国連の温暖化防止会議で注目される「非国家アクター」


温暖化・エネルギー担当の山岸です。
5月8日~18日の日程で開催されている国連気候変動会議(APA1-3・SB46)のために、ドイツ・ボンに来ています。

この時期のドイツでは、ホワイトアスパラガスが有名なのですが、そういう季節感を感じることもなく、いつもの国連会議場に、もはやWWFチームの定宿となっているいつものホテルから通い続ける日々が続いています。

会議場では、2015年12月に合意された「パリ協定」に加えて、世界を脱炭素化に向けていくための更なるルール作りが進められています。

すっかり馴染みの通勤ルートとなった会議場への道

その議論の中で、印象的なのは「非国家アクター」の役割が非常に頻繁に強調されるようになってきたことです。

「非国家アクター」とは、政府以外の組織、たとえば、企業や、自治体、そして私たちWWFのようなNGOなどの主体を言います。

企業・自治体・NGOが大事だ、などというのは、別に真新しい発言ではないように聞こえるかもしれません。

しかし、今の国連気候変動交渉の場に特徴的なのは、国々がより積極的に「非国家アクター」の役割を、国連が作る仕組みの中にも取り込んでいこう、という流れがあることです。

各国の政府代表が集まる会議場。議決権は持ちませんが、非国家アクターであるNGOのスタッフなども参加します。

たとえば、パリ協定には、5年ごとに「各国および世界全体での温暖化防止の取組みが充分かを見直しましょう」という仕組みがあります。

この見直しの中で、いかにして非国家アクターからの提案や取組みを吸収していくのかが、真剣に議論されています。

パリ協定という歴史的な合意が成立したことの背景には、国々だけでなく、非国家アクターの後押しがあったから、という認識があるため考えられます。

まだまだ初期段階ではありますが、重要な変化を感じつつ、残りの交渉もフォローしていきたいと思います。

関連情報

過去の国連会議で存在感を見せていた市民団体のメンバーと機関投資家グループの関係者たち。いずれも非国家アクターの代表です。

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自然保護室長(気候エネルギー・海洋水産・生物多様性・金融)
山岸 尚之

立命館大学国際関係学部に入学した1997年にCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催されたことがきっかけで気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大学を卒業後、9月より米ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連気候変動会議に毎年参加し、国際的な提言活動を担当。2020年より自然保護室長。

京都議定書が採択されたときに、当地で学生だったことがきっかけでこの分野に関心をもち、大学院を経てWWFに。以来、気候変動(地球温暖化)という地球規模の問題の中で、NGOがどんな役割を果たせるのか、試行錯誤を重ねています。WWFの国際チームの中でやる仕事は、大変ですがやりがいを感じています。

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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