トロフィーハンティングと環境保全
- この記事のポイント
- 世界の各地で、さまざまな野生動物を対象に行なわれている狩猟。地域の暮らしや、先住民の権利として認められている狩猟がある一方で、「トロフィーハンティング」と呼ばれる、娯楽としてのハンティングも行なわれてきました。 WWFは狩猟に限らず、先住民や地域コミュニティの権利については、これを尊重する一方、種の存続を脅かすあらゆる狩猟に反対しています。
狩猟とトロフィーハンティング
野生動物を「トロフィー(戦利品・記念品)」として手に入れることに価値を見いだす狩猟があります。野生生物を大切に思うとき、理解しがたく、悲しみや憤りを感じさせる行為といえます。
WWFは、種の存続を脅かすあらゆる狩猟に反対します。また、動物を単にトロフィーとして得ることだけを目的とした狩猟を支持しません。
一方で、野生動物と隣り合わせで暮らす人々が共存を受け入れ、どのように自然資源を活用するのか、地域社会ごとに野生生物保全と持続可能な発展に寄与させる権利を尊重しています。
狩猟を禁じたり、制限する法律や制度は、各国政府や地方自治体が策定する権限を持ち、その実行と管理に責任を負うものです。WWFはそうした権限を持たない民間の立場であるため、各取り組みや制度が適切に機能しているかを確認するとともに、さまざまな保護プロジェクトを通じて、狩猟の適切な管理を推進する取り組みを行なってきました。
WWFは、自然保護の取り組みが各国政府の権限や、先住民族および地域コミュニティの土地や資源(野生動物の利用を含む)に関する権利を尊重して進められることが重要だと考えています。そのため、世界各地で政府、地域コミュニティ、先住民族などと協力しながら、野生生物と自然環境の保全を推進しています。
トロフィーハンティングに関するWWFの立場
WWFは、以下の条件が明確に満たされる場合を除き、トロフィーハンティングに反対します。
- 対象となる種の野生個体群、その生息地、および関連する生態系に利益をもたらしていること。
- 先住民族および地域コミュニティに経済的その他の利益をもたらし、それが野生生物個体群の回復・保全への動機となっていること。また、土地利用の選択肢として野生生物保全が継続的に支持されることに寄与すること。
- 適切に機能している法的枠組みの下で、その狩猟が管理され、実施されていること。
- 地域の文化や宗教的価値観に配慮し、地域の実情に即したものであること。
- その他、最低限の保全基準を満たしていること。
WWFが反対するトロフィーハンティング
WWFは、以下の場合にトロフィーハンティングへ反対します。
- 最低限の保全基準を満たす方向へ改善できる合理的な見込みがない場合。
- 違法に実施されている場合。
- その収益が、自然保護や地域コミュニティ、先住民族に対する利益につながっていることを客観的に示せない場合。
- 広く認められている倫理的な基準に従うための取り組みが行われていない場合。
- 野生生物の個体群に対して、より大きなトロフィーや特定の体色を持つ個体を生み出すことを目的とした遺伝的操作や選択的繁殖が行われている場合。
- トロフィーハンティングを目的として、本来その地域には生息していない外来種や非在来種が導入されている場合。
- トロフィーとしての大きさや品質の向上を目的として、動物に栄養補給や補助的な給餌が行われている場合。
- トロフィーハンティングを目的として動物が別の場所から移送され、地域に生息する個体群に対する持続不可能な捕獲水準を補うために利用されている場合(いわゆる「放獣・捕獲(put-and-take)」の慣行)。
- 地域の文化的または宗教的な価値観と整合していない場合。
よくあるご質問
「トロフィーハンティング」とは?
狩猟した動物の剥製や角、頭部などを「トロフィー(戦利品・記念品)」として持ち帰ることを主な目的として行われる狩猟です。一般的には、対象国の法律に基づき、合法的に実施されます。
なぜトロフィーハンティングが行われるのですか?
一部の地域では、地域コミュニティや先住民族が生活の糧を得る手段のひとつとしてトロフィーハンティングに依存しています。トロフィーハンティングによる収入は、彼らの家族の生活を支え、医療、水・衛生サービス、教育へのアクセスを確保するうえで重要な役割を果たしている場合があります。また、その収入があることで、人々が野生生物の生息地や種の保全に関心を持ち、ときには危険な野生動物との共存を受け入れる動機にもなっています。
野生生物と隣り合わせで暮らす人々の現実は、都市部に住む多くの人々が日常的に経験する状況とは大きく異なります。彼らは、人命を脅かしたり、家畜に被害を与えたり、住居や農作物などの財産を損なったりする可能性のある野生動物と共に暮らしています。
そのため、トロフィーハンティングを中止するのであれば、それに代わる安定した収入源と、野生生物との共存を後押しする別の仕組みが必要になるケースが生じ得ます。また、トロフィーハンティングによる獲物の輸入を禁止する場合にも、その影響を直接受ける地域コミュニティや先住民族が失う収入を補う、持続可能で信頼できる代替策を確保することが重要です。
長期的かつ持続可能な解決策を実現するためには、地域コミュニティや先住民族が受け入れられ、実際に生活を支えることのできる選択肢を確保することが不可欠です。
トロフィーハンティングは地域コミュニティや先住民族の役に立っているのでしょうか?
トロフィーハンティングによって地域コミュニティにもたらされる利益の大きさは、地域や制度のあり方によって異なります。実際に、一部のトロフィーハンティングの事業では、地域コミュニティや先住民族に対して経済的な利益がもたらされていることが報告されています。また、狩猟によって得られる野生動物の肉(ブッシュミート)が、地域の重要な食料資源となっている場合もあります。
一方で、狩猟権の運営によって得られる利益が、必ずしも地域コミュニティに還元されていない事例もあります。一部の国では、ガバナンスの弱さや汚職、透明性の欠如、不十分な利益配分によって、本来期待される地域への恩恵が十分に実現されていないことを示す事例も報告されています。
地域社会への大きな利益を生み出していると主張するトロフィーハンティング事業については、その効果を客観的に示し、十分な説明責任を果たすことが求められます。
トロフィーハンティングは種の絶滅を引き起こしているのでしょうか?
WWFの『Living Planet Report』によると、世界の野生生物の個体群は1970年以降、平均で73%減少しており、自然は深刻な危機に直面しています。
この報告書では、野生生物に対する主な脅威として、農地拡大などによる土地利用の変化や気候変動が挙げられています。生息地の喪失と急速な気候変動が、多くの野生生物の減少を引き起こしているのです。
一方で、生物資源の過剰利用も一部の種にとって重要な脅威となっています。特に問題となっているのは、過剰な捕獲や違法な狩猟(密猟)です。
トロフィーハンティングについては、多くの人々にとって受け入れがたいものであり、強い懸念を呼ぶ問題です。しかし、適法に管理されたトロフィーハンティングそのものは、現在確認されている世界的な野生生物減少の主要な要因には位置づけられていません。これは、その対象となる動物の数が比較的限られているためです。
ただし、WWFは、種の存続に悪影響を及ぼす狩猟や、持続可能ではない利用に対しては反対しており、野生生物とその生息地を守るための取り組みを続けています。
トロフィーハンティングという問題は単純に賛成・反対で割り切れるものではなく、ある問題の背景や複雑さを理解することは、その行為を支持することと同じではありません。
世界には、絶滅のおそれのある野生生物と生活空間を共有しながら暮らしている、数多くの地域コミュニティや先住民族がいます。私たちが目指すのは、人と自然のどちらかを優先するのではなく、双方がともに健全に存続できる社会を実現することです。
WWFは、人と自然が調和して生きられる未来を目指し、これからも世界各地のパートナーとともに、野生生物と生物多様性の保全に取り組んでいきます。



