日本企業のSBT取得・コミットが2,000社超え、5年で20倍に ~プライム上場企業の18%がSBT認定・コミット。2040年以前に ネットゼロに達成することでSBT認定を受けた日本企業は13社に~


公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区、会長:末吉竹二郎、以下 WWF ジャパン)は、企業の温室効果ガス排出削減目標である「SBT(Science Based Targets )」(※)の日本企業の取得状況を継続してモニタリング・分析しています。今般、SBT認定の取得または2年以内に認定を取得することを約束(コミット)する日本企業の数が2,000社を超えたことを発表します(2025年10月現在)。

これは、100社に達した2020年6月から約5年間で20倍に増えたことになります。同じく2025年10月現在で、東証プライム市場上場企業1,612社のうち約18%ならびに、日経平均構成銘柄に選定されている企業のうち117社(約52%)がSBT認定を取得もしくはコミットしていることが分かりました。また、国際的なネットゼロ目標年である2050年を10年前倒した2040年もしくはそれ以前に、ネットゼロを実現することでSBT認定を取得した日本企業は、13社となりました。
調査結果URLhttps://www.wwf.or.jp/activities/activity/6070.html

なお、日経平均株価構成銘柄に選定されている225社の脱炭素化の取り組み状況は、WWFウェブサイトに公開しています。https://www.wwf.or.jp/activities/activity/5512.html

(※)SBT(Science Based Targets)とは、パリ協定が求める⽔準と整合した、企業が科学に基づいて設定する温室効果ガス削減目標のこと。https://sciencebasedtargets.org/ 2015年にWWF、CDP、世界資源研究所(WRI)、国連グローバル・コンパクトにより設立された共同イニシアティブであるSBTi (Science-based Targets Initiative)がSBT認定を取得した企業やコミットした企業を公開している。

調査結果サマリー

  • 2015年に取り組みが始まって以降、全世界でSBT認定を取得した企業、または2年以内に取得することを約束(コミット)した企業は急速に増えてきており、2025年1月にはその数は世界全体でついに10,000社を超えました。日本企業の数をみると、2020年時点では100社でしたが、5年間で20倍に増え、2025年10月には2,000社を突破しました。日本はSBT取得・コミットした企業の数で世界第1位となっています。
  • 2025年10月時点で東京証券取引所プライム市場に上場する日本企業1,612社のうち約18%がSBT認定・コミットをしていることがわかりました。また2025年10月時点で日経平均構成銘柄企業225社のうち117社(約52%)がSBT認定・コミットをしており、これは2024年10月時点から比較するとわずか1社の伸びに留まりました。
  • また長期的にネットゼロに達成する目標年を定めるネットゼロ基準において、認定を取得した日本企業は91社となりました。このうち、13社が国際的なネットゼロ目標年である2050年を10年前倒しする2040年(※)もしくはそれ以前をネットゼロ目標年に定めています。(※2040年度を含む)
  • 非製造業のSBT認定・コミットが多い傾向にあるSBT認定取得・コミット企業数世界第2位、第3位のイギリス・アメリカと比較すると、日本は製造業のSBT認定が多い傾向にあることが特徴であることがわかりました。また日本では中小企業のSBT認定の割合が高いであることも特徴で、全世界(約42%)と比較すると日本の認定コミット企業に占める中小企業の割合(約79%)は突出して大きくなっています。
  • プライム上場企業のSBT浸透率を17業種別に見ると医薬品(42.4%)、電機・精密(41.7%)、建設・資材(40.8%)が高く、商社・卸売(6.6%)、金融(除く銀行)(4.0%)、電力・ガス(0%)、エネルギー資源(0%)、銀行(0%)は取り組みが遅れていることが明らかになりました。
業種区分 企業数 認定コミット数 割合
医薬品 33 14 42.4%
電機・精密 156 65 41.7%
建設・資材 125 51 40.8%
自動車・輸送機 51 14 27.5%
不動産 49 9 18.4%
食品 75 13 17.3%
素材・化学 147 30 20.4%
機械 112 19 17.0%
情報通信・サービスその他 367 50 13.6%
鉄鋼・非鉄 41 4 9.8%
運輸・物流 55 6 10.9%
小売 132 12 9.1%
商社・卸売 122 8 6.6%
電力・ガス 22 0 0.0%
金融(除く銀行) 50 2 4.0%
エネルギー資源 10 0 0.0%
銀行 68 0 0.0%
プライム上場企業業種区分別のSBT認定取得・コミットの状況(2025年10月現在)。企業数は銘柄ベースでカウントしているため、合計が1,612よりも多くなっている。(SBTi公表資料よりWWFジャパン集計)

WWFジャパンの考察

これらの結果は、日本企業の間でSBTの設定が広く浸透してきていることを裏付けていると考えられる。特にイギリスやアメリカと比較しても日本はサプライチェーンの裾野の広い製造業で大企業のSBT取得が進んだことにより、日本の中小企業のSBT取得を強く後押しし、その結果、認定・コミット企業数で世界第1位となったことが考えられる。

WWFジャパン 気候・エネルギーグループ 羽賀秋彦コメント

2024年8月に、SBT認定コミット企業数で日本がイギリスを抜き世界で第1位となって以降、日本企業のSBT認定コミット数は伸び続けています。また、2040年以前にネットゼロ目標を設定する企業も13社(うち11社がプライム上場企業)と増えており、こうした日本企業のリーダーシップを歓迎します。特にものづくりの国・技術の国ニッポンとして電機・精密、建設資材、自動車部品といった製造業・技術集約性の高い産業で、大企業を起点にしたバリューチェーン全体での脱炭素ドミノが現実となっていることは頼もしいことです。

その一方で、取得が遅れるセクターは単に1.5度経路に沿った野心的な削減目標の設定がされないだけでなく、国際スタンダードから逸脱した目標設定・対策をしているケースも散見されており、グリーンウォッシュと批判されるリスクもはらんでいます。早急の軌道修正が必要です。日本政府が示す日本の次期NDCが野心を欠き、また国際的にも気候変動政策は停滞気味です。そのような中、今や企業の気候アクションが脱炭素社会の実現の推進力となっています。

調査方法

・ 2025年10月時点の東証上場銘柄一覧( https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/misc/01.html )よりプライム市場に上場している企業を対象に調査を実施。(外国株は除く)

・ SBT取得状況については、SBTiウェブサイトに公表されているデータセットをもとに調査。(調査結果は2025年10月3日現在)https://sciencebasedtargets.org/companies-taking-action

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