【インタビュー】枝廣淳子さん「自然エネルギーに転換することで、日本の社会と日本の人たちが今よりも幸せになってほしい」


【連続インタビュー】私とエネルギー 第2回: 枝廣淳子さん

WWF ジャパンでは現在、原発に頼らず、自然エネルギーによる未来づくりをめざした「自然エネルギー100%キャンペーン」を展開しています。この一環として、 さまざまな分野で活躍している方々に、日本のエネルギー問題についてのお考えやご意見をうかがうインタビューを行なっています。第2回は、環境ジャーナリストの枝廣淳子さんです。

プロフィール

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東京大学大学院教育心理学専攻修士課程修了。企業のCSR活 動などを支援する有限会社イーズ代表。アル・ゴア氏著『不都合な真実』の翻訳など、環境に関する多数の執筆・翻訳を手掛ける。2011年1月には経済成長を前提 としない幸せのあり方を模索する「幸せ経済社会研究所」を設立。福田・麻生政権では「地球温暖化問題に関する懇談会」メンバー、今後のエ ネルギー政策を審議するため2011年6月 に設置された「総合資源エネルギー調査会基本問題委員会」委員を務める。


温暖化防止は目的ではない

― 枝廣さんといえば、日本でも大きな話題となったアル・ゴア氏の『不都合な真実』の翻訳者として、お名前を知っているという人も多いのではないでしょうか。

『不都合な真実』にかかわったことで、ここ何年かは温暖化関連の活動が多かったですね。ただ、私はずっと温暖化とエネルギーの問題は表裏一体だなと思っていました。ただ、世の中的には、温暖化の問題と、エネルギーの問題は、別のように扱われていますよね。「3.11」の後は、少し変わってきましたけれど。

  • ※注:「3.11」=2011年3月11日に起きた東日本大震災と津波、それに伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故のことを指す。以下、同じ。

今までは、温暖化をテーマに講演をしながら、実はエネルギーの話をしてきたのですが、最近ではエネルギーというテーマで話をして欲しいと依頼される機会も増えました。私としては、やっていることは同じです。世の中に通じる言葉が、前は温暖化だったけれど、今はエネルギーの方が通じるのかな、という感じですね。

温暖化は、すごく大きな問題ですが、私は、温暖化は「問題」ではないという言い方を、以前からしてきました。温暖化は症状の一つにすぎない。根本的な問題は、地球は一個しかないのに、それを超える暮らしを私たちがしていること、なんですね。だから、低炭素社会というのも、必要条件の一つですが、最終的な目的ではないと思うんですね。

― 地球のキャパシティを超えない、持続可能な暮らしこそを目的とすべきだ、ということですね。

そうです。「温暖化対策も、原発の問題も、両方を解決していくやり方はないのですか?」ということだと思うんですよね。それも夢のような技術に期待するのではなくて、もう少し現実を見つめる中で考える必要があると思います。

私たちが今、使っているエネルギーは、大きく3種類に分けられます。一つは化石エネルギー、もう一つは原子力、もう一つは自然エネルギー。原子力は、環 境、CO2という点では化石エネルギーに比べるといいかもしれませんが、他のもっと長期的な害悪を持っているので、原子力はこれからの選択肢ではないと思 います。

化石エネルギーはCO2をたくさん出すので、将来的にはそれを最大限、減らさなければならない。最終的には、自然エネルギーしかないと思っています。た だ、2020年までに100パーセント自然エネルギーにできるかというと、それは現実的ではないと思いますから、最大限がんばった時の現実的なロードマッ プをひいていくしかないと思います。、そういう意味では、この10年、20年は火力発電に頼らざるをえないところもあると思いますね。

もちろんその前に、エネルギー消費の総量を減らすというのが一番大事です。火力をできるだけ天然ガスにシフトしたり、石炭はガス化して、天然ガスと同じよ うにCO2を減らしたりしながら、短期的には化石燃料を上手に使って、自然エネルギーへのシフトを最大限に急ぐということが必要だと思いますね。

消費者・生活者の立場でできること

― 日本のエネルギーが岐路にさしかかっている中で、消費者、生活者の立場で参加できる部分というのは、どのあたりにあると思われますか?

ごく普通の生活者にとって、エネルギーの問題は、これまであまり身近ではありませんでした。電気代を払う限り、コンセントから電気はくるものだと思っていました。それがゆえに、生活者にエネルギー問題の大切さを訴えるのはすごく難しかったですね。でもそれを大きく変えたのが、「3.11」だと思います。

私たちの「幸せ経済社会研究所」でも2回にわたって1000人規模の調査を行いましたが、75%の回答者が「3.11」を機会にエネルギーについて考えるようになったとか、エネルギーに対する考え方を変えたと言っているんですよね。これまではコンセントの先は考えたことはなかったけれど、コンセントの先には“福島”があり、リスクや危険があるということを多くの人が認識したのだと思います。

皆さんにお勧めしたいのは、やはり最初はまず「知ること」です。たとえば今、エネルギーがどういうふうに作られているかとか、自分の家でどれくらい、どこにエネルギーを使っているか、を考えてみましょう。

次は、自分のできる範囲で「変えていくこと」。一番簡単なのは省エネです。いらないエネルギーは使わない。どうしても自動車を使わないといけない地域では、たとえば買い物をまとめてすることでスーパーに行く回数を減らすなど、いろんなことができます。自分にできることをやって減らしていくということが大事ですね。

3番目が、自分の生活を変えるだけではなくて、「社会の仕組みを変えることに協力する」ということ。それは、たとえば、私たちは非常に有力な投票権を持っているわけです。エネルギー政策を聞いたうえで政治家を選ぶこともできるし、毎日の買い物だって、企業に対する投票ですよね。どの企業の、どういったものを買うかというのが、お金を通しての投票になります。

自然エネルギーを大幅に取り入れている企業の製品を優先して買うとか、政治家にエネルギー政策について意見を聞いてみるとか、あとは周りの人と話すことですね。「井戸端エネルギー会議」と私は言っているんですが、そうやって話していくと、関心を持つ人も増えてきます。

― せっかく関心が高まっているので、行動の変化にもつなげていきたいですよね。

一番大事なのは、勉強するだけという受身のスタンスから、いかに自分で発言するようになるか、ですよね。ただ、そのハードルが一番高くて。それを越えるには、私は、自分で話す機会を持つことだと思っています。なので「3.11」の後、関心をもった人がお互いに話ができるように、ウェブサイトに「エネルギー井戸端会議をしよう」というフォーマットを作ったり、実際に場を作ったりしています。

おもしろいことに、話すと、自分の思いや疑問をますます確信するようになるんですよね。受身で聞いているだけとは違うんです。ただ、自分の意見を言えるようにするには、安全な場を作ってあげることが必要です。そこで何か言われてヘコんじゃうと、話すこと自体がイヤになっちゃいますからね。

対話力を鍛えるための勉強会や対話の理論を学ぶための読書会を行い、エネルギーに限らないのですが、どうやって安全に自分たちで考えていける場を作るかを勉強しつつ、あちこちで実践しています。

2050年のエネルギーの理想と現実

― 枝廣さんの理想として、2050年の日本のエネルギーは、どのようになっていてほしいと思われますか?

理想としては まず、エネルギー消費量が今に比べてかなり減っている。省エネ製品が普及しているだけではなく、経済成長至上主義もだいぶ終わりに近づいていて、たくさん作って、たくさん売ってということをしなくてもよくなっていること。

原子力エネルギーは使わず、化石エネルギーもできるだけ使わず、ほとんどが再生可能エネルギーになっている。しかもそれは、メガソーラーも産業用にはいいですが、特に民生用のエネルギーは、それぞれの地域にある自然エネルギー資源を使うかたちで、地産地消型になっているといいですね。

放射能の危険もなく、CO2もほとんど出さない、地産地消型のエネルギーなので地域の雇用と経済が戻ってきます。人々の繋がりがあって、昔、味噌や醤油を貸し借りしたように、電気の貸し借りができる時代が来るといいなと思っています。

うちはアパートだけど、隣の一軒家のおじいちゃん、おばあちゃんのところは太陽光発電をやっていて、そのお家はそんなに使っていないから、ちょっと分けてほしいなとか。今、それは電気事業法でできませんが、それは仕組みを変えればいい話です。もしかしたら2050年には「お金持ち」ではなくて「電気持ち」のほうがいいかも、ということもあるかもしれませんね(笑)。

エネルギーだけの話ではなく、エネルギーの消費量を減らし、自然エネルギーに転換することで、日本の社会と日本の人たちが今よりも幸せになっているというのが私の描く2050年の“ありたい姿”ですね。

― では、今度は現実の話として、理想の姿にどのくらいまで近づけそうだと思われますか?

このまま放っておいても、今、私が描いた姿にはなりません。ただ、30年前は、日本のエネルギー消費量は、今の半分くらいでした。30年でそれだけ大きく変えられるということは、2050年まで40年ありますから、半分に減らすことだってできるのではないかと思います。

つまり、「減らせない」というのが動かぬ事実というわけではないのです。経済界の人は「増やすのは簡単だけれども減らすのは大変だ」と言うと思いますが、それはその減らす上手なやり方を見つけていないだけではないでしょうか。

また、原発もなく化石エネルギーも少ない社会をめざすとなると、原発や化石燃料に関わる産業界の人たちからは、強い抵抗が出てくるでしょう。時代が変わる時というのは、そういうものなので、抵抗されてもびっくりせずに、それにどう対処するかが重要だと思いますね。

現在石油・石炭や原発のお仕事に携わっている方々も、その人たちがその業界の仕事に就かれた時には、自分がやっていることが世の中から「いらない」と言われる時代が来るとは思わずに就職されたことでしょう。そういった人たちが次の仕事に就けるような道筋をお手伝いすることは必要だと思います。

ですが、「今のまま続けさせてもらわないと、自分たちの職がなくなるから」というのは、言い訳にすぎないので、それは必要な手立てやサポートをしながら、転換を図っていくことが大事なのではないでしょうか。

既成概念に囚われない発想を

― 社会や政治の仕組みを変えるには、どのあたりから斬り込んでいったらよいのでしょうか。

日本には技術もあるし、みんなの気持ちもあるけれど、いろいろと法律や規制が厳しくて、それが足を引っ張っているということが多いのですね。なのでたとえば特区のようなかたちでそれを一回外して、何ができるかやってみて、それがうまくいったら、全国で通用するようにしていくとか、そういうことができたらいいですね。

大事なことは、私たち市民にしても産業界の人たちにしても、なりたい姿に向けて、「今のままだとやりにくい」とか、「これがこうなっているからできない」とか、それを見つけて声を出していくことです。

制度や法律というのは、できるまでに時間がかかるので、できた時にはもう時代は先に行っていることが多いんですよ。常にそういうものだと思うのです。なので、後からどんどんそれを作り変えていっていいんだ、それが普通なんだ、という考えに、社会全体がなっていかないといけないですよね。政府も市民や産業界をいじめたくて、がんじがらめの規則を作っているわけではないはずですから(笑)。

私たち市民も、「これまではこうだったから」ということに縛られる必要は全然ない。時代も変わっているし、状況もどんどん変わっています。「これまではそうだったかもしれないけど、これからはこのほうがいいよね」という発想で、自分の周りとか社会を見回していただくと、いろいろなヒントやきっかけが見つかると思います。

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