セミナー「生物多様性を守るために~知られざる法律の真実」報告


2010年1月14日、東京有楽町にある「丸の内さえずり館」で、WWFセミナー「生物多様性を守るために~知られざる法律の真実」を開催しました。同館で開催している展示「WWFジャパン 私たちの暮らしと生きもののつながり」での、第1回目のセミナーです。今回は、WWFジャパンが生物多様性を守る取組の一つとして取り組んでいる、自然保護に関連した政策に携わる担当者が、日本の環境行政と法制度についてお話しました。

生物多様性基本法と市民参加

今回、スピーカーとしてお話ししたのは、野生生物の保護や生息地の保全に関連した、政策や法制度の改善を求め、議員や行政に働きかけるロビー活動に取り組んでいる、WWFジャパンの草刈秀紀。
草刈はまず、長年自然保護活動に携わってきた、自身のプロフィールを披露した後、参加者の皆さんに日本の環境政策や、自然保護のための法律を改善するよう、議員や政府に働きかける「活動質問用紙」にご記入いただき、それに答えていくという形式で、セミナーを進めました。

WWFで働く以前に、ニホンカモシカの食害問題調査などに関わり、WWFの職員となってからも、南西諸島や南太平洋の事業といった、現場での活動に従事してきたWWFジャパンの草刈は、最近その経験を踏まえて、他の市民団体のメンバーとも協力しながら「生物多様性基本法」の成立に力を尽くしました。

2008年に成立した、この「生物多様性基本法」は、市民団体が議員立法を目指して立案した「野生生物保護基本法(案)」が元になっています。つまり、原案を市民が自ら作った法律、ということ。

この案を、2010年10月、生物多様性条約の第10回締約国会議が日本の名古屋で開かれることに決まったことを受け、国会議員が「議員立法」という形で国会に提案し、正式に立法化した、画期的な法律でした。

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世界と交わした約束を守るために

生物多様性基本法には、日本が「生物多様性条約」の締約国として、国際的に交わしたことになる約束を果たす上で必要とされる、大きな役割を担っています。

条約の締約国は、それぞれの国の環境行政の指針として、「生物多様性国家戦略」を策定することを義務付けられています。日本でもこの戦略は策定されてきましたが、日本ではこれが法的な義務を伴うものになっておらず、ただ名目上の指針になっていただけでした。

しかし、新たに成立した「生物多様性基本法」には、この「戦略」を法的に守り、実行する法律としての役割が与えられたのです。
これは同時に、従来日本で施行されてきた、「鳥獣保護法」や「種の保存法」といった、自然や野生生物の保護に関する、個別の法律がカバーできる課題や限界を超えて、包括的な日本の自然保護を実現する可能性をもたらすものでもあります。

その意義を説明する中で、草刈は参加者に対し、次のように述べました。
「生物多様性基本法が、国会に提案され成立する過程では、市民団体の立場から欠かせない項目を要求しました。その一つが、「市民参加」の条項です。ここには、生物の多様性を守る上で、市民や市民団体の参画が、法的に保障されていることが書かれています」。

そして、世界に対して交わした約束を日本が果たす、そのために必要なことの一つに、「一般市民の参加」がある、ということを、重ねて訴えました。
「政府や行政に意見を述べる、有権者の意思を表明するのは市民の権利ですから、ぜひ積極的に意見を発信して欲しいと思います」。

なお、今回のセミナーには、42人の一般の方にご参加をいただきました。
たくさんのご質問もいただき、関心の高さがうかがわれる内容となりました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。

参加者の皆さんからの質問の一部をご紹介します

Q1.ロビー活動で政治家に意見を聞いてもらうには?
A1.政治家との信頼関係を築くよう努力することと、伝えたいポイントをA4にまとめることです。

Q2.海外で生物の多様性を守る法律はありますか?
A2.あります。ベトナム、オーストラリア、EUなど。ヨーロッパにはオーフツ条約という、情報公開、市民参加、司法へのアクセスを保証する条約に批准している国が多いため、進んでいるようです。

Q3.多くのお金をかけて、なぜ絶滅危惧種を守らねばならないのかと聞かれたら、どう答えますか?
A3.絶滅の危機に瀕する種を含めて、多様な種が網目のように関わりあい、多様な生態系が成立して、地球上での生命の営みが続いています。その恩恵を人間も受けています。種が絶滅すると言うことは、このバランスが崩れるということです。
例えば、400万個の部品でできているジャンボジェットが、飛行中に1つの部品でも欠けたりすると、墜落してしまうでしょう。生物の多様性は、それと似ています。人間が生きるためにも、種の絶滅を防ぐ必要があるのです。

Q4.行政、企業、NGOとのどんな関係を目指すのですか?
A4.対等な関係です。行政、企業、地域の市民団体が対等な関係で連携すれば、問題解決は大きく進むと思います。現在はほとんどの人が企業に関わっています。企業が変われば、日本も変わると考えます。

 

関連情報

生物多様性基本法についてはこちら

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