東シナ海で沈没したSANCHI号等タンカー衝突事故からの流出油等に関する要望書


要望書 2018年4月3日

内閣官房総合海洋政策本部
本部長  安倍 晋三 殿

公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
会 長  德 川 恒 孝

拝啓 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。

日頃より、自然環境の保全にご尽力を賜り誠にありがとうございます。

さて、今年1月イランのタンカーSANCHI号が、香港籍の貨物船と衝突、沈没した事故で流出した油等は、奄美大島から西方約315km沖の日本の排他的経済水域まで漂着が確認されました。さらに3月17日には和歌山県沖にてパラオ船籍の貨物船DONGKUN7の事故が発生しております。SANCHI号の事故については、漂着場所や時期、規模などの予測が困難な状況の中で、関係省庁と連携しつつ漂着したエリアの生態系調査などを実施し、それらの結果を公開されていることと存じます。

SANCHI号の流出油等は、衝突が日本の排他的経済水域外で起こったこともあり、事故発生当初から日本への漂着の可能性が指摘されていたにもかかわらず、予防原則が機能しないままタンカーの破損が原因と考えられるオイル成分の国内への漂着が確認されました。WWFジャパンは、本件の衝突事故発生後の日本政府の初動が、現地における希少な動植物の生息地や個体への影響に対する対応が遅れた原因の一つと認識しております。日本政府は、過去に油汚染事件の発生に備えた近隣諸国等との合同訓練、実務者会合を実施・開催し、また国内において首相官邸の危機管理センターに情報連絡室を置いて情報を収集してきました。しかしSANCHI号の事故の現地やメディア等の状況では、漂着範囲や時期、規模、被害などについて様々な情報が交錯しており、必ずしも適切なタイミングで適切な情報が国民に発信されていたとは言えません。頻発するタンカー衝突事故を懸念し、WWFジャパンは、以下の要望を致します。

  1. 流出油等の生態系及び野生生物を含む被害について、OPRC条約にもとづき、自国の排他的経済水域の事故に限定することなく日本に影響が出る可能性のあるエリアでの事故の情報を隣国や関係諸国と発生当初から情報共有し、その情報を国内の関係省庁等と連絡・調整を円滑に進めることが出来るよう「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」(以下、緊急時計画)の見直しすること。
  2. 緊急時計画は、見直しなどの主体が記載されていないため、明確にすること。
  3. 緊急時計画の見直しは、過去や海外の類似事例関係者からの知見と経験に基づき、生態系回復のためのプログラム、予防原則の考え方と方策、事故発生時の体制、事故による影響や予測に関する情報の迅速な開示体制、長期的なモニタリングの実施、国際油濁防止請求などに関する内容を盛り込むこと。

なおWWFジャパンは、本要望書を提出するだけではなく、地元団体が行っている対策活動への緊急支援を通して、本件に起因する生物多様性保全上の問題解決に取り組んでゆきます。宜しくご検討のほどをお願い申し上げます。


要望書 2018年4月3日

海上保安庁
長官 中島敏殿

公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
会 長  德 川 恒 孝

拝啓 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。

日頃より、自然環境の保全にご尽力を賜り誠にありがとうございます。

さて、今年1月イランのタンカーSANCHI号が、香港籍の貨物船と衝突、沈没した事故で流出した油等は、奄美大島から西方約315km沖の日本の排他的経済水域まで漂着が確認されました。さらに3月17日には和歌山県沖にてパラオ船籍の貨物船DONGKUN7の事故が発生しております。SANCHI号の事故については、漂着場所や時期、規模などの予測が困難な状況の中で、関係省庁と連携しつつ漂着したエリアの生態系調査などを実施し、それらの結果を公開されていることと存じます。

SANCHI号の流出油等は、衝突が日本の排他的経済水域外で起こったこともあり、事故発生当初から日本への漂着の可能性が指摘されていたにもかかわらず、予防原則が機能しないままタンカーの損壊が原因と考えられるオイル成分の国内への漂着が確認されました。WWFジャパンは、本件の衝突事故発生後の日本政府の初動が、現地における希少な動植物の生息地や個体への影響に対する対応が遅れた原因の一つと認識しております。日本政府は、過去に油汚染事件の発生に備えた近隣諸国等との合同訓練、実務者会合を実施・開催し、また国内において首相官邸の危機管理センターに情報連絡室を置いて情報を収集してきました。しかしSANCHI号の事故の現地やメディア等の状況では、漂着範囲や時期、規模、被害などについて様々な情報が交錯しており、必ずしも適切なタイミングで適切な情報が国民に発信されていたとは言えません。頻発するタンカー衝突事故を懸念し、WWFジャパンは、以下の要望を致します。

  1. 流出油等の生態系及び野生生物を含む被害について、OPRC条約にもとづき、自国の排他的経済水域の事故に限定することなく日本に影響が出る可能性のあるエリアでの事故の情報を隣国や関係諸国と発生当初から情報共有し、その情報を国内の関係省庁等と連絡・調整を円滑に進めることが出来るよう「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」(以下、緊急時計画)の見直しすること。
  2. 緊急時計画は、見直しなどの主体が記載されていないため、明確にすること。
  3. 緊急時計画の見直しは、過去や海外の類似事例関係者からの知見と経験に基づき、生態系回復のためのプログラム、予防原則の考え方と方策、事故発生時の体制、事故による影響や予測に関する情報の迅速な開示体制、長期的なモニタリングの実施、国際油濁防止請求などに関する内容を盛り込むこと。

なおWWFジャパンは、本要望書を提出するだけではなく、地元団体が行っている対策活動への緊急支援を通して、本件に起因する生物多様性保全上の問題解決に取り組んでゆきます。宜しくご検討のほどをお願い申し上げます。


要望書 2018年4月3日

環境大臣 中川雅治 殿

公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
会 長  德 川 恒 孝

平素より、生物多様性の保全にご尽力いただき、誠にありがとうございます。

本日は表題の件につき、当団体の要望をお伝え申し上げたく、本要望書を送付させていただきます。

東シナ海で沈没したタンカーSANCHI号からの流出油等については、1月にイランのタンカーと香港籍の貨物船が衝突し、奄美大島から西方約315km沖の日本の排他的経済水域(EEZ)まで漂流して沈没してから1カ月半が経過しております。タンカーから流出した流出油等は、漂着場所や時期、規模などの予測が困難な状況の中で、現在までに関係省庁と連携しつつ調査などを実施されていることと存じます。

流出油等がすでに漂着しているエリアは広範囲に渡っており、さらに今後、流出油等はWWFジャパンが多くの研究者らと取りまとめた「WWF南西諸島生物多様性評価プロジェクト」において、生物群重要地域として高い評価となっているエリアに漂着することを強く懸念しています。またWWFジャパンは、現在、奄美群島周辺を優先保全地域として海域及び陸域の活動を展開しており、本件に起因する漂着油等によって、現地における希少な動植物の生息地や個体への影響が発生することを強く危惧しております。

本要望書は、予測困難な状況の中、生物多様性への悪影響が時間的・空間的に予測を超えて出ることへの懸念から、現地における希少な動植物の生息地や個体への影響を実効性および継続性のある形で把握し共有すること、また、その影響がもたらす今後の脅威に対する準備を行うことを求めるものです。

以上のような背景を踏まえ、WWFジャパンは本件において以下の要望を提出いたします。

  1. 環境省は、該当関係省庁、県、市町村、市民団体等と連携・協力して、流出油等の漂着が確認された地域の生態系及び野生生物への影響を実効性のある形で継続的に調査・把握・共有し、今後予想・想定される被害についてもホームページなどで随時発信すること。
  2. 環境省は、マリンワーカー事業などですでに実施している事業に、流出油等の状況、回収作業、動植物の生息地や個体への影響の把握・記録の項目を追加して地元団体に対応を委託することを実施すること等によって、流出油等の影響を実効性のある形で長期的に調査・把握すること。
  3. 環境省は、内閣府等に対し、流出油等の生態系及び野生生物を含む被害について、自国の排他的経済水域(EEZ)に限定することなく調査し、生態系回復のためのプログラムや国際油濁防止請求することなど盛り込んだ形で「油汚染事件への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」の見直しすることを提言すること。また見直しにおいては、過去や海外の類似事例関係者からの知見と経験に基づいたうえで検討・作成すること、また予防原則の考え方と方策、体制、事後対応方策などに関する内容を盛り込むことを提言すること。
  4. 環境省は、上記要望を含めた今後の対応について、関係する該当関係省庁、部局とも連携、情報交換を継続的に実施すること。

なおWWFジャパンは、本要望書を提出するだけではなく、地元団体への緊急支援を決定しました。この緊急支援を通して、本件に起因する生物多様性保全上の問題解決に取り組んでゆきます。

宜しくご検討のほどをお願い申し上げます。

本件に関する連絡先

並木崇(世界自然保護基金ジャパン 03-3769-1713)

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