省エネ法の改正案に関する要望書


2012年2月3日 共同意見書

 枝野幸男 経済産業大臣 様
(資源エネルギー庁 省エネルギー対策課長 茂木正 様)

環境エネルギー政策研究所(ISEP)
気候ネットワーク
グリーンピース・ジャパン
FoE Japan
WWF ジャパン

現在、資源エネルギー庁が検討している省エネ法(エネルギーの使用の合理化に関する法律)は、これから「省エネ」を進めることに関し、大きな問題があることがわかってきました。私たちは、検討中の省エネ法改正案について、下記のように見直すよう要望します。

1.抜本的な省エネ対策を進めるべき

エネルギー原単位の1990~2009年度の変化をみると、製造業は8%悪化、運輸旅客は21%悪化など、1990年以降の日本のエネルギー効率改善度合い(GDP比エネルギー消費)は先進国で最低レベルに近い状況にあります。全体として省エネが順調に進んでいるかのような誤った認識で制度の議論が進められていることは、極めて問題です。

検討されている省エネ法の改正は、かいつまみ的であり、また、これからの省エネを進めるための基礎となる情報の報告義務を簡略化するといった逆行も含まれています。

東日本大震災および福島第一原発事故を受けて、省エネの推進の必要性は今まで以上に高まっています。各主体が省エネ対策を大胆に進めていくために、工場の省エネ目標の義務化をはじめ、現行規定の強化を行い、省エネ大国として日本が世界をリードするよう、抜本対策を検討するべきです。

2.エネルギー使用実態の把握を弱めるべきはない

検討される改正案の中には、これまで1994年から毎年、大規模事業所に義務付けられてきた定期報告を簡素化するという案があります。定期報告では、エネルギー種別(電気・燃料等)の使用量や、原単位、原単位の変化などを報告することになっていますが、これらの事業所ごとのエネルギー情報等の報告を取りやめ、事業者全体のエネルギー総量や効率の改善率のみの報告を求めることへ簡素化するというものです。これでは、事業所ごとのエネルギー使用実態をつかめなくなり、大きな後退です。
電気やエネルギー使用量の把握は、省エネの可能性を探るためには必要不可欠なものであり、対策の基礎です。これらを簡素化する案は、撤回するべきです。

3.増エネの可能性のあるピーク対策案を見直すべき

検討案では、省エネ法の中に初めてピーク対策を盛り込むこととしています。例として示された案は、自主的な省エネ目標の達成度合いを把握するために必要となるエネルギー消費原単位の算定方法において、ピーク時間の電力使用量を1.5倍するなどの合理化係数を乗じる案が示されています。これでは、見かけ上の数値では電力使用量を削減したことになっても、実際にはそれだけの省エネがなされないことにもなりえます。増エネになる可能性があるようなピーク対策は「省エネ」には反するものであり、省エネ法に位置付けることは不適切です。

ピーク対策は、電力料金制度の見直し、電力需給契約利用の推進、電力使用量の見える化等を通じ、幅広い対策をもって実施される必要があります。また、地域分散型コジェネや蓄熱による熱エネルギーの活用も検討すべきです。

4.住宅・建築物の省エネ基準義務予定を前倒しすべき

検討案では、諸外国に比べ著しく遅れている住宅・建築物の省エネ基準の強化、および、2020年までにすべての新築住宅・建築物について省エネ基準への適合を段階的に義務化する方針が示されています。住宅・建築物の省エネ対策強化は極めて重要であり、その強化の方向性は歓迎できますが、新築に関しては、2020年までの段階的ではなく、速やかに義務化を実現するべきです。また、既存住宅に関しても省エネ対策の強化を急ぐべきです。

5.自家発電の実態把握と省エネ対策を導入するべき

震災後、事業者は、電力の安定供給を自ら確保するために、自家発電の導入強化を図っています。石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料を利用したものが主であることから、化石燃料利用増、CO2排出増がもたらされることになります。自家発電の利用実態をしっかりと把握し、省エネ強化、燃料選択への誘導、自家発電を含めた電力使用量の削減という観点を、省エネ法において明確に位置付けていくべきです。

6.省エネ部会委員構成を見直すべき

委員の大半は産業界により占められています。一方的な議論とならぬよう、NGOや消費者を代表する委員を増やすようバランスを見直すべきです。

取りまとめ:気候ネットワーク東京事務所
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