【動画あり】温暖化の影響?グレートバリアリーフのアオウミガメ調査個体の9割がメス


世界屈指のサンゴ礁グレートバリアリーフで調査されたアオウミガメ411頭のうち、北部で生まれた個体の約9割がメスだったという結果が、2018年1月8日にアメリカの生物学誌「カレント・バイオロジー」で発表されました。これは外部の研究機関の協力のもと、WWFオーストラリアが取り組んできたサンゴ礁とウミガメの保全プロジェクトの一環で行なわれた調査によるものです。この結果は、地球温暖化の進行により、ウミガメの性別比がメスに偏るのではないか懸念が、現実となりつつある可能性を示すものといえます。

ウミガメに迫る「地球温暖化」という脅威

オーストラリア北東部に広がる、世界屈指のサンゴ礁「グレートバリアリーフ」。

その豊かな海には、1,400種類のサンゴと、1,625種類の魚類が生息しているとされ、その沿岸域は世界最大級のウミガメの産卵地としても知られています。

世界に7種が知られるウミガメ類は、現在6種が絶滅の危機にあるとされ、IUCN(国際自然保護連合)の「レッドリスト」にもその名が掲載されています。

主な脅威は、甲羅や食用にする卵や成体の肉を目的とした捕獲や、開発による産卵地、採食場の消失、さらに海洋汚染や海洋ゴミ等による環境の悪化、漁網に誤って絡まり命を落とす混獲など。

またこれらの問題に加え、近年は地球温暖化による影響も指摘されるようになりました。

ウミガメは卵が生み落とされた砂浜の温度により、オスかメスかの性別が決まります。

卵を取り巻く砂の温度がおおむね摂氏29度よりも低ければオスになりやすく、それよりも気温が高ければメスになりやすいとされています。

このことから、地球温暖化が進み気温が上昇すると、ウミガメの性別比がメスに偏るのではないか、という懸念が以前より指摘されていました。

ホウィック群島のウミガメ

調査された個体の内、北部生まれの約9割がメスに

その懸念を裏付けると考えらえる調査の結果が、2018年1月8日にアメリカの生物学誌「カレント・バイオロジー」で発表されました。

WWFオーストラリアが外部の研究機関と協力して取り組んだ、グレートバリアリーフでのウミガメ調査の結果、411頭のアオウミガメの個体のうち、南部で生まれた個体の約65~69%がメスであったのに対し、北部で生まれた個体は、幼体の99.1%、亜成体の99.8%、成体の86.8%がメスであったこと判明したのです。
グレートバリアリーフ周辺に生息するアオウミガメは、北部と南部それぞれで生まれた、遺伝子的に異なる2つの個体群が確認されています。

今回発表された調査では、その双方の個体群が採食場としている、ホウィック群島(Howick Group of Island)周辺の海上で計441頭を捕獲し、血液を採取して遺伝子情報と性別、出生地を分析。すぐに解放する方法でデータを収集しました。

その結果、北部の個体群については、性比がメスに大きく偏っていることが明らかになり、今後の繁殖への影響が懸念されることとなったのです。

調査地域の地図。
Michael P. Jensen, Camryn D. Allen, Tomoharu Eguchi, Ian P. Bell, Erin L. LaCasella, William A. Hilton, Christine A.M. Hof, Peter H. Dutton 著、 Current Biology Volume 28、154-159ページ「Environmental Warming and Feminization of One of the Largest Sea Turtle Populations in the World」図1より転載

心配されるウミガメの未来

ただし、この調査結果は、あくまで今回調査した411個体に関するものであり、年間に20万頭が生まれているとされる、この海域のアオウミガメの個体群全般の現状を知る上では、十分であるとは言えません。

とりわけ、沿岸から外洋まで、広い海域を移動して暮らすウミガメの生態については、そもそも解明されていないことが多く残されています。

調査と、論文の執筆にはWWFの海洋生物プロジェクトマネージャーであるクリスティーン・ホフも、科学調査員として参加しましたが、この論文中でも「孵化時の砂の温度とウミガメの性別比に関するデータや、気候変動によるウミガメへの影響規模に関するデータは、未だ不十分である」という点が言及されています。

ホウィック群島のサンゴ

しかし一方で、調査論文の主執筆者であるアメリカ海洋大気局(NOAA)のマイケル・ジェンセン氏は、グレートバリアリーフ北部のウミガメ産卵地で孵化するウミガメの性別比が、この20年程の間、極端にメスに偏っていると指摘しており、種の存続にとって深刻な脅威が及び始めている可能性は十分にあると考えられます。

また、ウミガメは孵化して海に戻ってから、産卵可能な状態になるまで20年前後を要することから、ジェンセン氏は、「現在のウミガメの性別比を把握することは、今から数年後、そして20年後の状況を予測する上で非常に重要だ」とコメントしました。

より効果的な保全活動を進めるためにも、今後の調査の継続とデータ収集が重要なカギとなります。

求められる早急な気候変動対策

北部の個体群の性別比。左が幼体、真ん中が亜成体、右が成体。
Michael P. Jensen, Camryn D. Allen, Tomoharu Eguchi, Ian P. Bell, Erin L. LaCasella, William A. Hilton, Christine A.M. Hof, Peter H. Dutton 著、 Current Biology Volume 28、154-159ページ「Environmental Warming and Feminization of One of the Largest Sea Turtle Populations in the World」図2より転載

今回の調査の結果を受け、WWFオーストラリアのダーモット・オゴーマン事務局長は、特に地球温暖化がグレートバリアリーフの自然に及ぼしている影響の大きさについて危惧の念を明らかにしたコメントを発表しました。

「グレートバリアリーフでは近年、過去最大規模でサンゴの白化現象が確認されています。

そして今回の調査により、ウミガメの出生比率が極端にメスに偏り、オスの出生がほぼなかったことが確認されました。

その現場であるグレートバリアリーフは、気候変動による影響が地球上で最も顕著に表れている場所の一つです。

その貴重な生態系を保全するためには、より野心的な気候変動対策を、早急に推進する必要があります」

ウミガメの性比の偏りを解消する手段としては、たとえばウミガメが産卵した巣の上に布をかけ、日陰を作って気温を下げる、といった方法もあるとされています。

しかし、これが産卵のため上陸してくる多くのウミガメに対し有効かつ実施可能な手段かどうかは分からず、長期的に種を存続させていく保全の手立てになるかも不明です。

何より、今回アオウミガメで認められた性比の極端な偏りは、温暖化が今後もたらす可能性のあるさまざまな変化や脅威の一つに過ぎないかもしれないのです。

問題を根本から解決し、微妙なバランスで成り立つ地球の生物多様性を保全するためには、やはり日本を含む世界各国が、気候変動問題の解決に向けた早急な取り組みを行なうことが必要とされています。

ホウィック群島でウミガメ産卵の約9割を占める地域Moulter Cay、Raine islandの砂の温度の年代変化。29.3℃を中心値とし、年毎の高低差を表している。
Michael P. Jensen, Camryn D. Allen, Tomoharu Eguchi, Ian P. Bell, Erin L. LaCasella, William A. Hilton, Christine A.M. Hof, Peter H. Dutton 著、 Current Biology Volume 28、154-159ページ「Environmental Warming and Feminization of One of the Largest Sea Turtle Populations in the World」図3より転載

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