積極的な温暖化対策の推進を!首相の所信表明演説に寄せて


2013年1月28日、第183回国会において、安倍晋三首相は所信表明演説を行ないました。しかし、その演説内容は、経済再生や震災復興等の課題に論点が絞られ、残念ながら、気候変動や地球温暖化に対する政策方針は示されませんでした。気候変動問題は、アメリカ合衆国でも今後重要課題として取り上げられる予定でもあり、WWFは今後、日本の国会で行なわれる施政方針演説において、明確かつ野心的な方針が示されることを期待したいと考えています。

言及のなかった地球温暖化問題

今回の所信表明演説の中に、気候変動(地球温暖化)問題に対する言及が、まったく無かったことについて、WWFジャパンは同日、この事が、安倍政権における気候変動問題の軽視に直結しないことを期待する声明を発表しました。

声明は、主に下記の5つの点について、言及しています。

・気候変動対策を後退させるべきではないこと

・省エネルギーおよび再生可能エネルギー目標を
 より野心的・包括的に進めること

・石炭重視政策からの転換を進めること

・発送電分離を含む電力システムの抜本的な改革を進めること

・原発ゼロ方針を確定的にすべきこと

詳しくは、下記の声明をご覧ください。

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声明 2013年1月28日

気候変動対策を「取り戻す」ために安倍総理の所信表明演説に際して

安倍総理は、本日(2013年1月28日)、第183回国会において、所信表明演説を行なった。演説内容は、経済再生や震災復興等の主要課題に論点を絞り、気候変動や地球温暖化に対する政策方針は示されなかった。WWFジャパンは、気候変動問題に対する言及が皆無であったことに失望の念を禁じえない。この事実が、安倍政権において気候変動問題の軽視に直結しないことを期待する。気候変動問題は、安倍政権がその関係を重視する米政権においても重要課題としてとりあげられる予定であり、今後、本国会内で行われる施政方針演説においては、明確かつ野心的な方針が示されることを期待したい。

気候変動対策を後退させるべきではない

気候変動に関しては、先の日本経済再生本部において、民主党政権が掲げた「25%削減目標」を「ゼロベースで」見直すとの総理指示が出された。東日本大震災および福島第一原発事故をふまえて、エネルギー政策の見直しが行われるため、それに伴って既存の気候変動中期目標が見直されること自体はしかたがない。しかし、その見直しが、気候変動目標の大幅な引き下げにつながることは避けなければならない。日本の目標がいたずらに引き下げられることは、世界にとっても、日本にとっても負の影響が大きい。

国際的には、気温上昇を「2度未満」に抑えるために必要な削減量と、各国が誓約した削減総量との間に大きな差があることが認識されている。国連交渉では、その差を埋めるために、いかにして排出量削減の水準を引き上げるかを議論している最中である。もしここで大幅な目標引き下げを日本が行えば、明らかにその流れに逆行し、困難な交渉が続いている国連交渉にさらに水を差すことになる。また2020年以降の新しい枠組み交渉においても、さらなる地位低下は避けられない。

日本は、他の先進国と共に、2020年の削減目標を向けてどのような対策を行っているかを隔年報告書という形で2014年1月1日までに国連に提出することに合意している。つまり、COP19が開催される2013年11月に「目標」を決めているようでは、本来は遅すぎるということも踏まえなければならない。

省エネルギーおよび再生可能エネルギー目標をより野心的・包括的に

政権が変わろうとも、日本にとって、今後の省エネルギーおよび再生可能エネルギーの推進の重要性はいささかも変わりえない。今後策定される「エネルギー基本計画」においては、これらについて、野心的な目標を設定して推進していくべきである。

特に省エネルギーについて、最終エネルギー消費について、産業部門や業務部門での更なる対策によって、2010年比30%減を目指すべきである。

再生可能エネルギーについては、日本の再生可能エネルギーのポテンシャルを最大限に活かすため、少なくとも、35%以上(3,500億kWh以上)を目指すべきである。また、熱や燃料利用も含めた目標を提示するべきである。

石炭重視政策からの転換を

気候変動政策の観点からは、化石燃料について、石炭重視の政策からの転換も必須である。昨今は、震災の影響を受けて、石炭重視の姿勢に拍車がかかっている。その一例が、2012年11月に発表された東京電力による石炭火力を想定した発電設備の入札である。こうした流れは、気候変動対策からの逆行がはなはだしい。よりCO2排出量が少ない天然ガスへのシフトを出来る限り進めていくべきである。

発送電分離を含む電力システムの抜本的な改革を進めること

自然エネルギー推進の大前提として、既存の電力システムの抜本的な改革が必要となる。地域内・地域間の系統連携の強化、発送電分離と電力自由化による電力事業のあり方の改革、電力需給のバランス調整を行なえるような次世代電力網・スマートグリッドの確立などの社会的インフラの整備についても、速やか行なっていくことが必要である。

原発ゼロ方針を確定的にすべき

原発については、2012年、民主党政権下で、「国民的議論」を経て、「原発に依存しない社会の一日も早い実現」を掲げ、「2030年代」にゼロにしていく方向性が示された。新しい政権の方針が違うとしても、国民の多くが「将来的には原発を無くす」という方向性を支持した事実は否定し難い。
原発については、段階的かつ確実に無くしていく方針を採択するべきである。

お問い合せ先

WWFジャパン(公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン) 気候変動・エネルギーグループ
〒105-0014 東京都港区芝3-1-14 日本生命赤羽橋ビル6F
Tel: 03-3769-3509 / Fax: 03-3769-1717 / Email: climatechange@wwf.or.jp

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