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APP(エイピーピー)社「森林保護方針」から6年 NGOは深刻な懸念を表明

この記事のポイント
2019年3月、WWFを含むインドネシア国内外の15のNGOは共同で、製紙メーカーAPP(エイピーピー)社に関する声明を発表しました。主にインドネシアにて1980年代から自然の熱帯林を大規模に破壊し、植林地へ変えることによって製紙原料を調達してきたAPP社。自然環境を損なうだけでなく、地域社会にも大きな影響を与えたその操業と、それを覆い隠すような情報発信を続ける同社の姿勢は、多くのNGOから強い批判にさらされてきました。この共同声明のなかでNGOは、同社製品の購入および投資を避けるよう呼びかけています。

大規模な自然林破壊に関与

主にインドネシアのスマトラ島とカリマンタン(ボルネオ島インドネシア領)で過去30年以上にわたり、熱帯林を製紙原料調達と製紙原料となるアカシアやユーカリなどを植える植林地とするために開発してきたシナル・マス・グループのアジア・パルプ・アンド・ペーパー社(SMG/APP社)とそのサプライヤー。WWFインドネシアによれば、同社の操業のために破壊された自然の熱帯林は200万ヘクタールを超えるとされます。これは東京都の面積の約10倍に及ぶ広さで、その操業が周囲の環境や社会、そして地球温暖化(気候変動)問題に及ぼしてきた影響は計り知れません。

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APP社製紙工場

2013年、APP社は「森林保護方針」を発表し、自然林破壊の停止とこの方針に違反するサプライヤーとの取引停止を宣言。翌年の2014年には100万ヘクタールの森林生態系を再生する支援を行なうことも表明しました。WWFはこれらの発表を歓迎しつつも、確実な実施こそが重要あり、完全に独立した第三者の評価によって十分な進捗が確認されるまでは、同社が本当の意味で改善の道をたどっているかは確認できないとの姿勢を保ってきました。

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インドネシアの自然の熱帯林

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自然の森(奥)と植林地(手前)。単一の樹種のみの大規模植林は自然の森の環境と大きく異なる。

FSCとの関係

こうした問題のある行為に関わる企業への対応は、国際的な森林認証制度「FSC®(Forest Stewardship Council®、森林管理協議会)」においても明らかです。2007年、FSCは「組織とFSCとの関係に関する指針」を適用し、APP社と関連企業との関係を絶つことを発表し、これにより一切のFSC認証取得ができない状態が今も続いています。

この指針は、管理する森林の一部の区画や工場では認証基準を満たしていても、その事業者全体の操業では、違法伐採や人権の侵害といったFSCの定める「許容できない活動」に関与がある場合、部分的に基準を満たしている森林区画や工場も含めて一切の認証取得を許可しない、あるいは取り消す制度です。

APP社は、「森林保護方針」を発表した2013年頃から断絶状態の修復をFSCに求めてきました。そして2017年、FSCはAPP社の要請に応じ、断絶関係の修復のために同社が何をすべきかをまとめるロードマップを検討するため、NGOや企業からなるワーキング・グループを設置。WWFインドネシアもこのワーキング・グループに参加してきました。

ところが2018年8月、FSCはこのプロセスを停止すると発表。
「APP社の企業構造と同社に関係すると考えられる企業による、許容できない森林管理に関する申し立てについて、APP社が追加情報を提供する」のを待つとしました。

この決定は、SMG/APP社が、自然林破壊に継続的に関与していたこと、修復する必要のある環境的・社会的影響の全容を隠蔽するため、全関係会社についての情報を公開するという責任を果たしていない可能性が、WWFを含むNGOの報告で明らかになったことを受けたものでした。

「森林保護方針」から6年、進捗は

そして「森林保護方針」から6年が経過した2019年3月、WWFインドネシアは、活動をともにする国内外の14のNGOとともに、過去の大規模な自然林破壊がもたらした環境・社会への負の影響を修復する取り組みに進捗がないことに対し、強い懸念を表明。そのなかで「企業と投資家に対し、FSCとの断絶関係修復のためのロードマップにある要求事項について、大きな進捗を遂げたことが、真に独立した第三者による定期的検証により証明されるまで、SMG/APP社及びその関係会社との取引をしないよう勧告する」と述べています。

共同声明で示された懸念の主な内容

(1)インドネシアとインドでのパルプ工場の新規建設により植林木供給が不足し、APP社が自然林伐採に関与する可能性が懸念される。過去12か月だけで、同社はマレーシア、ベトナム、タイを含む30以上の新しい木材供給者をサプライヤーに追加し、その中にはカリマンタン島やサラワクの植林事業者も含まれる。APP社には、サプライヤーが「森林保護方針」を遵守しているかどうかを検証するための確固たるシステムがない。

(2)2018年5 月、グリーンピースはAPP社と関係のある企業が、本方針発表後も約8,000ヘクタールの森林と泥炭地を伐採したという理由で関係を解消した。この他にもAPP社との関係が疑われる企業による自然林破壊と泥炭湿地での火災が報告されている。

(3)数百件に及ぶ社会紛争は、APP社による発表では46%が解決済みとのことだが、コミュニティ名やその解決へのプロセスなどの具体的な情報は未発表である。これはインドネシア現地のNGOによる「数件のみが解決済み」との報告とは大きく異なる。

(4)「森林保護方針」の翌年に発表した100万ヘクタールの森林再生目標について、具体的な計画や場所が開示されたのは約7,000ヘクタールにとどまる。

(5)2018年8月、FSCは断絶関係を修復するためのロードマップ作成を停止した。この決定は、SMG/APP社が、自然林破壊への継続的な関与と、修復する必要のある環境的・社会的影響の全容を隠蔽するために、FSCが求める情報を提出しなかった末に行なわれたものである。

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泥炭湿地からの排水の様子

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