て「美々川流域(美沢地区)における市街化調整区域の規制緩和と今後の保全のあり方に関する要望書」
・資料2:北海道都市計画審議会宛て「苫小牧圏都市計画区域の整備、開発および保全の方針に対する要望書」(日本野鳥の会ウェブサイト)
・「勇払原野を支える美々川の自然環境を守る」(日本野鳥の会ウェブサイト)



