WWFと日本自然保護協会が環境に配慮した浄化槽ルールの基準づくりを求める要望書を沖縄県に対し提出
2026/02/24
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区、会長:末吉竹二郎、以下WWFジャパン)は、本日2月24日(火)に、公益財団法人 日本自然保護協会(東京都中央区、理事長:土屋 俊幸 )とともに、以下の要望書を玉城康裕沖縄県知事および多良間一弘沖縄県環境部部長あてに提出しました。
沖縄県は浄化槽のルールを改正し、2023年6月から施行しましたが、地下浸透を通じての排水規制が緩和されたことで地下水の水質悪化やサンゴ礁への影響が懸念されています。石垣市白保の漁業者や観光事業者も環境への不安から見直しを要望しています。WWFジャパンは1980年から南西諸島で自然保全に取り組み、2025年6月には、本件に関して専門家を含む適切な基準づくりを県へ求める声明を発表しました(注)。しかし改善が見られないため、今回の2月県議会での再審議を求め、要望書を提出しました。
(注)https://www.wwf.or.jp/activities/statement/5982.html
<以下要望書全文>
沖縄県浄化槽取扱要綱改定に伴う環境影響の回避のための基準追加に関する要望書
沖縄県知事 玉城 康裕 様
沖縄県環境部部長 多良間 一弘 様
会長 末吉 竹二郎
公益財団法人日本自然保護協会
理事長 土屋 俊幸
平素より、沖縄県下における生物多様性の保全にご尽力を頂き敬意を表します。
今般、表題の件につき、南西諸島において活動を行ってきた当団体の見解をお伝え申し上げたく、本要望書を送付させていただきます。
沖縄県浄化槽取扱要綱(以下、本要綱)が一部改正され、令和5年6月1日よりこれが施行されました。 この要綱の改正により、沖縄県内のサンゴ礁をはじめとした海洋環境に、悪影響がおよぶ可能性があります。
浄化槽からの排水について規制が一部緩められたことで、土壌を介した十分な水質の浄化がなされず、地下水を富栄養化させ、さらにはサンゴ礁などの生物多様性の豊かな海域に流出するおそれが出てきたためです。
本要綱の改正では、下記の2つの点について、大きな変更が加えられました。
1. 排水を認める土質について、地下の水脈に短絡する土質条件の基準が撤廃されたこと
2. 排水の土壌への透水速度の上限値が撤廃されたこと
前者については、旧要綱では「地表面下2m以上の土壌の厚さが、砂質土又は粘着度であり、透水性の過大な礫層などの地下の水脈に短絡するような土質ではないこと」という基準が準用され、浸透性の高い石灰岩質に直接排水することを規制し、土壌を通じた十分な濾過がなされない地下水が海域に流れ込むのを防いでいましたが、これがなくなりました。
後者についても同様で、旧要綱では「浸透速度の上限は1,500mm/時、下限は1.2mm/時とする」という基準が準用されていましたが、これがなくなることで、浸透速度の速い土地であっても地下浸透による排水ができることとなり、サンゴ礁のある海域に、浄化の不十分な地下水が大量に流入してしまう可能性があります。
本要綱の改定の背景として、宮古島などの石灰岩質の土壌の地域では、浸透速度の上限値をそのまま適用すると地下浸透放流が認められず、住民が浄化槽を設置したくてもできない状況にあったことが挙げられています。こうした地域の社会課題を改善することの重要性は理解できる一方、科学的な検証および議論が不十分なまま、当該地域はおろか県全体の地下水ならびにサンゴ礁生態系への負の影響を及ぼしうる改定は、サンゴ礁生態系が重要な経済基盤となっている沖縄県にとって深刻なリスクとなりえます。
私たちは、本要綱の広域的な影響を鑑み、予防原則に基づいた適切な内容と運用になるよう、改定された要綱に、以下の基準の追加を要望いたします。
浸透速度(2.4cm/分以上※1)が大きな土壌において地下浸透放流を行う場合には、以下の基準を適用すること。
- 規模の制限:設置できる浄化槽の処理対象人員に制限を設ける(多くとも25人以下)。
ただし、学校、公民館、避難所その他公共の目的に供する施設については例外的な取り扱いを定める。 - 水質の厳格化:地下浸透放流する放流水の水質を、BOD 10mg/L以下、全窒素 10mg/L以下※2とすること。
※2:水質汚濁防止法で定められた基準を501人槽未満の浄化槽についても適用することが望ましい。
一度損なわれた自然環境の姿と機能を再現することは、限りなく困難であり、それに伴い生態系や地域社会にどのような影響が及ぶのかは、容易には予測できません。
「昆明モントリオール生物多様性枠組」が合意され、貴重な自然環境の保全・回復が、国際的にも強く求められる中、生物多様性の損失につながる可能性のある規制の緩和については、外部有識者の意見を踏まえた判断が必要と考えます。今回の改定で生じる諸課題の解決のために、沖縄県による適正な基準の策定が、外部有識者の関与のもと、行なわれることを期待します。



