WWFジャパン「地域と一緒に!漁網のみらいプロジェクト」発足 宮城県気仙沼市と協働で漁網を回収、そしてリサイクルへ


公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン(東京都港区、会長:末吉竹二郎、以下WWFジャパン)は、環境月間間近の「530(ゴミゼロ)の日」にちなみ、本日、使用済み漁網の回収・リサイクルを通じて漁業者による漁具の管理を促すプロジェクト「地域と一緒に!漁網のみらいプロジェクト」を発足し、宮城県気仙沼市と協働で、使用済み漁網を回収しリサイクルするプロジェクトを開始することを発表しました。

■背景にある「ゴーストギア」問題
海洋プラスチックごみは、最も急速に悪化している国際的な環境問題の一つです。海洋に流出しているプラスチックは、推定で年間1,100万トンと言われ、なかでもウミガメや海鳥といった生物に深刻な被害を与えているのが「ゴーストギア」、つまり海に流出した漁網やロープ、釣り糸などの漁具です。そのほとんどは、プラスチックでできており、年間50万~115万トンと推定されています。

■気仙沼市との協働でゴーストギアの発生予防
本プロジェクトは、この問題の解決策の一つとして、WWFジャパンがいつくかの水産都市の自治体と漁協など地域の協力を得て「ゴーストギア」の発生予防に取り組むものです。今回プロジェクトを開始するのは宮城県気仙沼市です。2019年に「気仙沼市海洋プラスチックごみ対策アクション宣言」を制定し、海洋プラスチックごみゼロを目指し、海岸清掃、海中ごみの回収、海ごみ回収ステーションの設置など、積極的な対策を行なっています。

海洋プラスチックごみ問題に先進的に取り組む気仙沼市に対し、かねてより同市教育委員会と教職員向けESD(持続可能な開発ための教育)研修を行なっていた繋がりから、WWFジャパンより漁網回収・リサイクルの協働について、気仙沼市に提案。そして、漁協を通じて、まずサケ刺し網などを対象に、回収を開始することになりました。使用済みになった漁網を無償で回収することで、漁業者の経済的負担を軽減しつつ、漁具の管理に対する意識を高め、ゴーストギアの発生を予防します。

使用済み漁網の回収とリサイクルは、米国のリサイクル専門会社、テラサイクルジャパン合同会社が、マテリアルリサイクルを行ない、再生プラスチック原料としたうえで、スポンサー企業の協力を得て製品化を行なう予定です。

■新たな海洋教育プログラムを通じて地域コミュニティ全体で応援
使用済み漁網の回収は、海洋プラスチックごみの発生を抑制し、気仙沼市の主要産業である漁業を持続可能にすることで、地域コミュニティの持続性にもつながります。そこで気仙沼市教育委員会と般社団法人3710lab(みなとラボ)との連携によって、新たな海洋教育カリキュラムを開発。漁業者の漁具管理、役目の終わった漁具の回収・リサイクルの取り組みを題材の一つとして取り上げ、2022年度中に展開する予定です。

このように子どもたちの学習を通じて、漁網の資源循環と持続可能な漁業に取り組む漁業者をそこに暮らす市民が応援し、「漁網のみらい」について考えます。使用済みの漁網が海に流出して「ゴーストギア」となることなく、美しい海が次世代につながっていく、そんな未来を目指します。
WWFジャパンでは、今後、他の水産都市の自治体にも、本プロジェクトへの参画と協働を拡げていきます。

★本件に関する記事に掲載可能な写真は下記よりダウンロードください(クレジット表記が必須です)。
https://wwfj.box.com/s/6dmkt8x1ae34dbvm0evow9ya5vte5wuj

●「地域と一緒に!漁網のみらいプロジェクト」について
https://www.wwf.or.jp/campaign/gyomo-mirai/
「地域と一緒に!漁網のみらいプロジェクト」は、使用済み漁網の回収・リサイクルを通じて漁業者による漁具の管理を促すプロジェクトです。漁網の資源循環と持続可能な漁業に取り組む漁業者を、そこに暮らす市民が応援し「漁網のみらい」について考えます。使用済みの漁網が海に流出して「ゴーストギア」となることなく、美しい海が次世代につながっていく、そんな未来を目指します。

●「気仙沼市海洋プラスチックごみ対策アクション宣言」および「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」について
https://www.kesennuma.miyagi.jp/sec/s028/020/010/010/040/050/20190904151412.html
東日本大震災で壊滅的被害を受けた宮城県気仙沼市は、「海と生きる」を掲げ、地域の復興とともに、持続可能な未来に向けて取り組んでいます。2019年に制定した「気仙沼市海洋プラスチックごみ対策アクション宣言」の下、海洋プラスチックごみゼロを目指し、海岸清掃、海中ごみの回収、海ごみ回収ステーションの設置など、積極的な対策を行なっています。

●気仙沼市の海洋教育について
https://www.kesennuma.miyagi.jp/edu/s162/kaiyouedu.html
水産業を基幹産業とする「海と生きる」まち、気仙沼市では、子どもたちが海と地域とのかかわりに触れ、考えることが可能な、多彩なカリキュラムが実施されてきました。2022年現在、公立の幼稚園と小・中・高等学校の多くがESDの推進拠点となるユネスコスクールに加盟するとともに、海を通して・海について学ぶ「海洋教育」に取り組んでいます。

●一般社団法人3710lab(みなとラボ)について
https://3710lab.com/
「海・学び・ヒト」をテーマに、「学び」のアイデアや新しい時代の教育のあり方を考えるためのプラットフォームです。学校の教育現場や地域社会、市民活動において、海や学びにまつわる様々な情報を集約し、その学びに秘められた「大人たちが子どもたちのために残したい、守りたい、伝えたい、と思う海にまつわるストーリー」を実践的なワークショップを中心としたイベントやウェブメディアを通してお届けしています。

●WWFについて
https://www.wwf.or.jp
WWFは100カ国以上で活動している環境保全団体で、1961年にスイスで設立されました。
人と自然が調和して生きられる未来をめざして、サステナブルな社会の実現を推し進めています。特に、失われつつある生物多様性の豊かさの回復や、地球温暖化防止のための脱炭素社会の実現に 向けた活動を行なっています。

関連情報

■パネル展も6月5日まで同時開催!
本プロジェクトを紹介するパネル展(主催:WWFジャパン、共催:気仙沼市、5/30~6/5 9:00-17:00、@気仙沼市まち・ひと・しごと交流プラザ)を開催中です。5/30は11:00開場、最終日は15:00閉場です。詳細はこちら  

■リサイクルプラスチックの製品化におけるスポンサー候補を募集
WWFジャパンとテラサイクルでは、ゴーストギアを減らしていく取り組みに賛同し、本プロジェクトにご協力いただけるスポンサー候補を募集しています。詳細は、WWFジャパン水産海洋グループfish@wwf.or.jpまで。ご連絡をお待ちしています。

助成:日本財団 海と日本PROJECT
https://uminohi.jp/
さまざまなかたちで日本人の暮らしを支え、時に心の安らぎやワクワク、ひらめきを与えてくれる海。そんな海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくため、オールジャパンで推進するプロジェクトです。

本件に関するお問い合わせ
WWFジャパンブランドコミュニケーション室 メディアグループ 新井
Email: press@wwf.or.jp

【速報】「地域と一緒に!漁網のみらいプロジェクト」進水式を開催

5月30日(月)、気仙沼市まち・ひと・しごと交流プラザで、本プロジェクト発足と気仙沼市との協働について、発表会を開催しました。

発表会には気仙沼市長の菅原茂氏も登壇。本プロジェクトへの期待を述べました。
「2019年に気仙沼市海洋プラスチック対策推進会議を立ち上げ、海洋プラスチック対策アクションプランを策定。海洋プラスチックごみは8割が陸域由来とされ、陸上での使い捨てプラスチックごみ対策や3Rを徹底。海への流出を抑制すると共に、海上でのプラスチックごみにも徹底した取り組みを行っている。
気仙沼市は、遠洋・沖合漁業の本拠地として全国屈指の水揚高を誇ると共に、沿岸域では養殖漁業や定置網漁業、小型漁船漁業が営まれており、水産業を基幹産業として発展してきた日本でも有数の水産都市である。多くの漁業ではプラスチック材料を使用しており、漁業者はその有用性を感じてきた。
その一方でプラスチックごみは私たちの生活の糧である魚に影響を与えているという事実もわかってきており、漁業を営む過程で発生するプラスチックごみ問題に、従来の意識を改革し、更なるアクションを起こす必要がある。
WWFジャパンから漁具の資源循環を考えたゴーストギア対策についての提案があり、漁業者の皆さんと気仙沼市も一緒になって使用済み漁網を回収してリサイクルをする事業に取り組もうということになった。海に責任をもって「海と生きる」民として、根気よく取り組むことが大切と考えている。この流れを気仙沼市だけのものではなく、日本中そして世界中に広げていき、海をきれいにしていきたい!そんな思いで気仙沼市は取り組む」

また、WWFジャパン海洋水産グループ長の前川聡は、本プロジェクトについて説明しました。
「ゴーストギアへの対策としては、発生の予防、被害の軽減、回収による環境の回復がある。なかでも予防策が重要と考えている。それには、漁業者の皆さんに適正な漁具管理の意識を持っていただく必要があり、その意識付けのきっかけとして、使用済みの漁網を無償で回収し、新たな製品にリサイクルする事業プログラムを設計、水産都市の自治体と協働して推進するプログラムである。
使用済み漁網の回収・リサイクルを通じ、漁業者の意識向上によりゴーストギアの発生を予防することが目的。
一方でリサイクルについては、リサイクル原料を使用した製品を製造するメーカーが多く参加していただく仕組みを整え、ビジネスとして成立させることが今後のポイントになる。その為には、リサイクル原料の製造コストを上げないためにも、使用済み漁網が「資源」になるような取扱いに協力をいただけるよう漁業者のご協力が必要である」
トークセッションでは、登壇者がそれぞれに本プロジェクトへの想いをメッセージとして発信しました。

▼WWFジャパン 海洋水産グループ 浅井総一郎
「地域と一緒に!漁網のみらいプロジェクト」という名称が示すように、このプロジェクトの主役は自治体と漁業者の皆さんを中心とした、地域コミュニティです。自治体が積極的に当プログラムを推進することで、行政の横連携を進めていただき、漁業関係者以外にもこの取組を拡げ、地域コミュニティ全体で漁業者を応援するような仕組みが重要と考えている。漁業者だけの内々の作業にせず、地域の人々も「一緒に」参加する仕組みで、漁業者の皆さんの取り組みを応援し、継続性を高めていきたい。

▼気仙沼市水産課 漁業振興係長 吉田浩義 氏
気仙沼市としても、2019年に海洋プラスチックごみ対策アクションプランを策定してから様々な取り組みを行なってきた。漁業者の中には以前よりゴーストギアへの意識が高い方もいるが、さらに多くの漁業者皆さんの意識を変えるきっかけを探していた。無料で使用済みの漁網を回収するという入り口から、漁具の管理の意識を高めていくことができるのではないかと考えた。漁業者はもちろん、漁協とも協力して回収していきたい。
教育員会に教育プログラムに、漁網回収について取り入れてもらうことで、漁業者の皆さんのモチベーションが高まり、長続きすると期待している。

▼気仙沼市教育委員会 副参事 佐藤慎也 氏
地域コミュニティを巻き込みながら進めるという方針で、教育を含めてもらうのはとても嬉しいと率直に感じている。気仙沼市では長年海洋教育に取り組んでおり、その核にあるのは「海と生きる」という考え。これは市全体で大事にされている考えで、学校では、漁業・水産業という地域の仕事、地域の課題にもスポットを当ててきた。子どもたちにとって、地域の課題を一緒に考えることは、非常に大切なことでありやりがいもある。
一方で、今回の「漁網」という設定はこれまでなかった。色々な面が鮮明に浮かんでくるのではないか。たとえば「漁網」という道具を使う人には、使ってきた文化があり、作る人と技術がある。その恩恵を受ける形でかかわる私たちもいる。そして、使う人が認識する今の課題があり、解決のための取り組みがある。そういった課題もひっくるめて、「海と生きる」を考えていきたい。そのためのよい機会と捉えている。

▼一般社団法人3710lab(みなとラボ)梶川萌 氏
学外で実施する教育プログラムでは、漁業に従事する人や地域の大人たちへ、実際に話を聞きに行くことから始める。今回のプログラムで何よりも大切なのは「対話」。実際に漁師さんたちと子どもたちが交流できる場面を設ける。漁師さんたちには思いや願い、未来への考えがある。また気仙沼という土地で、漁網を介して広がるつながりがある。子どもたちにとっても、生の声、空気を実感することはとても意味がある。漁網回収にとどまらず、漁網に対する漁師さんたちの思いや、その背景を探るプログラムにしていきたい。
そのために、漁師さんたちの思いや背景までも残せる形はどんなものか、子どもたちと一緒に考える。取り組みの背後にあるものをどう伝えるのか、この点を工夫して対話の魅力をさらに広げていければ。地域の人々を訪ね、子どもたちが見聞きしたことを、子どもたち自身と相談して「残る形」にしていきたい。これから小中学生を対象に募集を開始して、夏休みにプログラムを始める予定。

●WWFジャパン「地域と一緒に!漁網のみらいプロジェクト」発足発表会プログラム

① 開会のあいさつ WWFジャパン 海洋水産グループ長 前川聡
② 気仙沼市海洋プラスチック対策アクションプランの取り組みについて 気仙沼市長 菅原茂 氏
③ プロジェクト概要説明 WWFジャパン 前川聡 
④ トークセッション (ファシリテーター:WWFジャパン海洋水産グループ 浅井総一郎)
▼気仙沼市産業部水産課 漁業振興係長 吉田浩義 氏
▼気仙沼市教育委員会 副参事 佐藤慎也 氏
▼一般社団法人3710lab(みなとラボ)梶川萌 氏
⑤ 質疑応答
⑥ 閉会のあいさつ WWFジャパン ブランドコミュニケーション室 土山美咲

この記事をシェアする

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP