美々川流域(美沢地区)における市街化調整区域の規制緩和と今後の保全のあり方に関する要望書


日野鳥発第2026-002号
令和8年4月24日
北海道知事 鈴木 直道 様

公益財団法人日本野鳥の会
理事長 遠藤 孝一

公益財団法人日本自然保護協会
理事長 土屋 俊幸

公益財団法人世界自然保護基金ジャパン
(WWFジャパン)
会長 末吉 竹二郎

美々川流域(美沢地区)における市街化調整区域の規制緩和と
今後の保全のあり方に関する要望書
 
日頃より、我々自然保護団体が行う自然保護活動に関しまして、深いご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
苫小牧市都市計画審議会で令和8年1月21日に承認された「美沢地区土地利用方針(以下、対象方針という)」を受けて、令和8年10月に予定されている「苫小牧圏都市計画区域の整備、開発および保全の方針」の中間見直しにおいて、美沢地区の市街化調整区域の規制緩和が検討予定となっています(対象範囲は別紙1参照)。
市街化調整区域である美々川流域は、道内でも有数の豊かな生態系と希少鳥類の生息地となっていますが、周辺の土地開発による生態系への影響が懸念されてきました。美々川では、胆振総合振興局室蘭建設管理部により美々川自然再生事業が進められてきており、さらには、国の「生物多様性国家戦略」を受けた「北海道生物多様性保全計画」、および「苫小牧市生物多様性地域戦略」において、当該エリアはラムサール条約湿地であるウトナイ湖と連動し、生物多様性の保全を図るべき重要な地域として位置づけられています。このような自然再生事業等によって、対象範囲の美々川流域とその周辺湿地では自然環境の回復傾向が見られています。
美沢地区の市街化調整区域の規制緩和により、美々川流域とその周辺湿地の自然環境への影響が強く懸念されることから、下記の通り要望いたします。
 
1.対象方針の差し戻し
対象方針の運用は、対象範囲の美々川流域とその周辺湿地における希少鳥類(タンチョウ、オオワシ、オジロワシ等、別紙2参照)の生息や、オオハクチョウやマガンなどガンカモ類、ホオアカやコヨシキリなどの草原性の渡り鳥の利用に深刻な影響を及ぼす恐れがあります。ワシ類やガン類、タンチョウなど大型の種は人為的な攪乱に対して脆弱で、倉庫等の建設による生息地放棄が発生すると考えられることから、人為的影響の回避が必要です。
特に、国の特別天然記念物で、種の保存法に基づき国内希少野生動植物種に指定され、保護増殖事業が進められているタンチョウは、苫小牧市が北海道で最も西に位置する生息地です。対象範囲にあたる美々川流域とその周辺は、越冬期のねぐらとして利用されています。良好な環境を有していることから、今後も越冬羽数の増加が見込まれ、将来的には営巣する可能性も十分に考えられます。
また、感染症回避等のため保護増殖事業計画においても道東地域からの分散化が進められており、道央圏での生息数が回復しつつあるなか、冬期の餌資源が確保できる美々川流域は、タンチョウにとって極めて貴重な生息地です。対象範囲の美々川流域の河畔林は、隣接する国道36号等からの騒音や光害などを遮る「物理的・視覚的なバッファー(緩衝帯)」として機能しており、物流倉庫の建設などにより美々川流域の河畔林が消失すればタンチョウの利用環境が悪化することが予測されます。
さらには対象範囲には上下水道が未整備であるため、事業活動が行われれば排水や河畔林伐採に伴う土砂が、地下水脈や表流水を通じて美々川に流入し、下流に位置するラムサール条約湿地のウトナイ湖の水質や湿地生態系に影響を及ぼす恐れがあります。
また、苫小牧市議会においては、対象方針は苫小牧市都市計画審議会において十分な議論を経ずに決定されたこと、市のこれまでの美々川流域の自然環境保全を重視する取組との矛盾等が指摘されるなど、市議会が紛糾したことが報道されています(月刊ひらくNo.96、No.97、2026年2月20日、3月20日発行)。さらに、2026年3月3日開催の一般会計予算審査特別委員会を傍聴したところ、審議会で配布された詳細資料の事前配布がなかったこと、再審議の必要性があることを指摘する発言がありました。
これらのことから、対象範囲での市街化調整区域の規制緩和が自然環境に及ぼす影響について十分な精査を行うため、対象方針を苫小牧市に差し戻すことを強く要望します。

2.北海道都市計画審議会での慎重な審議と情報公開
 「苫小牧圏都市計画区域の整備、開発および保全の方針」の中間見直しについて、パブリックコメントが実施され、検討が進められています。意見聴取の結果とその対応方針について、自然環境への配慮事項を含めた北海道都市計画審議会での審議にとどまらず、地域の自然環境の重要性からも、北海道環境審議会等においても複合的かつ慎重な審議を行い、審議に関する資料および審議過程の公開を行うことを求めます。

3.美々川の法的な環境保全措置の検討
 規制緩和の対象となる美沢地区を流域に持つ美々川は、前述のとおり国指定鳥獣保護区特別保護地区かつラムサール条約湿地であるウトナイ湖への流入河川のひとつであり、また生物多様性地域戦略で保全を図るべき重要な地域とされる貴重な自然環境を残しています。さらに、自然再生事業等の成果で劣化が見られた場所の回復傾向が見られるようになっています。しかし現在、開発行為に関する法的な規制がないことから民有地での河畔林伐採等がすでに進行しており、豊かな自然環境の消失が懸念されます。
 対象方針による市街化調整区域の規制緩和は、国・道・市が進めてきた保全事業と矛盾するものです。また、税金を投じて復元しつつある自然環境が失われることは避けるべきだと考えます。
 これまで奇跡的に残されてきた美々川流域の自然環境を保全するため、貴庁には法的な環境保全措置として、美々川を道自然環境保全地域、もしくは環境緑地保護地区へ指定されることを強く要望いたします。

4.地域の合意形成の義務化
 美沢地区の市街化調整区域の規制緩和を容認するものではありませんが、仮に規制緩和が実施され、その後に企業が進出を計画し、特段の事由により計画を進めざるを得ないと判断された場合においても、事業者の任意の環境配慮に委ねるのではなく、河川からの離隔距離の確保や自然保護団体を含む地域のステークホルダーとの合意形成などの保全措置を条例等で義務付けるよう制度化することを求めます。
 なお、このような制度設計を行うことで地域紛争を事前に回避でき、事業を円滑に進めることが可能となると期待できます。
以上

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