報告書:地域での実践活動から学ぶ「地域主体の生物多様性保全」
2016/09/17
地域社会による持続可能な自然資源の利用を通じた環境の保全。その実践に向けた取り組みが、世界中のさまざまな場所で行なわれ始めています。WWFジャパンも、長年のフィールドである沖縄の石垣島・白保で、サンゴ礁を保全する取り組みの一環として、地域の方々と共に「地域主体の生物多様性保全」を推進してきました。プロジェクトの経緯と成果をまとめた報告書をご案内いたします。
生物多様性の保全を地域社会と共にどう進めるのか
近年、生物多様性の保全が世界的な課題となっています。
国際的な枠組みが整備されるとともに、国による法整備、民間による環境負荷を軽減するための経済的な手法の開発などさまざまな対応が進められています。
しかし、その一方で自然地域での環境負荷の軽減や保全活動など、そこに暮らす人々と自然との関係の再構築が求められています。
こうした「地域主体の生物多様性保全」への取り組みへの要請に応えるため、WWFジャパンサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」では、石垣島白保地区の皆さまとの協働によるサンゴ礁の保全と持続可能な地域づくりを実践。
今回、その経験をまとめた、報告書『石垣島白保地区でのサンゴ礁保全に資する持続可能な地域づくりプロジェクト−地域コミュニティとの連携・協働の記録−』を取りまとめました。
地域に寄り添い、内発的な保全活動を支援するノウハウ
WWFはこれまで、南西諸島を生物多様性優先保全地域と定めて、長年にわたるさまざまな保全活動を展開してきました。
中でも石垣島白保地区では、2000年にサンゴ礁保護研究センターを開設して以来、全国のサポーター、ボランティア、研究者と沖縄県、石垣市などの行政機関、そして地域の皆さんとの協働、連携を進めてきました。
特に、2004年からは南西諸島の生物多様性保全のモデルとなる地域主体の保全の仕組みを構築するために「白保持続可能な地域づくりプロジェクト」を開始しています。
地域の自然環境の保全と活用の主体は地域コミュニティであり、WWFは中間支援組織としてその活動を支援するという考えに基づき、地域の皆さんと一緒に各種の活動を立ち上げてきました。
本報告書は、多様な職業や多様な価値観を持つ地域の人々の連携・協働を生み出した具体的な活動を詳述するとともに、地域特性や自然資源の異なる地域においても参考となるよう、環境保全型地域づくりのマネジメントを行なう際に配慮すべき事項や気を付けた点などについて詳しく解説し、活動が深化するプロセスを一般化して、時系列に分かりやすくまとめています。
すでに、地域での実践を始めている皆さんやこれから地域での生物多様性の保全に取り組もうと考えている皆さまにご参考にしていただければ幸いです。