地域主権改革を巡る最近の動きについて 地方環境事務所の地方移管に関する追加意見


2012年11月7日 意見書

環境大臣 長浜博行 殿

公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン
事務局長付 草刈秀紀

当公益法人は、2011年11月11日に「地方環境事務所の地方移管に対する要望書」を提出した。その後、2012年1月19日に「関西広域環境保全計画」が策定され、また、2012年9月28日には、生物多様性条約における愛知目標を2020年までに達成すべく「生物多様性国家戦略2012-2020~豊かな自然共生社会の実現に向けたロードマップ~」(以下、生物多様性国家戦略)が生物多様性基本法に基づき法定計画として閣議決定されるなど進展があった。

特に生物多様性国家戦略は、去る10月8日から19日まで開催された生物多様性条約第11回締約国会議(インド:ハイデラバード)において英訳され世界会議で報告された。

そこで、生物多様性国家戦略において、地方環境事務所が担うべき項目(別添資料1)を抜粋し、関西広域環境保全計画と比較した。

生物多様性国家戦略について

別添資料で分かる通り、環境省が担うべき生物多様性保全事業は多岐に渡り、かつ、広域圏レベルなどにおける具体的な生態系ネットワークの形成、更には、国際的なネットワークの協力が不可欠であり、愛知目標の達成には、省庁間の連携が必要不可欠である。また、自然環境保全基礎調査など各種モニタリング調査等が日本の生物多様性を保全する上において地方環境事務所の役割は重要と考える。

関西広域環境保全計画について

一方、2012年1月19日に「関西広域環境保全計画」(以下、保全計画)が策定され先般、進捗状況の中間報告もなされている。

保全計画を読むと、生物多様性に関する記述は2頁程度であり、かつ具体性に欠ける。また、「国の出先機関からの事務・権限移譲がされた暁には、同保全計画の施策展開の見直しをする」と記述されている。しかしながら、関西広域連合における計画の策定スタイルが合意性を取っているため、国家戦略のように現状と具体的な目標を定めて進めることができるとは到底思えない。あたりさわりのない、一般的な書き振りでは、計画の実効性があげられない。
従って、地方環境事務所からの権限移管など受け皿となり得ない。

まとめ

国際的な視野に立って、重要な国立公園などの保護区の指定と実効的な保全・管理を行う為に、また、「生物多様性国家戦略2012-2020」を実行する上において、国の機関である地方環境事務所が、1)現地において国指定の国立公園など保護区を直接、保全・管理すること、2)広域に連携を必要とする生物多様性行政を担う体制を維持すること、今後も国が責任を持って進めることが重要と考える。

本件に関する問い合わせ先:草刈秀紀(kusakari@wwf.or.jp、03-3769-1711)

 

別添資料1

「生物多様性国家戦略2012-2020~豊かな自然共生社会の実現に向けたロードマップ~」(2012年9月28日)地方環境事務所が担うべき施策(抜粋)

特に「第3部 生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する行動計画」(116~252頁)について

第1章 国土空間的施策(119頁)

【広域連携施策】
第1節 生態系ネットワーク
(基本的考え方)

地域固有の生物相の安定した存続、あるいは個体数の減少した生物の回復を図り、将来にわたって生物多様性が保たれる国土を実現するためには、保全すべき自然環境や優れた自然条件を有している地域を核(コアエリア)として確保し、外部との相互影響を軽減するための緩衝地域(バッファーゾーン)を設けるとともに、これらを生態的な回廊(コリドー)により有機的につなぐことにより、生態系ネットワーク(エコロジカルネットワーク)を形成していくことが必要です。

このような生態系ネットワークには野生生物の生息・生育空間の確保、良好な景観や人と自然とのふれあいの場の提供、気候変動による環境変化への適応、都市環境、水環境の改善、国土の保全などの多面的な機能の発揮が期待されています。生態系ネットワークの形成にあたっては、地域固有の生物相に応じた広がりを考慮するとともに、生物の種類によって国境や県境を越えて移動するものから、森林と湿地といった隣接する生態系間を移動するものまで、生息・移動の空間的な広がりは多様であることから、それぞれの生物種に応じて全国、広域圏、都道府県、市町村などさまざまな空間レベルでのネットワークの形成に努めます。

  • 広域圏レベルなどにおいて具体的に生態系ネットワークの形成を進めていくことが重要であることから、関係省庁の緊密な連携のもと、現状の把握をはじめ、その実施に向けた方策を検討します。
    (環境省、農林水産省、国土交通省)
  • 十分な規模と適切な配置の生態系ネットワークの核となる地域を確保・保全するために、第2節の「重要地域の保全」に示す各施策により、地域の拡大、管理水準の向上を進めます。さらに、国土の3分の2を占める森林については、陸域の動植物の多くがその生息・生育を依存していることを踏まえ、生態系ネットワークの根幹として適切な整備・保全を図るとともに、保護林を中心にネットワークを形成する「緑の回廊」の設定をはじめ、渓流沿いや尾根筋の森林などの保護樹帯の設置による、よりきめ細やかな森林生態系ネットワークの形成に努めます。
    (環境省、文部科学省、農林水産省、国土交通省)
  • 緑の基本計画、河川整備計画など、各種計画に生態系ネットワークの形成やその意義を位置づけ、事業者にその重要性を浸透させるとともに、計画的に施策を実行します。
    (国土交通省、農林水産省、環境省)(120頁)

「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ(EAAFP:East Asian-Australasian Flyway Partnership)」に基づく渡り鳥の重要生息地の国際的なネットワーク、国際サンゴ礁イニシアティブ(ICRI:International Coral Reef Initiative)による重要サンゴ礁ネットワークや国境を越えた長距離の移動を行う海棲哺乳類やウミガメ類などの回遊ルートの保全に関連して国際的に議論されている保護区のネットワークなどの強化に向けた国際協力を進めます。(環境省)(120頁)

【現状】平成20 年より毎年ICRI 東アジア地域会合を開催し、海洋保護区地域データベース、海洋保護区地域ギャップ分析、サンゴ礁分布図、海洋保護区管理効果評価システム、海洋保護区ガイドライン等の要素を含んだ地域戦略の策定(平成22 年)と実施のフォローアップ(平成23 年から)を進めている

【目標】東アジア地域サンゴ礁保護区ネットワーク戦略2010 に沿った取組の達成(期限定めず)

(121頁)
生物多様性の保全のためには、国土の地域ごとの生物学的特性を示す代表的、典型的な生態系や、多様な生物の生息・生育の場として重要な地域について、保全対象に応じて十分な規模、範囲、適切な配置、規制内容、管理水準、相互の連携を考慮しながら保全していくことが必要です。

重要地域の保全のための地域指定制度としては、生物多様性を含む優れた自然の保全を直接的な目的とするものと、直接的な目的は文化財の保護や国土保全、生活環境の確保などであっても、間接的に生物多様性の保全にも寄与するものがあります。これらの制度がわが国の生物多様性保全に果たしてきた役割は大きい一方で、生物多様性を含む優れた自然の保全を直接的な目的とする地域指定制度については、指定実態や規制内容、管理水準が、生物多様性の観点から見るといまだ十分とはいえない状況もあります。また、世界遺産をはじめとする人類全体にとっての重要地域の保全のためには、関係機関が連携して、国際的に認められた価値を将来にわたって保全することが国際的な責務となっています。

このため、生物多様性を保全するための屋台骨である国立・国定公園、要所である自然環境保全地域、鳥獣保護区、奥地脊梁山地や水源地域に広く分布する国有林野における保護林や緑の回廊などに指定されている地域については、全国規模から地域規模までさまざまな段階における重要な生態系や生物の生息・生育地が、国土の生態系ネットワークの核となる地域としてよりよく機能するよう、科学的な知見に基づく指定、見直しを進めるとともに、その生態系タイプに応じた保護管理の充実を図ります。また、他の地域指定制度に基づく地域についても生物多様性の保全やそれを通じたさまざまな生態系サービスの供給などの観点を踏まえつつ、適切な保全管理を図っていきます。

国土の生態系ネットワーク形成を促進するため、自然環境保全基礎調査や各種調査の結果などの科学的知見や既存の指定地域の状況などを踏まえ、必要に応じて、原生自然環境保全地域及び自然環境保全地域の指定または拡張に向けた取組を進めます。特に、海域保全施策の充実を図るため、海域における自然環境保全地域の指定に向けた取組を進めます。(環境省)

2.1 自然公園の指定など
(具体的施策)(122頁)

  • 自然環境や社会状況、風景評価の多様化に対応して行った国立・国定公園の資質に関する総点検事業の結果等を踏まえ、陸域生態系、陸水域生態系及び沿岸域生態系について保護の対象を検討し、全国的に国立・国定公園の指定の見直し、再配置を進めます。(環境省)
    【現状】国立公園数:30 箇所、国定公園数:56 箇所(平成23 年度末)
     
  • 自然林と自然草原(植生自然度9、10)の極めて自然度の高い地域については、自然環境の保全を直接の目的とする国が指定する他の保護地域制度とあいまっ て、長期的に地方ごとにまとまりのある十分な広がりをもった地域を保護の対象とすることを目指し、優先度の高い地域から段階的に公園区域の拡充を図ります。
    【現状】国立公園数:30 箇所、国定公園数:56 箇所(平成23 年度末)
     
  • 自然景観、野生動植物や生態系に関する調査・モニタリングを充実し、その結果を踏まえ、おおむね5年ごとに公園区域及び公園計画を見直し、きめ細かい公園管理を推進します。(環境省)


2.2 自然公園の保護管理
(具体的施策)(123頁)

  • 国立公園の保護管理にあたっては、従来の自然保護官(レンジャー)に加え、平成17年から自然保護官補佐(アクティブ・レンジャー)の配置を進めており、 国立公園の巡視や監視をはじめとする現地管理体制を、引き続き充実・強化するとともに、適正な保護管理を進めます。(環境省)
    【現状】62 自然保護官事務所に自然保護官補佐を配置し(配置率71%:平成23 年度末)、国立公園等の保全管理を進めるにあたって、地域とつながりを一層深めている等の成果を上げている
    【目標】新設・拡充する国立公園や世界自然遺産地域等の保全管理の強化を図るべき地域を中心に、自然保護官補佐が未配置の自然保護官事務所に配置していく
     
  • 自然公園指導員やパークボランティアに対する研修機会を増やすなど、活動の促進を図ることにより、自然公園の適正な利用とその保全活動の充実を図ります。(環境省)
     
  • 国立公園の管理については、国立公園等民間活用特定自然環境保全活動(グリーンワーカー事業)により、高山植物の盗掘防止パトロール、植生回復作業や外来種除去作業などの自然環境保全活動を実施する
     
  • 国立公園の管理運営のビジョンや方針等について、地方自治体等の考え方を適切に反映し、地域の観光施策や教育・文化施策等と連携した魅力的な国立公園づく りを進めるため、国、地方自治体、地域住民、専門家、企業、NGO などの協働による国立公園の管理運営体制の構築を進めます。そのために、地方環境事務所、国の出先機関、地方自治体、公園管理団体などの各機関の意思決定 権のある者が参画する協議会の設置を、全国の複数の国立公園においてモデル的に実施するとともに、全国展開に向けて、協働管理の仕組みの制度化その他必要 な措置を検討します。(環境省)
     
  • 国立公園内の自然環境が劣化している場所や生態系が分断されているような場所では、自然再生事業を推進します。(環境省)
     
  • 国立・国定公園における動植物保全方針を策定し、保全方針を踏まえ、採捕を規制する指定動植物を見直すとともに、生息地管理も含めた生態系保全を図ります。(環境省)(124頁)


2.3 自然公園の利用の促進
(具体的施策)(124頁)

  • 優れた自然環境を有する自然公園をフィールドに、自然観察会の実施やビジターセンターなどにおける自然環境保全についての普及啓発活動を推進します。ま た、日本の自然環境のすばらしさをパンフレットやホームページなどを活用して国内外にPRするとともに、自然環境への理解を深め、自然とふれあうための情 報の整備と提供を推進します。(環境省)
     
  • 環境教育・環境学習の推進、エコツーリズムの推進など、自然公園利用の質の向上に向けた検討、取組を推進します。(環境省)
     
  • 利用者の集中など過剰利用による植生破壊や野生動物の生息環境の攪乱を防止するため、利用誘導などによる利用の分散や平準化のための管理手法を検討・実施するとともに、自然公園法に基づく利用調整地区の指定や管理を行います。(環境省)
    【現状】利用調整地区数:2地区(平成23 年度末)
     
  • 国立・国定公園内の利用の集中する場所でマイカー規制の取組を推進するとともに、代替交通の低炭素車両導入を支援することで、渋滞などによる影響の緩和やマイカーによる二酸化炭素の排出を抑制し、より自然環境に配慮した自然公園の利用を推進します。(環境省)


2.4 自然公園の整備
(具体的施策)(125頁)

  • 国立公園の特別保護地区、第1種特別地域などの保護上重要な地域や集団施設地区などの利用上重要な地域について、安全かつ適切な利用を推進するための登山 道整備(標識整備、洗掘箇所の修復、植生復元など)、地域と一体となったエコツーリズムの取組を展開するために必要な活動拠点施設の整備のほか、誰もが安 全・快適に利用できるよう施設のユニバーサルデザイン化などを推進します。また、優れた自然環境を有する優れた自然環境を有する国立公園の魅力やサービス の向上に資するビューポイント施設、多言語対応案内標識などの統一的な整備のほか、沿線の自然や歴史、文化とふれあうための長距離自然歩道などについて整 備を実施します。(環境省)
     
  • 平成20 年3月に宮内庁から環境省へ所管換された、日光国立公園内の旧那須御用邸用地については、園路やビジターセンター等の整備を進め、平成23 年度「那須平成の森」として開園しました。引き続き、自然環境の保全及び国民が自然に直接ふれあえる自然体験活動を推進します。(環境省)
     
  • 自然生態系が消失・変容した箇所において、森林・湿原・干潟・藻場などの自然環境の再生・修復を実施します。(環境省)


4 生息地等保護区
(具体的施策)(126頁)

  • 絶滅のおそれのある野生動植物の種の安定した存続を確保するためには、生息・生育地の確保は欠かせないものであることから、必要に応じ鳥獣保護区、自然公 園など関連する他の制度における保護施策とも緊密に連携しながら、国内希少野生動植物種について、生息・生育環境が良好に維持されている場所などを優先的 に、生息地等保護区の指定の推進を図ります。また、今後作成する絶滅のおそれのある野生生物の保全戦略に定める保護区指定の考え方等も踏まえ、保護区の再 編を図ります。(環境省)
    【現状】生息地等保護区:9箇所、885ha(平成24 年9月)
     
  • 生息地等保護区ごとに定めている保護の指針に従い、適切な管理や、生息・生育環境の維持改善を行うとともに、対象種の生息・生育状況の把握に努め、必要に応じ保護の指針や区域の見直しを検討します。(環境省)


ラムサール条約湿地
(具体的施策)(128頁)

  • ラムサール条約(昭和46 年採択)は、国際的に重要な湿地と、そこに生息・生育する動植物について、これらの保全と賢明な利用(ワイズユース)を進めるための条約で、わが国は昭和 55 年に加入しました。ラムサール条約では、国際的に重要な湿地をラムサール条約湿地として最低1か所登録することが義務づけられており、わが国は平成24 年8月までに46か所の湿地を登録しました。また、ラムサール条約湿地の国際的な基準を満たすと思われるわが国の湿地について、潜在候補地として選定し、 公表しました。同条約の流れとしては、平成11 年の第7回締約国会議において目標とした、「条約湿地数を2,000 か所にまで増やす」ことを達成(平成24年5月現在2,006か所)し、登録湿地数の増加のみならず、登録湿地の質をより充実させていく方向が重視されて きていることから、わが国においても既に登録された湿地について、条約の理念に沿って保全と賢明な利用の質的な向上を図ります。具体的には、平成32 年までに、これまで登録されたすべての湿地についてラムサール情報票(RIS)の更新を行うとともに、地域の理解と協力を前提として必要な登録区域の拡張 等を図ります。なお、国際的に重要な湿地の基準を満たすことが明らかであって、登録によって地域による保全等が円滑に推進されると考えられる湿地について は、これまでの登録状況にもかんがみ、平成32 年までに新たに10 か所程度の登録を目指します。(環境省、農林水産省)
     
  • ラムサール条約湿地を抱える市町村が任意に加盟する「ラムサール条約登録湿地関係市町村会議」をはじめ、関係する地方自治体や地域住民、NGO、専門家な どと連携しつつ、条約湿地に関するモニタリング調査や情報整備、湿地の再生などの取組を進めます。また、条約湿地の保全と賢明な利用(ワイズユース)のた めの計画策定の支援や賢明な利用の事例紹介、普及啓発などを通じて、各条約湿地の風土や文化を活かした保全と賢明な利用を推進していきます。(環境省、農 林水産省、国土交通省)


2 自然再生の新たな取組の推進
(具体的施策)(133頁)

  • 全国的、広域的な視点に立った自然再生の方向性や具体化の方策について、わが国の生物多様性総合評価の評価結果や生態系ネットワーク構想の進展も踏まえつつ、関係省庁が連携して検討し、計画的な実施のための取組を進めます。(環境省、農林水産省、国土交通省)
  • 広域的観点から自然再生を展開するため、生態系ネットワークの図化をもとに、広域圏レベルで自然再生の目標に対する共通の認識を形成し、それに向かってさまざまな主体が自然再生を認識し、実施するための手法の検討を進めます。(環境省、農林水産省、国土交通省)


 

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