四国に飛来するツル類の保護対策について


要望書 2016年10月21日

徳島県知事 飯泉嘉門様
香川県知事 浜田恵造様
愛媛県知事 中村時広様
高知県知事 尾﨑正直様

公益財団法人日本野鳥の会      理事長 佐藤仁志
公益財団法人日本自然保護協会    理事長 亀山章
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン 会長 徳川恒孝
日本ツル・コウノトリネットワーク   会長 金井裕
四国ツル・コウノトリ保護ネットワーク 代表 中村滝男

平素から、ツル類など野鳥の保護につきましては、ご理解とご協力を賜り深謝しております。
昨年度、四国各地で合計約300羽のナベヅルが渡来し、100羽以上が長期滞在(越冬)しました。ひとえに貴県をはじめ様々な関係者のご協力によるもので、長年の課題である新越冬地の形成の大きな一歩となりました。
ツルは越冬地で定住性をもつため、今シーズンも渡来が予想されます。すでに狩猟登録者へチラシを配布していただいている県もございますが、別紙に示す配慮事項についてご配慮及び関係者へ周知していただきたく、お願い申し上げます。

問合せ

公益財団法人日本野鳥の会自然保護室 伊藤、野口、葉山
〒141-0031 東京都品川区西五反田3-9-23
電話/Fax:03-5436-2633/2635 Eメール:hogo@wbsj.org

四国のツル情報についての問合せ

四国ツル・コウノトリ保護ネットワーク 代表 中村滝男
〒781-0270 高知市長浜4964-11 公益社団法人生態系トラスト協会内
電話/Fax:088-841-5400 Eメール:ecotrust@me.pikara.ne.jp


ナベヅル、マナヅル保護に必要な配慮事項と対象地域

1.配慮事項

(1)銃猟について

銃声に驚いて飛去してしまいますので、ツルの飛来地域周辺での銃猟はご遠慮ください。

(2)ツルとの距離について

ツルは非常に警戒心が強く、人の接近を嫌いますので、ツルを見かけたら200~300mの距離を保つようにしてください。300m以内でツルと出会ってしまったら、車の場合は、そのまま通りすぎてください。ツルを見ようとして止まったり、車内から出たりすると、ツルが警戒して飛び去ることがあります。徒歩の場合は、可能であれば迂回を、無理であれば急な動きはせずに通行してください。また、犬も警戒しますので、散歩中は飼い犬を放さないようにしてください。

(3)ねぐらへの立入りについて

河川や湿地、ため池の浅瀬をねぐらとして利用します。特に夜間はツルの警戒心が強いので、日の入1時間前~日の出1時間後は、ツルのねぐら及びその周辺に立ち入らないよう、さらに車のヘッドライトを向けないように、ご協力お願いします。

(4)その他

  • ツルの近くでの工事作業等、ツルへの影響が懸念される活動がある場合は、実施場所や期間、時間等について、ご配慮をお願いします。
  • ツルの渡来場所の詳細が報道されると、カメラマンや見物客が増えてツルに影響が出る場合がありますので、情報の取り扱いについては、地元の保護団体等関係者とご協議ください。

2.対象地域

(1)徳島県

  • 海陽町海部川下流域及び周辺水田
  • 阿南市那賀川下流域及び周辺水田
  • 阿波市吉野川流域及び周辺水田

(2)香川県

  • 丸亀市南部ため池群及び周辺水田
  • 三豊市高瀬川河口域及び周辺水田(三豊海岸)
  • 高松市南部ため池群及び周辺水田

(3)愛媛県

  • 四国中央市関川河口域及び周辺の水田地帯
  • 西条市加茂川・中山川河口域及び周辺の水田地帯
  • 愛南町広見
  • 西予市宇和町宇和盆地

(4)高知県

  • 四万十市四万十川下流域、中筋川下流域及び周辺の水田地帯
  • 宿毛市小筑紫町福良川下流域及び周辺の水田地帯
  • 南国市及び香南市物部川下流域及び周辺の水田地帯

※上記地域以外にツル類が飛来した場合はこの限りではありません。
※飛来地の詳細につきましては、下記までお問い合わせください。

各地のツル情報の問合せ

  • 日本野鳥の会徳島県支部(徳島県)
    電話:0886-33-0180 Fax:0886-32-0170
  • 日本野鳥の会香川県支部(香川県)
    電話:090-9458-4414(矢本)
  • 日本野鳥の会愛媛(愛媛県)
    電話/Fax: 089-923-3081
  • 四国ツル・コウノトリ保護ネットワーク(高知県)
    電話/Fax:088-841-5400 Eメール:ecotrust@me.pikara.ne.jp

3.期間

 2016年10月中旬~2017年3月末


ナベヅル、マナヅルについて

冬季に日本の水田地帯に飛来する絶滅の恐れのある鳥類で、かつては全国に飛来していましたが、乱獲や圃場整備等による湿田の減少等によって、現在は国内外でも非常に限られた地域にしか飛来していません。鹿児島県出水地方では長年継続した保護施策により、ナベヅルは約1万3000羽、マナヅルは約3000羽が越冬するようになりましたが、世界のナベヅルの約9割、マナヅルの約5割が当地に集中していることにより、重篤な感染症が発生した場合に絶滅の恐れが高いことなどから、一極集中は大きな問題となっています。

出水地方以外に複数箇所の越冬地を確保することが重要との観点から、環境省や関係自治体、自然保護団体等が協力して新たな越冬地形成にむけて努力しているところです。しかしながら、非常に警戒心が強いため、飛来があっても銃猟による銃声や、落ち鮎漁等での河川への夜間の立入り、カメラマンや見物客の過度の接近等により定着が阻害され、ほとんど越冬には至っていないのが現状です。特に、飛来して間もない期間は警戒心が強くなります。一方で、ツル類は寿命が長く、越冬地では定住性をもつため、越冬できた場所は学習し、翌年以降も渡来する可能性が強いため、越冬実績を重ねることで、安定した越冬地が形成されます。

(1)ナベヅル(Grus monacha

ロシア南東部、中国東北部の高原の湿地帯で繁殖する。つがいごとになわばりをもち、最大2個の卵を産む。秋になると、その年に生まれた幼鳥と共に西日本、韓国南部の水田地帯に渡り、越冬する。日本には、10月~3月に渡来する。

越冬地では、主に穀類の落ち穂や植物の種子、根茎、昆虫、小型の水生生物を食べる。開けた空間を好むので、干拓地のように広い水田地帯に生息するが、周南市八代のような盆地の水田も利用する。

基本的に冬も家族単位でなわばりをもって行動する。環境条件によって数十羽の群れを形成する場合もある。夜間は、水深10~20センチ程度の河川の中州や干潟の干出部、湿地、ため池等でねぐらをとる。

  • 全長 約100㎝
  • 世界の推定個体数 約16,000羽
  • IUCNレッドリスト 絶滅危惧Ⅱ類(VU)
  • 環境省レッドリスト 絶滅危惧Ⅱ類(VU)
  • 日ロ渡り鳥条約
  • 日中渡り鳥協定
  • ワシントン条約附属書Ⅰ
  • 種の保存法 国際希少野生動植物種
  • 文化財保護法 特別天然記念物
    「鹿児島県のツルおよびその渡来地」
    「八代のツルおよびその渡来地」

(2)マナヅル (Grus vipio

ロシア、中国、モンゴルの国境を流れるアムール川流域やウスリー川流域の湿原で繁殖する。越冬地は、西日本、朝鮮半島の非武装地帯、中国南部の湖沼。日本には、11月~2月に渡来する。開けた環境を好むため、干拓地のように広い水田地帯に飛来する。冬の生態はナベヅルと同様。両種がゆるやかな群れを作り、一緒に行動することがある。ナベヅルより湿潤な環境を好むとされている。

  • 全長 約127㎝
  • 世界の推定個体数 約6,000羽
  • IUCNレッドリスト 絶滅危惧Ⅱ類(VU)
  • 環境省レッドリスト 絶滅危惧Ⅱ類(VU)
  • 日ロ渡り鳥条約
  • 日中渡り鳥協定
  • ワシントン条約附属書Ⅰ
  • 種の保存法 国際希少野生動植物種
  • 文化財保護法 特別天然記念物
    「鹿児島県のツルおよびその渡来地」

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