ツキノワグマの大量出没に関する緊急対策の要望書


要望書 2014年12月2日

環境大臣 望月 義夫 殿

(公財)世界自然保護基金ジャパン 会長 徳川恒孝

拝啓 時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます。 日頃、自然環境の保全に関するご尽力を賜り誠にありがとうございます。

さて、ツキノワグマが人里に大量・頻繁に出没する問題(大量出没)は、2000年代になると数年ごとに各地で発生し、2004年・2006年・2010年には全国規模で発生しました。ツキノワグマの大量出没が発生すると、人身被害や農作物被害が増加し、その結果として有害捕獲の頭数が増加します。

今年9月時点で発表された*注1、本年におけるツキノワグマの許可捕獲頭数は全国で2,712頭であり、全国的な大量出没および大量捕獲の様相を呈しています。さらに、秋期の主要な餌である堅果類の凶作が伝えられる中、冬期まで餌を探して人里へ出没する可能性も指摘されています。

一方、国の政策として、急速な個体数増加や分布拡大が起きているニホンジカやイノシシを、2023年までに半減させることを目指した抜本的な捕獲対策が進められています。これらの対策を推し進める上で、その罠にツキノワグマが錯誤捕獲されてしまう可能性が、今まで以上に高くなる事態が憂慮されます。

鳥獣保護管理法の基本指針によれば、「ツキノワグマの生息地であって錯誤捕獲のおそれのある場合については、地域の実情を踏まえつつ、ツキノワグマの出没状況を確認しながら、わなの形状、餌付け方法等を工夫して錯誤捕獲を防止するよう指導するものとする。また、ツキノワグマの錯誤捕獲に対して迅速かつ安全な放獣が実施できるように、放獣体制等の整備に努めるものとする*注2」とされています。

以上を踏まえ、鳥獣類の狩猟が解禁された現在の緊急的な措置として、1)錯誤捕獲されたツキノワグマの放獣の徹底、2)ツキノワグマの錯誤捕獲を起こさない狩猟方法の工夫、を各自治体に向けて呼びかけ(「助言」*注3)を行なってください。

具体的には本件に関連し、以下の通り要望いたします。

1)イノシシなどの罠にツキノワグマが錯誤捕獲された場合、放獣を徹底するよう呼びかけてください。

11月15日より鳥獣類の狩猟が解禁され、従来の有害捕獲と併せて、より多くの狩猟者・有害捕獲従事者がニホンジカやイノシシなどの捕獲を実施することになります。 鳥獣保護管理法の趣旨を鑑みた順法精神の観点から、ツキノワグマが錯誤捕獲された場合には、捕獲者あるいはその代理となる地方自治体に対して、最大限の努力をもって放獣するよう呼びかけを行なってください。 また放獣の際には、地域住民の理解が必要不可欠であることから、理解を得るための調整および周知徹底を行なうよう、地方自治体に呼びかけてください。

2)ツキノワグマの錯誤捕獲を起こさない狩猟方法の工夫を呼びかけてください。

ツキノワグマの生息域でニホンジカやイノシシなどの狩猟をする場合には、クマの痕跡を十分に把握し、近くにいる場合には罠や檻を作動させない、さらに、クマの錯誤捕獲の恐れのある、イノシシ用などの大型の箱罠を使用する場合は、天井に脱出口を設ける(クマスルー檻)など、地方自治体が狩猟者に対してツキノワグマの錯誤捕獲防止を指導するよう呼びかけてください。

敬具

【注釈】
注1:H26年度におけるクマ類の捕獲数(許可捕獲数)について[速報値](環境省)
注2:「鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するための基本的な指針」の第四-2-(6) 「捕獲実施に当たっての留意事項」②より
注3:地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律

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