映像&トークショー「エネルギー、温暖化、そしてグリーン経済」を開催


暦ではすでに秋なのに厳しい残暑が続き、いやが上にも地球温暖化の影響を感じてしまう9月。年々進行する温暖化とグリーン経済をテーマにしたトークショーが、東京・新宿の紀伊國屋サザンシアターにておこなわれました。お話ししたのは、経済評論家の末吉竹二郎さん(WWFジャパン評議員)、環境ジャーナリストの井田徹治さん(同じくWWFジャパン評議員)、そしてWWFジャパン気候変動・エネルギーグループリーダーの小西雅子。それぞれ異なる立場で、温暖化という人類共通の課題に長年、最前線で取り組んできた「三銃士」です。

地球温暖化、種の絶滅、グリーン金融

第一部は、3人が各々の視点から地球の現状に警鐘を鳴らしました。

WWFジャパン気候変動・エネルギーグループリーダーの小西雅子は、過去100年で急速に深刻化した温暖化について、「今のような生活を続けると、今世紀末には気温が4℃上がる」と話し、海面上昇により住む土地を失った人々や熱中症を病む日本人のケースを、写真やデータを交えて発表しました。

温暖化の影響というと、海抜の低い途上国での話と思いがちですが、先進国であるドイツや日本にもすでに影響が出ていることに焦りをおぼえた人もいたのではないでしょうか。

また、温暖化防止の国際会議を飛び回る立場から、各国の思惑が絡み合う交渉の様子、そして温暖化対策に消極的な日本政府の姿勢を紹介し、少しでも温暖化の進行を遅らせるためには、省エネと自然エネルギーの推進が肝心だと話しました。

続いては環境ジャーナリストの井田徹治さんが、自身が撮影した希少な動物や植物の写真を交えながら、急速に進む「種の絶滅」について発表。

世界各地で多くの生物が絶滅の危機に瀕しているが、その多くは資源をとるための自然破壊によるものであり、世界最大級の輸入国である日本の影響も大きいと話しました。

さらに対策として、再生可能エネルギーやエコツーリズム、MSCやFSCなどのエコラベルを例に挙げ、環境と両立する経済「グリーン経済」に向けての取り組みを紹介しました。

「地球環境問題は生活習慣病に似ている。気づかないうちに進行し、やがて命を脅かす存在になる。だから生活習慣、つまり、わたしたちの消費のあり方を変えよう」という言葉のとおり、環境問題を自分の消費と結びつけて考えることが、わたしたちの地球に対する責任といえるでしょう。

最後に登場した経済評論家の末吉竹二郎さんは、環境問題と「お金」の関係を解説。
「温暖化や種の絶滅などの環境問題は、これまでわたしたちの生活を豊かにしてくれた経済成長の結果であり、経済の仕組みを変えないと解決できない」と話しました。

そして世界の動きとして、英国でグリーン産業を育てるためにまもなく設立される「グリーン投資銀行」や、2011年11月に日本で公表された「持続可能な社会の形成に向けた金融行動原則」を挙げ、社会のお金を動かしている金融機関において環境に対する関心と責任が高まっていることを紹介。

「お金はとても大事なもの。使い方を間違えれば、みんなが迷惑する。でも上手に使えば世の中が変わる。だからみなさんがお金をどう使うか、金融機関にどう使わせるかを、環境問題と結びつけて考えてほしい」と語りかけました。

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WWFジャパン気候変動・エネルギーグループリーダーの小西雅子

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環境ジャーナリストの井田徹治さん

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経済評論家の末吉竹二郎さん

日本が歩むべき道とは?

第二部の三者対談では、日本における環境問題や社会的責任に対する意識のレベルが熱く語られました。

井田さんの「世界の国々がCO2の排出制限目標を引き上げようとしているのに、日本政府は引き下げようとしている。このように世界と日本のあいだに大きなギャップがあると感じるが、どうか?」という質問に、小西は「たしかに、国際会議での危機感が日本では感じられない。日本では温暖化の影響を感じにくいこともあり、今は原発の問題にのみクローズアップされている。でも急な解決を要する問題も、のちに多大な影響が予測される温暖化問題も、同時に解決策を考えていかないといけない」と、実感を交えながら答えました。

また末吉さんは、「日本は国際的な問題に関する議論に最初から関わろうとせず、他の国々が交渉していよいよ決定するというときにローカルな事情を持ち出す。これが日本の参加方法。こんなことで世界と一緒に議論できるのか」と日本政府の姿勢を批判しました。

そして井田さんは、2011年末の国連気候変動ダーバン会議での、空席だらけだった日本政府の記者会見場の写真を見せながら「国際的な場面において日本の存在感が希薄になっていることを感じる」と話し、小西も「日本が京都議定書の第2約束期間に目標を持たないことを宣言して以来、WWFネットワーク内でも日本の影響力が小さくなってしまった」と同調しました。

日本はCO2の排出量が世界で5番目に多い国であるにも関わらず、温暖化に対する自覚も危機感も薄く、国際的な舞台で発言力を持てなくなっています。

その原因として末吉さんは「世界の問題を自分の問題として考える力が弱い」ことを挙げます。

日本は単独で存在しているわけではなく、世界とつながっています。世界中で環境問題が深刻化しているなか、日本だけ知らないふりをして平和で安全な日常生活を続けることはできませんし、明るい未来を子孫に約束することもできません。

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ディスカッションと講演後のサイン会の様子

このような世界的な問題に対してこそ、「日本が持っている高い経済力、金融力、技術力、そして自然の美しさを感じる心をもって解決にのぞむことが、今後の国際社会で日本の地位を押し上げるパワーになるはずだ」と末吉さんは話します。

そして、そのパワーの源となるのが市民であるということが、今回、3人がもっとも強調した点でした。わたしたち市民が正しい知識をもって行動に移せば、企業や政府など大きな機関の考えを変えさせ、問題解決への道に導くことができます。

それは何も専門家でなければできないことではありません。
「三銃士」がそれぞれの立場から温暖化防止に取り組んでいるように、一人ひとりが自分にできる範囲から行動を始めること。それこそが、いま瀕している危機から世界を救う、ただ一つの方法なのではないでしょうか。

  • ※今回のセミナーには、166人のお客様にお越しいただきました。共催してくださった紀伊國屋書店、およびご協力いただいた岩波書店、福音館書店、筑摩書房、毎日新聞社のみなさんに、この場を借りてお礼申し上げます。
     
  • ※世界の環境問題やグリーン経済の事情をもっと知りたい方は、「三銃士」の著書をぜひお読みください。

●井田徹治、末吉竹二郎共著『グリーン経済最前線』(岩波新書)
●小西雅子編著『地球温暖化の目撃者』(毎日新聞社)

開催概要: 紀伊國屋サザンセミナー エネルギー、温暖化、そしてグリーン経済

日時 2012年9月11日(火)19:00~20:30
会場 紀伊國屋サザンシアター
東京都渋谷区千駄ヶ谷5丁目24−2
共催 WWFジャパン、紀伊國屋書店
協力 岩波書店、福音館書店、筑摩書房、毎日新聞社

 

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