ネパールでトラの生息数が増加


WWFなどの調査により、ネパール国内に生息する野生のトラが2012年までの3年間で、増加傾向にあることがわかりました。トラは極東ロシアから東南アジアまで広く分布しているものの、世界全体の個体数を合わせても3200~4000頭しか残っていません。今も密猟や生息地の森の減少が続いていますが、一方で、保護活動の成果も出ています。2013年8月にネパールから発表された調査報告も、トラの個体数増加を示すものでした。

3年間で3倍以上に増えた地域も

調査を実施したのは、ネパールの国立公園・野生生物保護省、森林省、WWFネパール、National Trust for Nature Conservation(NTNC)です。

ネパールとインドの国境に沿って広がるテライ・アーク景観区の中の5つの保護区と3つのコリドー(保護区と保護区をつなぐ帯状の森)について実施されたものです。

インドとネパールは2013年1月、同じ手法を使って個体数調査を行なうことを決定。ネパールでは同年2月から6月にかけて3カ月間のフィールド調査を実施し、続く2カ月で分析を行ないました。

その結果、ネパールに生息するトラは、最少で163頭、最大で235頭との推定値が明らかになりました。

2009年に発表された推定値が100~194頭であったことと比べても、増加傾向であることがわかります。

調査地点の各地域ごとに状況を比べてみると、バルディア国立公園では17~29頭であったのが45~55頭と3倍以上に、スクラファンタ野生生物保護区では8~14頭であったのが13~21頭に増加。

最も多くのトラがすむチトワン国立公園では、71~147頭であったのが98~139頭という結果でした。

バルディア国立公園に設置した自動カメラに捉えられたトラの成獣

子どもを連れているトラの姿も確認された

野生動物にとって最適な環境をつくる

この調査について、WWFネパールは資金面での支援をおこなうとともに、関係者間の協議のまとめ役となって調査計画を立て、現場スタッフへの研修を実施しました。

より多くのトラの生息が確認されたのは、調査の精度が上がったことも一因となっています。

しかし、トラと、その獲物となる生きものの両方にとって最適な環境を作り出すために、保護と管理を徹底して行なったことの顕れだともいえます。

実際に、2012年の調査では、トラの獲物となる生きものの密度も高まっていることが判明しています。

また、ネパールとインドの間に設けられたカタ・コリドー(緑の回廊)を使って、ネパールのバルディア国立公園と、インドのカタルニアート野生生物保護区の間をトラが行き来していることも分かりました。

カタ・コリドーは、WWFが森林回復に注力してきた場所の一つで、長さ13km、面積は約82平方キロにおよびます。

ここでは2000年から、失われていた森林を取り戻すプロジェクトが実施されてきました。

調査の結果は、このカタ・コリドーが、トラをはじめ、さまざまな動物たちが行動圏を拡げる安全なルートになっているだけでなく、ネパールとインドの2つの個体群の間で、遺伝子交流にも役だっていることを示唆しています。

WWFネパール代表のアニール・マナンダーは、次のように語っています。

「この調査結果は、大きな希望をもたらすものです。このように明るい見通しを持てるようになったのも、地域社会やトラ保護活動の第一線に立つレンジャー(保護官)の地道な努力の賜に他なりません。

自動撮影装置を設置するWWFネパールの調査担当スタッフ

カタ・コリドーの森林回復のために苗木を育てる

テライ・アーク一帯に広がる森とハヌマンラングール

しかし、こうして増えた個体数も、密猟や、トラによる人や家畜への被害を抑えられなければ、すぐまた失われてしまいます。

だからこそ、トラの保護が国家レベルで優先され、草の根レベルでの適切な保護活動がそれを補完し、国際的な保全団体がそれを支援する状況が維持されることが必要です」。

世界のトラの個体数は、2010年の時点で、最も少ない見積もりで3200頭。

WWFは2022年の寅年までに、この数を2倍に増やすという目標に向けて、今後もトラの生息国への支援を続けていきます。

トラの生きる森 ヒマラヤの自然を守ろう!

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