「選択肢」についての意見聴取会が抱える課題


気候変動・エネルギー担当の山岸です。
未来のエネルギーと原発のあり方を大きく左右する「エネルギー・環境に関する選択肢」。7月14日に、さいたま市で開催されたその最初の意見聴取会に参加してきました。これは、政府が「国民的議論」の一環として開催しているものです。

この「意見聴取会」で感じた問題点を整理してみます。

1)アナウンスから参加締切までがあっという間
14日開催のさいたま会場の聴取会の参加募集が告知されたのは7月6日。〆切は11日でした。これでは知らずに終わってしまう人が大勢いたはずです。

2)意見表明者の選び方
今回の意見聴取会では、政府が用意した3つの「選択肢」について、参加者の中から選ばれた9名の意見表明者が発言できます。ところが、「原発ゼロシナリオ」を選択する人が圧倒的に多いのに、その立場で壇上で喋れる人は9人のうち3人だけでした。意見表明者が、3つの選択肢それぞれから3人ずつ選ばれる仕組みになっているからです。
もちろん、少数意見がないがしろにされるのは問題ですので、賛同者の少ない選択肢についても、意見表明できることは大事です。
でも、仙台や名古屋では、希望者が少なかった20~25シナリオについて、電力会社の方が組織の意見を述べていったのに対し、希望者が多いがために、倍率が高くなってゼロシナリオについて一般市民が意見表明がしにくい、というのは矛盾しています。

3)関東圏の人間が仙台で意見を表明していた
特に15日の仙台の聴取会で明らかになった問題ですが、関東の人が仙台の聴取会に参加して、意見を表明していました。参加するまではともかく、せっかく仙台でやっているのに、貴重な9名の意見票目者枠に関東の人間が3名。これでは何のために全国11カ所でやるのか分かりません。

4)会場に来た人たちの意見を聞く場がない
意見聴取会では、壇上で9名の人が10分ずつくらい発言し(計1時間半)、前後の政府側の説明で、2時間のイベントはほとんどおしまいです。アンケートは配られますが、会場にせっかく集まった人たちの意見を聞く機会がありません。

このように多くの課題を抱えたまま、意見聴取会はすでに全国11のうち3つが終わってしまいました。今週末は大阪と広島。せめて残りで改善がされることを期待したいと思います。

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さいたまの意見聴取会の会場入り口。さいたまの枠は200名でした。応募したところ抽選で当たったので参加してきました。

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マスコミの取材も

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会場の様子。たくさん人は集まっていましたが、発言ができたのは9人だけ。

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自然保護室長(気候エネルギー・海洋水産・生物多様性・金融)
山岸 尚之

立命館大学国際関係学部に入学した1997年にCOP3(国連気候変動枠組条約第3回締約国会議)が京都で開催されたことがきっかけで気候変動問題をめぐる国際政治に関心を持つようになる。2001年3月に同大学を卒業後、9月より米ボストン大学大学院にて、国際関係論・環境政策の修士プログラムに入学。2003年5月に同修士号を取得。卒業後、WWFジャパンの気候変動担当オフィサーとして、政策提言・キャンペーン活動に携わるほか、国連気候変動会議に毎年参加し、国際的な提言活動を担当。2020年より自然保護室長。

京都議定書が採択されたときに、当地で学生だったことがきっかけでこの分野に関心をもち、大学院を経てWWFに。以来、気候変動(地球温暖化)という地球規模の問題の中で、NGOがどんな役割を果たせるのか、試行錯誤を重ねています。WWFの国際チームの中でやる仕事は、大変ですがやりがいを感じています。

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生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

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