WWF『生きている地球レポート2026』を発表 「生物多様性の豊かさ」が73%減少 ~保全活動と社会・経済システムの変革が回復への鍵。野生生物の回復事例も紹介~


公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区、会長:末吉竹二郎、以下WWFジャパン)は、10月19日(月)よりアルメニアの首都エレバンで開催される国連の生物多様性条約第17回締約国会議(COP17)を前に、WWFインターナショナルが本日2026年10月8日(木)に発表した世界の⽣物多様性の変化と、地球環境の豊かさを包括的に評価した報告書『生きている地球レポート2026(Living Planet Report 2026)』の概要をお知らせします。 

左:『Living Planet Report 2026』(英文フルレポート)
https://www.wwf.or.jp/activities/data/20261008lpr_e.pdf
右:『生きている地球レポート2026(Living Planet Report 2026)』ファクトシート(日本語要約版)
https://www.wwf.or.jp/activities/data/20261008lpr_j.pdf

■主な概要

『生きている地球レポート』は、 WWFが1998年から発行している報告書で、地球の生物多様性の豊かさと健全性の変化を科学的データに基づいてまとめたものです。
16回目の発行となる今回の『生きている地球レポート2026』では、生物多様性の豊かさを示す指標である「生きている地球指数(LPI:Living Planet Index)※」が、1970年から2022年までの52年間で平均73%減少したことが示されました。

※本指数は現在、ロンドン動物学協会(Zoological Society of London:ZSL)によって作成されており、モニタリング対象の5,790種の脊椎動物の、3万5,803の個体群に基づいています。⽩線は指数値を⽰し、網掛け部分はその統計的不確実性(信頼区間)の範囲を表しています。LPIのグラフは、指数の変化をより正確に⽰すため、縦軸に対数⽬盛を使⽤しています。

※本指数は現在、ロンドン動物学協会(Zoological Society of London:ZSL)によって作成されており、モニタリング対象の5,790種の脊椎動物の、3万5,803の個体群に基づいています。⽩線は指数値を⽰し、網掛け部分はその統計的不確実性(信頼区間)の範囲を表しています。LPIのグラフは、指数の変化をより正確に⽰すため、縦軸に対数⽬盛を使⽤しています。

世界の野生生物全体の個体群の規模は平均で73%減少していますが、生態系別にみると、最も大きな減少が見られたのは淡水生態系(−85%)で、続いて陸域生態系(−69%)、海洋生態系(−59%)となりました。

モニタリング対象となっている野生生物の個体群に影響を及ぼす最大の要因は、生息地の消失と劣化です。次に、乱獲などの過剰利⽤、気候変動、汚染、侵略的外来種、疾病が挙げられます。⼀連の脅威は、その背後にある⾷料⽣産システム、エネルギーシステム、⾦融システムにおける構造的な機能不全によって引き起こされています。

食料生産システム、エネルギーシステム、金融システムの変革は容易ではありません。しかし、変革への流れを生み出す転換点につながる条件が整えば、実現できます。そしてその変革は、社会のあらゆる主体が参画し、その移行が公正かつ包括的なものである場合にのみ成功する、と本レポートは指摘しています。

加えて、本レポートではアオウミガメ、クロマグロ、トラ、アフリカ南部のゾウの個体群の回復事例を紹介しています。これらは、保全活動が確かな成果をもたらす可能性を⽰しています。

WWFインターナショナル事務局長 キルステン・スフェイト博士 コメント

生物多様性の損失は、依然として憂慮すべき速度で進行しています。しかし、その大幅な減少が続くなかにも、希望の兆しがあります。『生きている地球レポート2026』では、野生生物の個体群の中には、安定・回復がみられるものもあること、そして自然は回復する力を持ち、変化を起こすことが可能であることを、希望の事例と共に紹介しています。トラ、太平洋および大西洋のクロマグロ、アフリカ南部のゾウ、アオウミガメといった生物種の個体群の回復は、長年にわたる継続的かつ協働的な保全の取り組みが、どのような成果を実現できるかを示しています。

こうした保全の成功を維持しさらに広げていくためには、自然環境を損なっている産業やシステムそのものを変革していく必要があります。いま求められているのは、すでに始まったシステム変革をさらに加速させ、その規模を拡大することです。そして、自然と調和しながら協力して行動し、より持続可能で、公平かつレジリエントな世界を築くことです。私たちが力を合わせれば、「生きている地球」を再生することができるのです。

WWFジャパン 自然保護室 生物多様性政策グループ長 北出智美 コメント

世界の生物多様性は急速に減少を続けています。このままでは、2030年までに生物多様性の損失を止め、回復軌道に乗せる生物多様性条約の「昆明・モントリオール生物多様性枠組(KM-GBF)」の達成は難しいと見られています。今必要なのは、自然を破壊する活動ではなく、保全し回復させる活動にインセンティブが働く社会・経済システムへの転換です。困難を伴いますが、トラやクロマグロの回復が示すように、国際社会が協力して行動を加速すれば実現は可能です。
10月19日からアルメニア・エレバンで開催される生物多様性条約会議(COP17)では、KM-GBFの達成に向けた行動をどこまで加速できるかが問われます。

■野生生物種の回復事例

トラ

世界の野生トラの個体数は、2010年から2025年の間に70%以上増加し、約3,200頭から約5,700頭へと回復しました。トラの回復は、各国政府、先住民族、地域コミュニティ、NGO、支援団体およびその他のパートナーによる長期にわたる協調的な投資と行動の成果です。その取り組みとして、国家レベルのトラ回復計画、グローバル・タイガー・イニシアティブを通じた政府間協力、レンジャー組織の専門化、保護区の拡大、国境を越えた違法取引対策、需要削減キャンペーンなどが実施されてきました。

クロマグロ

2010年までに大西洋クロマグロ個体群は80%減少し、「絶滅危惧種(Endangered)」に選定されていました。また太平洋クロマグロは、未利用時の資源量と比較してわずか2%にまで減少し、「危急種(Vulnerable)」に選定されていました。この状況の中、各国政府と水産業界は、適切な資源管理のためのルールの策定、漁獲枠の削減合意、資源や漁業の実態についてのモニタリング強化などに取り組みました。その結果、現在では両種とも回復し、過剰漁獲状態や保全上、重大な懸念のある種とはみなされなくなっています。

アフリカゾウ(サバンナゾウ)

アフリカゾウは、生息域全体で見ると依然として減少傾向にあり、「絶滅危惧種(Endangered)」に分類されています。しかし、アフリカ南部には一部で個体数が増加している個体群も存在します。南部アフリカ諸国では、地域が主体となって天然資源を管理し、住民がゾウの保全管理から直接利益を得られる法制度が整備されています。こうした現場の取り組みを支えているのは、違法取引対策、司法制度改革、汚職削減などの取り組みです。

アオウミガメ

2025年、アオウミガメはIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストにおいて、「絶滅危惧種(Endangered)」から「低危険種(Least Concern)」へと区分が変更され、ウミガメ類で初めて「低危険種」となりました。この回復は、アオウミガメが産卵のために上陸する約80カ国が50年間にわたり協調して取り組んだ成果です。主な対策としては、産卵する雌個体と卵の保護、産卵場となる海浜の管理、照明の規制、漁場へのウミガメ侵入防止装置の導入、混獲削減対策、違法捕獲の取り締り、地域社会との継続的な協働などが行なわれてきました。

*上記の回復事例にある、絶滅のおそれの度合い(ランク)は、すべてIUCNのレッドリストによるものです

■ご参考

この記事をシェアする

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは100カ国以上で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP