COP10で黄海エコリージョンのイベントを実施
2010/10/20
生物多様性条約第10回締約国会議(CBD・COP10)の本会議場近くで、WWFは「黄海エコリージョン」の取り組みを紹介する、イベントを開催しました。このプロジェクトは、WWFジャパンとWWF中国が共同で実施している、東アジアを代表する海洋生態系の保全を目指した取り組みです。
WWFジャパンとWWF中国の共催
2010年10月20日に行なわれたこのイベントは、生物多様性交流フェアの会場に設置されたWWFのブースで開催されました。
生物多様性交流フェアは、COP10が開催されている名古屋国際会議場に隣接した場所で、一般向けに行なわれ、連日各国から集った会議の参加者や、家族連れなどの方々が多数来場しています。
WWFブースでも、連日さまざまなテーマで、多数のイベントを実施しています。
イベントは、WWFジャパンとWWF中国の共催によるもので、「黄海:中国沿岸の豊かな生物多様性(China's rich coastal biodiversity in the Yellow Sea, especially endangered species in Liaoning Province)」と題し、特に北部の遼寧省沿岸に生息する、希少や野生生物にスポットを当てています。
周海翔先生による生きものの話
この黄海エコリージョンは現在、WWFジャパンとWWF中国が、各分野の研究者に協力を仰ぎ、プロジェクトを行なっているフィールドで、沿岸地域が主体となった海洋環境保全の推進を目指しています。
今回のサイドイベントには、黄海沿岸でNGOの立場で鳥類の調査しておられる、瀋陽理工大学教授の周海翔(しゅう・かいしょう)先生をお招きし、黄海の沿岸地域に広がる豊かな干潟で暮らす生き物、特に水鳥についてお話をしていただきました。
周先生は、調査の中で撮影された膨大な量の水鳥の写真を示しながら、黄海の干潟の生態系の中で、どのように鳥たちが暮らしているのか、その生態や、渡り鳥の調査方法などを、詳しく紹介してくださいました。
周先生が、絶滅が心配される水鳥のクロツラヘラサギが、長い海中にクチバシを差し込んで、ぐるぐるかき回すように獲物を探すことから、現地では「海をかき回すものたち」というニックネームがつけられていること、また、ダイシャクシギがカニを取る時の格好など、鳥たちの特徴を、時には身振り手振りも交えながら、ユーモアいっぱいに解説してくださったおかげで、WWFブースにいらしたお客さまたちにも、とても喜んでいただくことができました。
黄海の今、そしてこれから
現在、黄海沿岸の各地では、ナマコなどの水産物を養殖するための池が盛んに作られており、自然の景観が徐々に失われつつあるといいます。
周先生は、水鳥たちのすむ環境には脅威が迫っていますが、国境を越えて、多くの市民の方々の力を合わせることで、中国も、そして日本の環境も、少しずつ良くなってくることでしょう、とお話を締め括られました。
黄海の自然環境、そして国境を越えて「渡り」をする鳥たちを守るためには、一つの国だけではなく、関係する国々が協力して活動しなくてはなりません。
周先生のお話のおかげで、参加者の皆さんは、楽しみながら理解を深めてくださったようです。
ちなみに今回のイベントでは、周先生が中国語で解説してくださったため、それをまずWWF中国のスタッフが英語に通訳し、それをWWFジャパンのスタッフが日本語に通訳する、という形で、お話を進めました。
会場にいらしたお客さまの中には中国の方も多く、質疑応答の一部は中国語で行われるなど、国際会議の会場らしい国際色豊かなセミナーとなりました。
黄海エコリージョンでの、国境を越えた生物多様性保全の取り組みが、世界に誇れる一つの事例になるように、WWFでは各国の協力のもと活動を継続してゆきます。
イベントの動画はこちら
こちらのイベントは、インターネット上で動画配信しています。