日経平均構成銘柄企業の脱炭素の取り組み状況を調査!~約半数の企業がSBT認定取得または2年以内の取得を約束。科学的で野心的な削減目標設定が浸透する一方、取り組みが遅れるセクターも明らかに~
2024/03/21
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区、会長:末吉竹二郎、以下 WWF ジャパン)は、2024年3月に企業の温室効果ガス排出削減目標である「SBT(Science Based Targets )」(※1)を取得または2年以内に取得することを約束(コミット)した日本企業数が1000社(SBT認定取得済み企業数では世界最多)を超えた機を捉え、日経平均株価構成銘柄に選定されている225社を対象に、SBTの取得状況および「CDPスコア」(※2)の調査を行ない、企業の脱炭素化の取り組み状況を分析しました。
その結果、科学的で野心的な温室効果ガス削減目標の設定が日本を代表する大企業において浸透しつつある一方で、取り組みが遅れているセクターも明らかになりました。
「日本企業脱炭素本気度ウォッチ」:日経平均株価構成銘柄に選定されている225社の脱炭素化の取り組み状況をWWFウェブサイトに公開しています。
https://www.wwf.or.jp/activities/activity/5512.html
(※1)SBT(Science-based Target)とは、パリ協定が求める⽔準と整合した、企業が科学に基づいて設定する温室効果ガス削減目標のこと。https://sciencebasedtargets.org/
2015年にWWF、CDP、世界資源研究所(WRI)、国連グローバル・コンパクトにより設立された共同イニシアティブであるSBTi (Science-based Target Initiative)がSBT認定を取得した企業やコミットした企業を公開している。
(※2) CDPとは、企業の環境影響に関する情報開示を進める非営利組織。企業の環境問題への取り組みをスコアリングしている。https://japan.cdp.net/
調査結果サマリー
日経平均株価構成銘柄に選定されている225社のうち約半数にあたる110社(約49%)が、既にSBTを取得または2年以内に取得するとコミットしていることが明らかになりました。2022年(※3)と比較すると、約9%増加しています。また、CDP 「気候変動レポート2023」のスコアリングにおいて、225社のうち153社(約68%)が高評価であるAまたはA-の評価を受けていることが分かりました。また、最も低いF(非開示)の評価を得ている企業が7社(約3.1%)あることが分かりました(いずれの数字も2024年3月15日現在)。
業種セクターごとにみると、「技術」や「資本財その他」のセクターでは、SBT取得またはコミットした企業はそれぞれ46社(約75%)、21社(約60%)と取り組みを牽引する一方で、「消費(約44%)」、「素材(約36%)」、「運輸公共(約33%)」、「金融(約5%)」の各セクターはSBT取得またはコミット率が全体よりも低い水準にとどまりました。またCDPでFスコアを取得した7社のうち、5社が「消費」のうちのサービスセクターに分類される企業でした。
(※3)2022年末時点での日経平均株価構成銘柄企業との比較。
WWFジャパンの考察
これらの結果は、日本を代表する大企業の間でSBTの設定が浸透してきていることや、気候関連の情報開示を適切に実施することが「標準」であるという認識に近づいてきていると推察できます。他方、225社のうち半数がSBTの設定ができておらず、取り組みが進むセクターと遅れるセクターの差が開きつつあることや、十分な情報開示に取り組めていない企業が一定数あることも示しています。
日経平均構成銘柄企業はグローバルなサプライチェーンの一角を担っているケースが多く、世界的に有名企業であることが少なくありません。温室効果ガス排出量の多寡に関わらず、こうした有名企業が積極的にリーダーシップをとって脱炭素化を進めることは、社会全体での脱炭素を実現するための強力な推進力となると考えます。
WWFジャパン 気候・エネルギーグループ 羽賀秋彦コメント
SBTを取得またはコミットした日本企業は、2024年3月時点で1000社を超えた。特に既に認定を取得している企業数でみると日本は世界最多だ。今回の日経平均構成銘柄企業における調査結果と合わせ、日本企業の間でSBTの普及が進んでいることを歓迎したい。調査結果では、取り組みが遅れるセクターの中には金融セクターや一般に多排出で脱炭素化が難しいとされているような企業群だけではなく、サービスセクターといった必ずしも温室効果ガス排出量が多くなく脱炭素も比較的容易に実施可能なセクターも含まれていた。これらの企業はCDPスコアも低い傾向で、温室効果ガス排出量が相対的に多くないが故に、かえって当事者意識や課題感が低くとどまっているという可能性を示唆している。日本を代表する大企業としての社会的な責任やインパクトも踏まえ、温室効果ガス排出量の多寡に関わらず、日経平均構成銘柄の全ての企業が野心的な目標を科学に沿って設定することが社会全体での脱炭素を実現するために重要だ。
WWFジャパンは日経平均株価構成銘柄に選定されている225社の脱炭素化の取り組み状況をWWFウェブサイトで公開し、日本の大企業がリーダーシップをとって脱炭素化を進める後押しをしていきます。
調査方法
- SBT取得状況については、SBTiウェブサイトに公表されているデータセットをもとに調査しています。(調査結果は2024年2月20日現在)https://sciencebasedtargets.org/companies-taking-action
- CDPスコアについては、CDPウェブサイトに掲載されている2023年気候変動のスコアをもとに調査しています。
本件に関するお問い合わせ先
WWFジャパン ブランドコミュニケーション室 メディアグループ 広報担当:山崎
Tel: 090-6724-2024
Email: press@wwf.or.jp