漁網のみらいプロジェクト 〜海と日本2022〜

project漁網のみらいを
地域といっしょにつくる

「地域と一緒に!漁網のみらいプロジェクト」は、
使用済み漁網の回収・リサイクルを通じて
漁業者による漁具の管理を促すプロジェクトです。
漁網の資源循環と持続可能な漁業に
取り組む漁業者を、
そこに暮らす市民が
一緒に応援し「漁網のみらい」について考えます。

future?

「漁網のみらい」はどんな未来?

使用済みの漁網が資源として循環され、
海に流出することなく、
「ゴーストギア」のない美しい海が、
次世代につながっていく、そんな未来を目指します。

problem

ゴーストギア問題

「ゴーストギア」とは、
海に流出した漁網やロープ、釣り糸などの漁具のこと。
さまざまな原因により、世界の海に流出している「ゴーストギア」は
年間50万~115万トンにものぼります。
これら漁具の多くがプラスチックでできており、一旦海に流出すると、
長期間にわたり原型をとどめます。

海洋プラスチックごみにより海洋哺乳類の66%の種、
海鳥の50%の種、そしてウミガメの全種が被害をうけていますが、
中でも最も危険なものが「ゴーストギア」です。

Ghost Gear

© naturepl.com _ Enrique Lopez-Tapia _ WWFこれにウミガメやアザラシなど海洋生物が絡まったりすると、
ケガをするだけでなく、窒息や飢え、衰弱などでやがて死んでしまいます。
また海底に沈めば海底環境を悪化させるなど「ゴーストギア」は
海洋生物や海洋生態系に深刻な被害をもたらします。
漁業者にとっても本来得られるはずの漁獲が減少したり、
船舶航行の障害にもなるなど問題となっています。© naturepl.com _ Enrique Lopez-Tapia _ WWF

ゴーストギアが与えるダメージ

  • © naturepl.com _
    Enrique Lopez-Tapia _ WWF
    海洋生物へのダメージ

    ・漁網、ロープ、仕掛けなどに捕まったり、絡まったりすることで海洋生物が死傷

    ・発泡スチロール製漁具の破片などプラスチックの誤飲、誤食、マイクロプラスチックの摂取

  • © Jürgen Freund WWF
    海洋生態系へのダメージ

    ・漁網の覆い被さりによるサンゴや海藻群落などへの悪影響

    ・プラスチックに含まれる化学物質による生物・水質の汚染

  • © WWF Mexico
    社会・経済的ダメージ

    ・本来あるべき漁獲が減少

    ・船との衝突やスクリュー巻込みなど船舶の航行阻害

    ・景観の悪化による観光業への影響

漁具流出の
原因はさまざま

そもそも漁業者にとって漁具は生計を立てる上での道具であり、大切な資産であり、失っては困るものです。しかし、漁業者がどんなに気を付けていても悪天候や漁具同士の接触、岩礁への根がかりなどで漁具が海に流出することがあります。また、その一方で使えなくなった漁具が意図的に投棄される場合もあります。直近の研究では、全世界で使用されている漁網の5.7%、籠や壺などの仕掛けの8.6%、釣り糸の29%が海洋に流出していると推測されています。

Countermeasure

ゴーストギア問題への対策−WWFジャパンの取り組み

「ゴーストギア」問題への効果的な対策として流出予防、被害軽減、
回収による環境回復があげられますが、流出を防止することがより効果的・効率的な取り組みです。

  • ゴーストギアの発生を未然に防ぐための改善
  • 回収できずに発生してしまったゴーストギアの被害を軽減する
  • 流出してしまった漁具を回収し海洋環境を回復する

WWFジャパンでは、この「ゴーストギア」問題に対し、
いくつかの水産都市の自治体、漁協と協働し「ゴーストギア」発生予防策に取り組むことにしました。
この取り組みでは、自治体と連携・協働し、漁協より漁業者に対し、
適正な漁具の管理を促しつつ、使用済みとなった漁網を回収します。

回収した使用済み漁網は

回収した使用済み漁網はリサイクル原料となり、新たな製品に生まれ変わります。このリサイクル製品製造では、当プロジェクトに参加いただく企業を募り、安全性を確認の上、子どもたちが使う文具や公園の遊具やベンチなどコミュニティの皆様が使えるような、しかも再び海洋プラスチックごみにならないような製品の製造を目指して、テストを行っています。

このプロジェクトを通じて、漁業者による漁具の適正管理と資源循環が進み、ゴーストギアのない美しい海を次世代につなげていく、そんな未来を目指しています。

なお、この漁網リサイクルと製品製造企業の募集については、リサイクル専門会社のテラサイクルジャパンが行います。現在、この活動に賛同し、商品企画、製造に協力していただける企業を募集しています。協力をご検討いただける団体や企業の皆様は「お問い合わせフォーム」よりご連絡をお願いします。

Recycling Step

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漁業者にとって、漁網は大切な商売道具であり、失っては困るものです。実際、漁業者は様々な漁具管理を行っています。例えば操業前後の点検、陸上・船上での保管・流出防止、破損部分の修理、根がかりや船と漁網の接触の回避、悪天候前の漁具の移動など。このような漁具管理により漁具流出を未然に防ぐことができます。

また使用済みになった漁具については、護岸や岸壁に放置しておくと海に流されることもあるため、保管や適正処分ということも重要です。使用済みの漁具は産業廃棄物にあたるため、漁業者は有償で処分しなければなりません。しかし中小事業者が多い沿岸漁業では処分費用も大きな負担となります。
そこでWWFでは、漁業者より使用済みになった漁網を無償で回収することで、漁業者の経済的負担を軽減しつつ、漁具の管理に対する意識を高め、ゴーストギアの発生を予防しつつ、漁網をリサイクルするというプロジェクトをスタートしました。

Kesennuma City

気仙沼市と行う漁網回収

このプロジェクトの一例として、宮城県気仙沼市との共同プロジェクトをご紹介します。

東日本大震災で壊滅的被害を受けた宮城県気仙沼市。
漁業とともに歩み、発展し「海と生きる」を標榜する気仙沼市では地域の復興とともに、
持続可能な未来に向けた取り組みを行っています。
海洋プラスチックごみによる海洋汚染の問題についても、
2019年に制定した「海洋プラスチックごみ対策アクション宣言」の下、
海洋プラスチックごみゼロを目指し、
海岸清掃、海中ごみの回収、海ごみ回収ステーションの設置など、積極的な対策を行っています。

プロジェクトを気仙沼市へ提案

このような先進的な海洋プラスチックごみ問題への取組みを行っている気仙沼市に対し、かねてより気仙沼市教育委員会と教職員向けESD研修を行っていた繋がりから、WWFジャパンより漁網回収・リサイクルのプロジェクトについて、気仙沼市水産課と生活環境課に提案。まずサケ刺し網を対象に回収・リサイクルテストを開始することになりました。

漁業者のテスト参加へ

使用済み漁網の回収・リサイクルと言っても実は簡単な話ではありません。漁網をリサイクル原料にするには、網に付着したごみや埃、塩分を洗い落とし、浮きや重りを分別するなどの作業が必要です。それでも、気仙沼の漁業者は自分たちの漁具管理が海洋プラスチックごみ流出を防ぐ為に必要なことと、漁協を通じてテストに参加することになりました。

※尚、この漁具管理と漁網の回収・リサイクルのプロジェクトは現在進行形です。今後気仙沼市の漁網がどのような製品になるか、このサイトでもご報告させていただきます。

地域コミュニティとの連携

しかし、この取り組みは漁業者だけがコツコツとやるものでしょうか?漁業は気仙沼市の主要な産業の一つであり、使用済みの漁網の回収は海洋プラスチックごみを減らし、気仙沼市の漁業を持続可能にするだけでなく、地域コミュニティの持続可能生にもつながります。そこで、このプロジェクトを地域の皆さんに知っていただく上で、気仙沼市教育委員会が海洋教育の一環として取り上げることになりました。

Marine Education

水産業を基幹産業とし、「海と生きる」まち、気仙沼。
この地で育つ子どもたちの学びと成長もまた、
海と切り離すことができません。

気仙沼市では、幼稚園から高等学校にいたるまで、
子どもたちが海と地域とのかかわりに触れ、
考えることが可能な、多彩なカリキュラムが実施されてきました。
2022年現在、気仙沼市では、公立の幼稚園と小・中・高等学校の多くが
ESDの推進拠点となるユネスコスクールに加盟するとともに、
海を通して・海について学ぶ「海洋教育」に取り組んでいます。

WWFジャパンは気仙沼市教育委員会とともに、「地域と一緒に!漁網のみらいプロジェクト」のなかで新たな海洋教育プログラムを実施します。このプログラムでは、水産業由来の海洋プラごみ問題を、自分たちのまちの「使用済み漁網のリサイクル回収」から考えます。多様なかたちで水産業に関わるまちのあり方に寄り添って、学校でプログラムを実施するほか、関心を持つ子どもたちと学校の外でも進めていきます。

水産業とともに歴史を歩んできた気仙沼だからこそ、「漁網」の問題についての学びも多層的です。漁網は、土地で培われた漁法と知恵が詰まった、過去といまをつなぐもの。漁業者、漁業を支える人々、そしてもちろん魚を食べる人々のつながりもまた、漁網を介しています。「地域と一緒に!漁網のみらいプロジェクト」の海洋教育プログラムは、このつながりの中で、漁網のみらいを考える扉を開きます。2022年度のプログラムを通して、子どもたちの学習の様子や、授業カリキュラム、ワークシートなどを順次公開予定です。


なおこの海洋教育プログラムは、気仙沼市教育委員会と一般社団法人3710Lab(みなとラボ)
との連携によってカリキュラムを開発し、同市水産課ほかの支援のもとで実施するものです。

3710Labは「海とヒトとを学びでつなぐ」次世代の教育を
デザインするプラットフォームです。

reportイベント開催レポート

coming soon

Join us!

自治体、水産業の
みなさんへ

WWFジャパンでは、当サイトでご紹介したような漁業者の方々による漁具管理のサポートを通じてゴーストギアの発生抑制を図るプログラムを全国の自治体様や漁業協同組合様と協働展開することを推進しております。当プログラムにご興味、ご関心のある自治体、水産業の方のお問合せ、ご質問をお待ちしております。

※順次、担当者よりご返信さしあげますが、1週間以上経過しても返信がない場合は、お手数ですが再度お問い合わせをお願いいたします。なお、WWFジャパン「漁網のみらいプロジェクト」に関する専用のフォームとなりますので、それ以外のお問い合わせについては、ご対応いたしかねます。それ以外のお問い合わせはWWFジャパン「よくあるご質問」をご参照ください。

who we are?WWFとは

WWF

WWFは100カ国以上で活動している環境保全団体で、1961年にスイスで設立されました。人と自然が調和して生きられる未来をめざして、サステナブルな社会の実現を推し進めています。特に、失われつつある生物多様性の豊かさの回復や、地球温暖化防止のための脱炭素社会の実現に向けた活動を行なっています。ぜひWWFをご支援ください。