九州のクマに「絶滅宣言」。しかし...


広報の佐久間です。
先月、環境省が、絶滅のおそれのある野生生物のリスト「レッドリスト」の改訂を行ない、ニホンカワウソやダイトウノスリなどを「絶滅種」に指定したことを発表。同時に、九州地方のツキノワグマも「絶滅」とされました。

正直なところ、この発表にはびっくりしてしまいました。

というのも、クマの研究者が中心となって活動する「日本クマネットワーク」が、九州の祖母傾山系(そぼかたむきさんけい)で2011年度から3年計画で調査をしている最中だからです。

今年6 月9~10日には、のべ69 名が現地でクマの痕跡などを探したほか、46 台の自動撮影カメラを設置しています。

実は私も、この調査に参加しました。山々は想像以上に深く、ツキノワグマが好みそうな環境があちこちに残っていて、少数のクマがひっそりと生き残っている可能性に、期待せずにはいられませんでした。

環境省は「最後の確認から50年以上たっており、専門家で議論した上での判断」としています。これはこれで、客観的な判断だと思います。

ただ、日本クマネットワークもまた、フィールドで直にクマと付き合ってきた専門家が多く参加する団体です。その調査結果が出るまで、待ってくれても良かったのでは…と思えてなりません。

「レッドリスト」が信頼性の高いデータでありつづけるためにも、どこかの時点で判断を下さなければならないことはわかっていますが、九州のツキノワグマにしろ、ニホンカワウソにしろ、望みを捨てずに調査を続ける人たちの思いもまた、痛いほどわかるのです。

6月の祖母傾山系の調査では、クマの痕跡だと断定できるものは発見できませんでした。また、今のところ、自動カメラもツキノワグマの姿を捉えていません。

しかし、まだ12台のカメラが稼働中です。耳の先っぽでもいいから、何とか写ってほしい。やはり、そう願っている自分がいるのです。

 

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大分県と宮崎県の県境に広がる祖母傾山系。人工林化も進んでいるが、広葉樹林も残っている

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蜂蜜のにおいでクマを赤外線自動カメラの近くに呼び寄せる。ただし、餌付けにならないよう、クマが届かない位置に設置する

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あやうく踏みそうになって、よくよく見るとマムシ!

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地元メディアからも高い関心が寄せられている

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マーケティング室(会報担当)
佐久間 浩子

WWFではずっと「伝える」ことに携わってきました。今は会報を担当しています。

なにごとも決めつけてはいけない。知ったつもりになるな。複雑なものを、複雑なまま受け止める覚悟を持て。想像力を磨き、ヒトの尺度を超える努力をせよーー動物や植物に教えられたことを胸に、人と自然の問題に向き合い続けたいと思います。

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