NPO法人「夏花」による「サンゴ礁と共に生きる」石垣島スタディツアー報告


2014年3月、沖縄の石垣島・白保で、地元のNPO法人「夏花」が受け入れるスタディツアー「サンゴ礁と共に生きる 島人に触れるホームスティ 世界有数のサンゴ礁環境保全と島文化を学ぶ 石垣島4日間」が実施されました。地元白保の方々と、多くの時間を共にお過ごしいただいた、このツアーの内容をご報告いたします。

NPO法人「夏花」によるツアーの受け入れ

WWFジャパンが、石垣島の白保でその設立と活動の自立化を支援している、NPO法人「夏花」では、2014年3月23日から26日まで、スタディツアー「サンゴ礁と共に生きる 島人に触れるホームスティ 世界有数のサンゴ礁環境保全と島文化を学ぶ 石垣島4日間」の受け入れを行ないました。 主催は旅行会社のエイチ・アイ・エスで、WWFジャパンも特別協力で参加。北は北海道から南は九州まで、全国各地から7名の方のご参加を得て、白保でのサンゴ礁と共にある暮らしを満喫していただきました。

1日目:ようこそ白保へ!

23日午前中に羽田空港で集合した参加者の皆さんは、自己紹介の後、すぐに石垣に向かい空港を離陸しました。羽田から新石垣空港まで直行便で3時間10分のフライトです。

空港到着後はバスで白保の集落へ。バス停ではNPO法人「夏花」の花城理事長とWWFサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」のセンター長がお出迎えしました。

民宿でのチェックインを済ませた後、一行は入村式の会場となる「しらほサンゴ村」へ。

理事長からの歓迎のあいさつの後、参加者、スタッフ一人ずつ自己紹介をしました。

参加者の皆さまには、このツアーに期待することも、それぞれお話しいただきました。

最年少は高校2年生「初めての一人旅で北海道の帯広から来ました。今朝の気温は-12度でした。石垣島は暖かく、とっても楽しみにしています。」と笑顔で挨拶してくれました。

自然や生き物が大好きな皆さんで、白保のサンゴの観察はもちろんですが、ホームスティを楽しみにされていました。

最初のプログラムは白保の集落散策。
「しらほサンゴ村」近くの桑の木で、まずヤエヤマオオコウモリが一行を歓迎してくれました。

このコウモリは八重山諸島に生息する大型のコウモリで、夜行性のため日中はあまり見かけることがありませんが、この日は間近で観察することが出来ました。

オーセ(村番所跡、現在は拝所)の説明を受けた後は、海岸を散策。その後、集落に戻り御嶽(オン、沖縄信仰の聖所)と、石垣と福木、赤瓦屋根の集落の残る町並みを巡りました。

途中、白保公民館指定文化財にも指定されている、金嶺家の福木に囲まれたお庭では、黒糖味のサーターアンダギーを食べながらのユンタク(おしゃべり)も。福木の木陰でゆったりとした空気の中で、「癒される~」「沖縄っていう感じがする~」と参加者の皆さんも徐々に緊張が解けてきたようでした。

「しらほサンゴ村」に戻ってからは、地元の市民グループ「白保魚湧く海保全協議会」の佐川理事から「白保のサンゴとサンゴ礁」のレクチャーがあり、この日のプログラムは終了。その後は、民宿でくつろいでいただきました。

夜は、皆さんで海岸まで出て星空を観察したそうです。石垣島は、実は星空の美しい場所としても有名です。全天に88ある星座の実に84個を見ることが出来ます。また、21個ある1等星の全てを見ることが出来るのです。翌朝伺ったところ「流れ星を見ることが出来て、とっても感動しました!!」と報告していただきました。

花城理事長のあいさつ

集落内を散策

白保のサンゴとサンゴ礁のレクチャー

2日目:白保のサンゴの海、そして保全活動の現場へ

2日目も皆さん、早朝から日の出を見に行かれたそうです。 石垣島の東海岸に位置し、太平洋の水平線を望む白保は、日の出も美しい集落。ツアーでのプログラムで準備していなかったことについても、行動力ある参加者の皆さん自ら、さまざまな楽しみを見つけてくださったようです。

朝食後は、まず「しらほサンゴ村」で、生きたサンゴを展示した水槽や、パネル、ポスター展示などを見学。

「白保魚湧く海保全協議会」の棚原理事に、サンゴの形態、白保のサンゴ礁の見どころや、その重要性など、観察のポイントについて説明をいただいた後、実際に白保の海へサンゴ礁の観察に出かけました。

この日、棚原理事には海でのガイドも務めていただきました。
まずは、車に乗って船着き場まで。この白保の船着き場の特徴は、自然海岸の地形をほぼそのまま使っていることです。

桟橋が無いのでズボンの裾をまくりあげ、膝の下まで海に入って、船底がガラス張りのグラスボートに乗船です。

砂地から藻場、サンゴの群集域などガラスを通して見える海中の景観に皆さん見とれていました。棚原理事の詳しい解説もあり、サンゴへの理解を深められたようです。

見どころは、白保集落で植え付けを行ったギーラ(シャコガイ)のポイントや、百匹以上のクマノミが生息するコロニー、そして世界最大級のアオサンゴ群落。

参加者の皆さんからは、「次回は、シュノーケルで観察したい!」と早くもリピーター宣言が飛び出しました。

「しらほサンゴ村」に戻ると、今度はキシノウエトカゲが一行の帰りを待っていました。「何これ~」「かわいい~」「蛇かと思った~」と皆さん大興奮。国の天然記念物にも指定されているこのトカゲは、体長30センチにもなる大型のトカゲで、石垣島を含む先島諸島にしか生息しない珍しい固有種です。

その後、八重山そばとジューシー(沖縄風炊き込みご飯)のおにぎりで昼食をとった後、サンゴ礁の保全活動へ。

白保のサンゴ礁への赤土の流出を防止するために、農地周辺部での月桃植えを行ないました。植え付けた苗は合計100本。「土が固くて大変」「サンゴを守るためには地道な作業が必要なんですね」とみんなで一緒に汗を流しました。

炎天下での作業を終え、一休みしてから、今度は「しらほサンゴ村」での白保方言講座です。

地元のおばぁ二人を講師にお迎えして、ホームスティの時に方言で自己紹介が出来るようにしよう!と、方言を教えてもらいました。

「外国語みたい」「これは難しい...」という感想ももれた難しい白保方言。おばぁ二人の方言での会話に皆さん「ぽか~ん」と口をあけています。

でもどうにか自己紹介の仕方を教えていただき、「ウサギとカメ」の童謡を方言で練習しました。最後には、おばぁが踊り出すほどに楽しく、笑いの絶えない方言講座でした。

この日の晩は交流夕食会。
参加者の皆さんが翌日ホームスティする先の家族の方々と、NPO法人「夏花」の理事の皆さんをまじえて、懇親の機会を設けました。

料理は、地元の物産展「白保日曜市」にも登場する、おばぁの自慢の郷土料理の数々です。

カナッぱ(葉っぱ)のプレートにお好きなだけとって召し上がっていただきました。

夕食会では、この春、島を離れる高校3年生による郷土芸能の披露も。ツアー参加者の皆さんも、負けじと方言で自己紹介とウサギとカメの合唱をしました。

会場の白保の皆さんに大うけの楽しい交流会となりました。
「白保の皆さんとたくさん接することが出来て楽しかったです」「料理の豪華さ、おいしさには驚きでした!」ととても満足していただくことが出来ました。

「しらほサンゴ村」の展示を見る

グラスボートでのサンゴ礁観察

シャコガイ。地元ではギーラと呼ばれる

赤土防除のための月桃植え

地元の郷土料理でおもてなし

地元の高校生による郷土芸能

3日目:白保の集落での生活を体験

3日目は、朝から白保の稼業体験。そして夜はホームスティです。
ホームスティで参加者の方を受け入れてくれる3つの家庭が、民宿にお迎えに来てくれました。

まずは、それぞれの家で白保の暮らしを体験します。今回は、畜産農家一軒に、野菜農家二軒がホストファミリーになってくれたので、野菜農家さんでは畑仕事。それからビニールハウスでのゴーヤの受粉作業を行ないました。

畜産農家さんの方では、牛のエサやりや牛舎の掃除、牛の検温などさまざまな体験をしたそうです。 夕食もホームスティ家族の一員として一緒にとりました。

翌日の最終日、午前中の自由行動の後の離村式には、とっても満足そうな表情の参加者の皆さんのお顔が並びました。

ホームスティ先と一緒に島内観光をしたグループ、海に釣りに出かけたグループ、船に乗り竹富島観光に出かけたグループと、楽しまれた内容はいろいろでしたが、それぞれに掛け替えの無いとっておきの体験が出来たようです。

離村式では、参加者の皆さん、ホームスティ受け入れ家庭、NPO法人「夏花」とそれぞれがツアーの感想を発表。事故もなく、無事にすべての予定を終えることができました。

NPO法人「夏花」がスタディツアーを受け入れるのは、今回が初めてで、段取り不足や島時間で予定通りに進まないこともありました。

しかし、交流夕食会やホームスティをはじめとして、地元白保の方々と一緒に多くの時間を過ごすことが出来たことに、参加者の皆さんには、大変満足していただけたようです。

とりわけホームスティでは「すごくよくしてもらって、また帰ってきたいと思える場所になりました」、「普段見られないもの、体験できないことが沢山あってとても刺激的でした」「体を動かして働くことがとっても気持ちよかったです」と、さまざまなご感想をいただきました。
また、「今までの人生で、最も有意義な旅行でした」という嬉しいコメントも。

「しらほサンゴ村」では、今後も、こうしたツアーなどの実施や支援を通じて、地域が主体となったサンゴ礁の保全と、持続可能な資源管理の確立を目指してゆきます。

ホームステイ先での暮らし体験

農家でのホームステイ


ホームステイ先での晩餐

皆さんおつかれさまでした

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