森林破壊の現状、総合商社の取組状況・調査結果をまとめた報告書 『ネイチャーポジティブ実践に向けた手引き』を発表 ~農林畜産物を扱う企業に求められるサステナブル調達~


公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(東京都港区、会長:末吉竹二郎、以下 WWF ジャパン)は、企業における調達改善のためのガイダンスとして『ネイチャーポジティブ 実践に向けた手引き』を発表し、森林破壊・土地転換と農林畜産物調達の現状とリスクを事例に、海外からのコモディティ取引に多面的に関わる、総合商社のサステナブル調達の取組状況をまとめました。世界中でネイチャーポジティブに向けた機運が高まる中、自然環境に大きな負荷を与えうる農林畜産物生産は、よりサステナブルな方向にシフトすることが求められています。

本報告書では、森林破壊の現状を解説するほか(中央)、大手総合商社の取組状況・調査結果をスコアカードとして3分野計41個の指標を設定し、各指標を3段階(緑・黄・赤)で評価した(右)。

【報告書のサマリー】
■森林破壊の現状

・世界の森林破壊の要因は、時代や場所によって様々であるが、農林畜産物の生産のために行う農地や植林地への転換が約4割を占める。
・特に農林畜産業など土地利用由来のGHG排出量は、エネルギー分野に次いで22%と多い。企業によるサステナブル調達は、気候変動の観点からも重要であることを認識すべきである。

■総合商社の取組状況・調査結果(スコアカード)
・日々の暮らしや経済活動に欠かせない多くのコモディティ調達を担う大手総合商社の代表的な森林リスクコモディティ(木材・紙パルプ・パーム油)における調達方針とその運用・開示状況を比較・分析した。
・大手総合商社の上記森林コモディティに関する調達方針の策定状況は、日本の他業界と比べて進んでいる。
・しかし、調達方針の策定は進んでいるものの、運用や取組状況が十分に開示されておらず、実際の取組みは不足していると思われる企業が多いと判断せざるを得ない。

■持続可能なサプライチェーン構築のために
・企業には、森林破壊や土地転換に立ち向かうコミットメントを調達方針という形で公表し、方針に整合する目標を確実に運用し、進捗について透明性をもって開示することが求められている。
・調達方針には、今出来ていることではなく、社として目指す「あるべき姿」を明示することが重要である。

森林リスク・コモディティや農林畜産物のサステナブル調達には、金融業界からも注目が集まっています。ESG(Environment, Social and Governance)投資をはじめとする、環境に配慮した金融のあり方が大きく注目されていますが、農林畜産物を扱う企業がサプライチェーンを通じて自然に与える影響を考えるうえで、調達方針の策定・運用・開示は非常に重要です。国内金融機関の、りそなアセットマネジメント株式会社様より、本レポート公開に際し、以下のコメントをいただきました。

りそなアセットマネジメント株式会社 執行役員 責任投資部担当 松原 稔様コメント

 

「企業の持続可能性と社会の持続可能性の両立(SX)は長期投資家にとって関心の高いテーマです。企業が自然資本をどう活かし、どう取り組んでいくのかは、投資家をはじめとするステークホルダーとの対話から進んでいくものと考えます。スコアカードのような企業の取組評価を通じてステークホルダーと企業との対話がさらに深化し、気候変動や森林保全といった外部不経済性において企業が内部化して取り組まれることを期待しています。」

WWFジャパン 森林グループ 南 明紀子コメント

 

「本レポート結果から、日本の総合商社は『森林破壊ゼロ』を調達方針に掲げるなど、方針の策定においては他の業界よりも進んでいることが分かりました。一方で、方針で謳われる目標を担保するための実際の取組みについては、十分な開示がされていないことも明らかになりました。
世界の森林・自然生態系は危機的な状況にあり、企業の実効性ある貢献が待ったなしの状況です。日本企業には、森林破壊・土地転換ゼロのコミットメントを迅速かつ包括的に行動に移し、WWFと一緒にこの危機に立ち向かっていただくことを期待します。」

WWFは、生物多様性の回復と脱炭素、どちらの観点からも重要となる森林・自然生態系の保全と持続可能な生産・消費の推進のため、森林破壊と土地転換の無いサプライチェーンを目指す企業の手助けとなるような情報を今後も発信していきます。

■公開資料 
『ネイチャーポジティブ実践に向けた手引き』

『ネイチャーポジティブ実践に向けた手引き』ウェブサイト 

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