再生可能エネルギー買取法 普及につながる制度設計を


意見書 2012年4月24日

2011年8月に成立した「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(以下「再生エネ買取法」)を受けて、本年7月から固定価格買取制度が開始する。これに向け、現在「調達価格等算定委員会」において、再生可能エネルギーの買取価格および期間について議論が行なわれている。

地球温暖化の進行を防ぎ、安全・安心な社会を築くうえで重要なことは、再生可能エネルギー主体の社会を築いていくことである。再生可能エネルギーの育成は、日本の産業の国際競争力を高め、地方の活性化に貢献するだけでなく、中長期的には価格が高騰する化石燃料への依存を減らし、エネルギー安全保障の向上につながる。

野田政権は、原発への依存度を低減していく方針を明確に打ち出しているが、震災後は、一時的に火力発電への依存度が高まっている。これを可能な限り早期に再生可能エネルギーに代替していく必要がある。そのためには、固定価格買取制度が実効力のあるかたちで導入されることが不可欠である。

制度の性質上、買取価格の高低のみが注目されがちだが、買取価格を決める際の考え方やその他の制度的条件も極めて重要である。委員会での議論も終盤に近づく中、本声明では、制度設計において検討するべき点とWWFの意見を改めて表明する。

再生可能エネルギーの種別ごとの事情に応じた買取価格・期間を設定し、適宜逓減していく

再生可能エネルギーは、種類によって出力に変動があるなど、それぞれ固有の特性があるため、どれか一つのエネルギー種別を選んで育成するというよりも、それぞれが相補的にエネルギー需要を満たせるよう、固有の特性に応じた買取価格の設定が重要である。

再生エネ買取法では、当面、太陽光、風力、バイオマス、中小水力、地熱が買取対象となっているが、いずれも初期投資が高いため、投資リスクが高いことが普及の妨げとなっている。

したがって、エネルギー種別ごとに異なる技術的成熟度やコストなどを十分に考慮した買取価格・期間を設定し、投資リスクに対する懸念を払拭することが普及の鍵となる。

ただし、普及が進むとともに再生可能エネルギーの初期投資は徐々に下がっていくため、買取価格の逓減を適切なタイミング・頻度で行なう必要がある。

個別論点について留意すべき点 

  • 制度設計について:今後の制度の発展を見据え、今回の制度設計は可能な限り簡素にすべきである。
  • 費用の範囲について:買取価格の算定に当たって考慮されるべき費用としては、原則として、「発電設備建設費」、「系統接続および管理費」、「運転維持費(土地の賃借料を含む)」、「租税(固定資産税、事業税)」、「燃料費(バイオマス)」、「水利利用料(中小水力)」「設備の廃棄費」が含まれるべきであり、現時点での委員会における区分は概ね適切といえる。特に、論点となっている電力系統への接続に関する費用は、実質的に大きな障害となっているため、これらも考慮する費用の範囲に含めるよう検討すべきである。地熱については、開発以前の調査に要する費用が大きいため、調査段階の費用も範囲に含めるべきである(費用の一部に補助金が支給されている場合は、その部分を除く)。風力発電については、処理困難材料であるFRP(繊維強化プラスチック)がナセル(風力発電機収納部分)等に大量に使用されており、使用済みになった際に適正に処理されるよう適正な廃棄費用が計上されるべきである。
  • 買取期間について:委員会のヒアリングにおいて多くの事業者が主張している通り、買取期間は原則としては20年とし、地熱は15年、住宅用太陽光は10年という形で設定するべきである。また、現状では考え難いが、買取期間内に風力などの価格が他の電源(化石燃料・原子力)を下回った場合の措置についても、別途定めておくことが必要である。
  • 買取区分について:バイオマスについては、細分化をしすぎると制度がいたずらに複雑化し、予期し得ぬ影響を招く可能性もあるが、他方で、燃料種ごとにコスト構造が全く異なるため、燃料種に応じた区分は必要である。また木質燃料の場合、トレーサビリティの確認や信頼できる森林認証の取得を求めていくことも、持続可能性に問題のある林業が生態系へ悪影響を与えてしまうのを防ぐために重要である。さらにバイオマスの活用は、コジェネを中心に進めることが望ましい。再生エネ買取法では、バイオマス発電設備そのものの要件を定めるようにはなっていないため、望ましい形ではないが、買取の「区分」は設定可能であり、価格に差を設け、それら条件を満たさないものは実質的にはペイしない構造とすることは可能なはずである。
  • 買取価格の見直しについて:再生エネ買取法では、毎年度(必要があれば半期ごと)買取価格を設定することとなっている(第三条)。今回以降の見直しにあたっては、今後確定される再生可能エネルギーの導入目標をベースに、毎年の導入シナリオを描き、そこからの「ぶれ」の大きさによって買取価格変更の必要性を吟味するべきである。この調整を適切に行なうことにより、電力料金の上乗せによる家庭や企業への負担を最小限にすることが重要である。特にバイオマスについては、区分の設定そのものやコストに係る情報の妥当性を都度吟味していく必要がある。

その他の重要な論点

  • 電電力系統強化を同時並行で進める:各地域に偏在する再生可能エネルギーのポテンシャルを十分に活かし、再生可能エネルギーの割合を着実に高めていくには、電力網の強化と拡大が不可欠である。それぞれの地域において電力系統を整備・拡充し、現状、地域ごとに分断されている全国の電力系統を、広域運用を前提に連系する必要がある。現時点では日本の再生可能エネルギーの量は非常に少ない(大規模水力を除けば全電力の1%程度)ため、多少割合を増やした程度では全く問題にならないが、たとえば現在 経済産業省の基本問題委員会で議論されているような「2030年に35%」まで割合を高めていくには、電力網の強化・拡大・連系を、再生エネ買取法の固定価格買取制度と同時並行で進めていく必要がある。
  • デマンドレスポンスの視点を活用する:ITを活用して電力の需要と供給のバランスを適切かつリアルタイムに調整するスマートグリッドの整備が必要である。スマートメーターの普及により、需要側・供給側が電力の供給量や電気料金に関する情報を共有できれば、効率的な需要管理と省エネが可能となる。
  • 再生可能エネルギーを推進するための周辺の制度・規制の整備:再生可能エネルギーを推進するには、固定価格買取制度による経済的な後押しに加え、制度・規制を再整備し、導入が進みやすいような環境を整える必要がある。太陽光発電設備を建築物や有効に活用されていない土地に設置したり、風力発電設備を設置する際の手続きの流れを周辺環境への十分な配慮を担保しつつ、明確かつ無駄のないようにすることが重要である。そのために「必要な施策を講ずるものとする」ことが再生エネ買取法では国の責務と条文で位置づけられており、再生可能エネルギー源ごとに慎重かつ迅速に整えていく必要がある。政府は、2011年11月にとりまとめた「政府のエネルギー規制・制度改革アクションプラン」において26項目をあげ、そのうちの9項目が「再生可能エネルギーの導入加速」に関わる内容である。このうち、たとえばメガソーラーの立地制約として指摘されている工場立地法上の生産施設面積率については、50%から75%へ引き上げる改正が2012年1月に実施済みである。その他、小水力発電施設の設置に当たっての水利権の許可手続きの合理化や、洋上風力発電のための漁場利用との調整円滑化といった制度・規制環境の整備を早期に実施していく必要がある。
  • 適切な環境影響評価の確実な実施:再生可能エネルギーの普及が、地域環境・社会の悪化を招くことがあってはならない。たとえば、風力発電設備の建設、地熱発電設備の開発、バイオマスの利用などは、事業の進め方が不適切であると環境や地域社会に負の影響を与える可能性もある。これを防ぐためには、事業の計画段階より、地域とのコンサルテーションを十分に行ないながら、「ゼロオプション」も含めて計画を進めていくことが不可欠となる。この部分が担保されないと、地域の信頼が得られず、長い目で見れば結局は再生可能エネルギーの普及が阻害されることは、近年の風力発電の状況を見ても明らかである。他方で、制度が必要以上に複雑になりすぎると、普及の足かせとなってしまう。適切な手続きにより環境への負の影響を最小にしつつ、迅速に再生可能エネルギーを展開できる仕組みの整備が必要である。たとえば、上記の「政府のエネルギー規制・制度改革アクションプラン」において「発電設備整備の計画段階から漁協も含む関係者が参画し、調整を円滑に進めていくための枠組みを盛り込む」といった項目も挙げられているのは評価でき、着実な実施が期待される。また、地域の資本による建設・運営により、地域にお金が落ちる仕組みをつくり、地域による積極的な導入を図ることも重要である。

関連情報

【お問合せ先】
気候変動・エネルギーグループ(Tel:03-3769-3509  climatechange@wwf.or.jp)
広報室/大西(Tel:03-3769-1714 ohnishi@wwf.or.jp)

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