地球上すべての人々にエネルギーを!世界のエネルギーの「公平性」


【シリーズ】新しいエネルギーを考える 第1回

今、日本で、世界で、原子力発電に大きな疑問符が付けられ、新たなエネルギーのあり方が真剣に問い直されています。私たちの生活に欠かせない光や熱を生み出すエネルギー。全ての人々が手頃で安全なエネルギーを使えるようにしていくためには、これから何をめざすべきなのか。
新しいエネルギーについて考える本シリーズの第1回は、エネルギーの「公平性」について取り上げ、エネルギー問題の根本に横たわり続けている世界の課題に注目します。

電気なしで生活している人は世界に何人?

日本では、たとえば電気製品を使いたい時、コンセントにつなげばいつでも使うことができます。「電気を使う」ということは、いわば暮らしの中では当たり前のこと。

ですが、これは決して、世界的な「常識」ではありません。

いま、確実な電気の供給を受けずに生活している人が、世界にどれくらいいるかご存知ですか?

その数、実に14億人(*1)。日本の総人口の10倍以上です。

また、調理や暖房等の燃料として、薪材や作物残渣(刈り取った農作物の葉や茎など)、動物の糞といった、昔ながらのバイオマス燃料をエネルギー源として頼っている人も多くいます。

その数は、途上国を中心に世界に27億人以上。(*2)

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生活用の燃料に薪を調達する人たち(パキスタン)。途上国の中では、この数年で生活環境が大きく改善された国もあるが、いまだにこうした燃料に 頼って暮らす人は多い。こうした薪の使用は、森林の破壊も引き起こしている。

このような旧来型のバイオエネルギーは、持続可能でないやり方で採取されるケースも多く、場所によっては土壌浸食や洪水、砂漠化を引き起こし、地域の自然環境にも悪影響を及ぼすことがあります。

森林の伐採は、温室効果ガスの増加にもつながります。また、これらの燃料を燃やすことで発生した有害な煙が、屋内に充満し、住民に健康被害を引き起こすケースもあります。

WHOによると、燃焼時の煙の吸引により、毎年250万人の女性や幼児が亡くなっています(*3)。

世界のエネルギー消費は公平に行なわれてきたか?

こうした問題の根底には、常に一つの問いがつきまとっています。

「世界のエネルギー消費は公平に行なわれてきたか?」という問いです。

歴史的に見た時、この問いには「いいえ」と答えねばなりません。

先進国と称される一部の裕福な国々が、石油や石炭などの化石燃料をたくさん使い、経済成長を遂げてきた一方で、貧しい途上国には、いまだに電気もなく、光熱を薪などから得て暮らしている人たちが数多くいるのが現状です。

さらに、このエネルギーについての「不公平」は、化石燃料の消費によって生じる気候変動(地球温暖化)の影響においても、不公平を生み出しています。

というのも、温暖化の悪影響を最も強く受けているのは、電気をろくに使わずに生活している、貧しい国の人々だからです。

ネパールのバルディア国立公園周辺の緩衝地帯で薪を集める子どもたち。地域の燃料はまだ薪が主力。
ここではWWFの支援のもと、国立公園(保護区)内の森を守るため、地域の人々が入って薪を採ることのできる森林エリアを緩衝地帯に設けて管理を 徹底。乱伐を防止している。

では、世界中の人たちに電気を供給し、生活の質や環境も改善してゆくためには、温暖化の脅威を取り除き、未来を守るためには、どうすればよいのでしょうか。

確かに現状で、貧困層の電気へのアクセスを遠ざけ、このような状況をますます悪化させている、いくつかの要因があります。

その一つが、エネルギー価格の上昇です。

もう「化石燃料」は世界を豊かにしてくれない

現在、先進国をはじめとする世界の国々のエネルギー供給は、石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料に大きく頼っています。

しかし、これらの資源には限りがあります。これは今後、資源量の減少と共に、燃料価格がさらに上昇していく可能性を示しています。

また、こうした燃料はしばしば投機の対象となったり、各国の政治的な思惑を反映する形で、価格が大幅に上下します。

つまり化石燃料は、資源の量としても、経済的な視点からも、いつまでも依存し続けられるものではない、ということです。

途上国の状況を改善していく上でも、これらは大きな障害になります。

まず、資源量に限りがあり、価格が大きく変動し、また長期的には価格が上昇し続ける化石燃料は、頼りになる有効な選択肢とはいえません。

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メキシコ湾で起きた、BP社の石油採掘施設の事故。大量の油が海に流出し、自然環境に甚大な被害をもたらした。

何より、化石燃料の過剰な利用は、温暖化を促進させ、水不足や異常気象の増加等による被害をさらに深刻化させることになります。

また、際限なく「なるべく安い」化石燃料を追い求める行為も、行き過ぎた開発につながり、自然環境に大きな負担をかける原因になります。
2010年にメキシコ湾で発生した、イギリスの大手石油会社BPによる原油の流出事故は、その最たる例といえます

このように、化石燃料を大量に使い続けることは、地球温暖化の主原因となるだけでなく、あらゆる面で悪影響をもたらすことにつながっているのです。

「公平性」を実現する2つのカギ「自然エネルギー」と「省エネ」

それでは、世界に公平にエネルギーを供給し、次世代の社会を支えることの出来る新しい未来のエネルギーとは、何なのでしょうか?

いうまでもないことですが、放射能汚染の危険が伴う原子力は、選択肢として適切とはいえません

健康被害の懸念をさらに高めて、貧困層の生活にさらなる脅威を加えることになるばかりか、放射性廃棄物という負の遺産を、何世代にもわたり残すことになるからです。

答えは、自然の中にあります。それは、地球上に無限に近く、また平等に得られる太陽の光、また風などの「再生可能な自然エネルギー」です。
この自然エネルギーこそが、世界の生活の質を高め、経済の見通しを安定させていくことができるエネルギー源なのです。

さらに、自然エネルギーを、これから広めていく上で欠かせない、もう一つの要素があります。
それは、「省エネルギー」です。

省エネとは、文字通り、エネルギーを可能な限り効率的に使い、不必要なエネルギーを使わないようにしていくということ。何より、私たちが必要としているのはエネルギーそのものではなく、エネルギーによって得られる利便性です。

ですから、最少のエネルギーから最大の利便性を得られるように工夫することが大切なのです。ここには、消費電力の最も小さい製品を選び、冷暖房等に要するエネルギーが最少となるような建築物を設計する、といった行動も含まれます。

世界の人口は2050年に90億人以上に増加すると予測され、何も手を打たなければエネルギーの需要は倍増する恐れがあります。

せっかく再生可能な自然エネルギーの導入を進めても、エネルギーの浪費を続けていては、エネルギー不足は解消されません。

これを補うのが「省エネ」というわけです。
利便性を得るために必要なエネルギーの量を減らすことによって、より多くの人に行き渡らせることができるのです。

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バイオガスを使った調理器具。ネパールのチトワン国立公園の周辺にあるこの村では、かつては全戸が調理に薪を使っていたが、WWFの支援で今では 9割近い家にこのバイオガスの設備が導入された。

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村に設置された、家畜の排泄物などからバイオガス(メタンガス)をつくる堆肥の攪拌機。子どもでも操作できる。このバイオガスは、地域が必要とするエネルギーを自給できるメリットがある。こうした取り組みは、持続可能な社会作りの一つの ステップとなり、森林環境の保全にも貢献する。

人々の協力が未来をつくる

これからのエネルギーを考える上で、必要な考え方があります。
それは、「本当に必要な量のエネルギーだけを使う社会」へと移行していくことです。

日常生活の中で、一人ひとりがエネルギーを浪費する行動を改めていくこともそうですし、地域や国のレベルでもそれは進めてゆくべきことです。

途上国においては、旧来型のバイオエネルギーの利用を徐々に廃止し、代わりに健康被害を起こさない新しい調理器具(たとえばソーラークッカー)や、小型の堆肥装置などを普及していく必要があるでしょう。

また、電力網が整備されていない地域でも、独立型の太陽光パネルや水車、個人用風力発電などの、地域で独立した小規模な発電ができるシステムを構築していくことが可能です。

そして、これらを実現するためには、人々の協力が欠かせません。

途上国での取り組みを実現するには、先進国の資金的、技術的な援助が欠かせませんし、世界の国々は一緒になって、そのための仕組みやルールを作るべきです。

これは日本国内でも当てはまることで、一般の生活者が省エネを心がける場合でも、省エネの製品や住宅を供給してくれる、技術者やメーカーの協力が必要になります。そして、行政の人たちは、そうした取り組みを社会的に支えられるような補助金等の制度を作り、実施していく必要があります。

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モロッコの砂漠での太陽光発電の取り組み。資源に乏しい地域でも、太陽光を利用すれば、生活に必要なエネルギーを生み出すことができる。

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モザンビーク、バザルト国立公園にて。村の女性たちのために導入された、太陽熱を使う調理器具(ソーラークッカー)。

省エネの徹底再生可能な自然エネルギーの大幅な普及拡大

この組み合わせこそが、2050年に90億人以上に増えると予測される、地球上全ての人々に、安全かつ信頼できるクリーンなエネルギーを供給する決め手に他なりません。

次回からは、その実現の可能性と課題について、考えてゆきたいと思います。

 

 
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変化するエネルギー需要

WWFのエネルギー・レポート
『The Energy Report - 100% Renewable Energy By 2050(エネルギー・レポート~2050年までに再生可能エネルギー100%)』では、最も効率の高い技術を普及させるなど、徹底的に省エネを追求することにより、2050年の世界のエネルギー需要は2005年よりも15%減少すると予想しています。

ただし、私たちの活動量を抑制したり、生活様式を急激に変化させたりすることは想定していません。
特に途上国においては、生産量やエネルギー使用量、人や貨物の輸送量はこれからも増えていくことを想定しています。その上で、エネルギー・アクセスを確保していくのです。

 

Reference

  1. IEA, World Energy Outlook (WEO) 2010, Paris
  2. IEA, World Energy Outlook (WEO) 2010, Paris
  3. http://www.iaea.org/Publications/Magazines/Bulletin/Bull442/44204002429.pdf

関連情報

【シリーズ】新しいエネルギーを考える

WWFのエネルギー・レポートについて

世界で利用されているさまざまなエネルギーを「100%!」再生可能なエネルギーで供給する。「そんなこと、出来るわけがない」と思われるかもしれませ ん。WWFは2011年2月3日、エネルギーに関する新しい報告書『The Energy Report - 100% Renewable Energy By 2050』を発表し、「再生可能エネルギー100%」の実現が経済的、技術的に可能であることを示しました。
レポート全文のダウンロード

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