【NGO共同提言】使い捨てプラスチックの大幅削減とプラスチック中の有害化学物質の規制を求める緊急要請
2026/07/23
2026年7月6日、WWFジャパンは、「減プラスチック社会を実現するNGO ネットワーク」の一員として、メンバーおよび趣旨に賛同する33団体と共に、「使い捨てプラスチックの大幅削減とプラスチック中の有害化学物質の規制 を求める緊急要請書」を内閣総理大臣および環境大臣、経済産業大臣宛てに送付しました。
中東情勢の緊迫化とホルムズ海峡の封鎖に伴うナフサ調達不足の問題を機に、現在のプラスチックに過度に依存した社会を見直し、「使い捨てない社会」への移行に舵を切ることを求めるものです。
要請書では、日本政府に対して以下の事項を求めています。
・使い捨てプラスチックの大幅な削減とEPR(拡大生産者責任)の徹底
・プラスチック中の有害化学物質の規制
・「使い捨てない社会」への移行を目指した業界横断的なリユース政策の実現
2026年7月6日
内閣総理⼤⾂ ⾼市 早苗 様
環境⼤⾂ ⽯原 宏⾼ 様
経済産業⼤⾂ ⾚澤 亮正 様
使い捨てプラスチックの大幅削減とプラスチック中の有害化学物質の規制 を求める緊急要請
2026年2月以降、アメリカ、イスラエルによるイラン攻撃によって起こった中東情勢の緊迫化とホルムズ海峡の封鎖により、資源の多くを海外に依存する日本経済の脆弱性が改めて露呈しました。プラスチックなどの原料であるナフサの調達困難や供給不安によって、エチレンの減産やプラスチックやその他関連製品が値上がりし、石油化学製品に囲まれて暮らす私たちの生活にも影響が出ています。日本政府は石油の備蓄放出や代替調達によって事態の収束にあたってきましたが、今後は持続可能性の観点からも化石燃料やプラスチックに過度に依存した社会のあり方を根本的に問い直し、「使い捨てない社会」への移行に舵を切るべきと考えます。このことは、政府自らが「第五次循環型社会形成推進基本計画」で掲げる、経済安全保障の考え方にも合致するはずです。
日々深刻化しているプラスチック汚染は、気候変動、生物多様性、汚染という地球が直面する三重危機全てに影響を与えています。また、プラスチック由来の有害化学物質による生物や人体への影響も科学的知見が蓄積しており、懸念されています。プラスチック廃棄物の約4割を占める使い捨て容器包装類を削減することは、プラスチック汚染対策の要です。食品や日用品をリユース可能な容器で提供し、容器を循環させる仕組み(注1)やマイ容器の受け入れ、使い捨て容器包装を使用しない「はだか売り」といった対策は、すぐにでも実現可能な取り組みです。リユースの仕組みを導入し、使い捨てプラスチックを削減することで廃棄物の削減はもちろん、ライフサイクル全体における石油の使用量も節約できます。一部の企業では、プラスチック包装材の簡素化や、消費者のマイ容器持ち込み推奨など、プラスチックの消費を抑えようとする事例も出てきています。これらの取り組みの多くは国際情勢を背景とした経済合理性の観点からのやむを得ない対処であり、必ずしもプラスチック汚染の解決を目的としたものではありませんが、企業が包装材対策を進めている今だからこそ、環境汚染対策の観点からも、使い捨て容器包装のあり方を根本的に見直し、プラスチック大幅削減のための対策を急ぐべきです。
現在、国連環境総会(UNEA)の決議に基づき、プラスチック汚染を終わらせるためのプラスチック条約策定に向けて、約180カ国が参加する政府間交渉委員会(INC)で交渉が進められています。今、日本政府が脱プラスチック政策へ舵を切ることができれば、2027年3月に予定されている次回の政府間会合(INC-5.4)に向けて世界に日本の姿勢を示し、野心的な条約への合意に向けて交渉を加速させることにも繋がるはずです。また、現在のプラスチック製品には、内分泌撹乱物質(ビスフェノール類、フタル酸エステル類、有機フッ素化合物)などの有害化学物質が原料や添加剤として含まれており、その規制・禁止を進めることが、これまでの国際会議でも提案されています。プラスチック汚染対策には、有害化学物質の規制が不可欠です。
これらをふまえて私たちは、 従来の使い捨てプラスチックに依存する社会から、資源を使い捨てない循環型の社会へ移行していくため、日本政府に対して以下の事項を要請します。
●使い捨てプラスチックの大幅な削減とEPRの徹底
2019年に策定されたプラスチック資源循環戦略および2022年のプラスチック資源循環促進法の施行以降、日本政府は各種プラスチック対策に取り組んできた。しかし、依然として使い捨て容器包装そのものの大幅削減(リデュース)には至っていない。今後は、不必要・過剰な容器包装の禁止 措置も含め、さらに踏み込んだ規制の検討をすべきである。また、製品の製造・販売段階にとどまらず、廃棄・リサイクルに至る全ライフサイクルにおける生産者の責任を明確にし、明確な発生抑制目標と報告・罰則を有したEPR(拡大生産者責任)を徹底すべきである。
●プラスチック中の有害化学物質の規制
プラスチック製品に含まれる有害な化学物質が、劣化や加熱により環境中に放出され、汚染や生物の曝露、生物濃縮を引き起こし、海鳥をはじめとする多くの生物や人体に影響を与えることが懸念されている。そのため、予防原則に基づき、プラスチック中の有害化学物質の規制・禁止を進めることが必須である。プラスチックのリユース、リサイクルを安全に進めるうえで、プラスチック中の有害化学物質の規制・禁止は不可欠で、規制を強化しない限り、環境への負荷や汚染の少ないリユースやリサイクルは不可能である。
●「使い捨てない社会」への移行を目指した業界横断的なリユース政策の実現
- プラスチック資源循環戦略で定められたマイルストーンでは、「2030年までにプラスチック容器包装の60%をリユース・リサイクル」とリユース・リサイクル目標が一括りにされており、その内訳(比率)が示されていない。この曖昧さが、結果として「リサイクル偏重」を強め、優先されるべきリユースの停滞に繋がっている。国は3Rの法的な優先順位に則り、リユースが占めるべき具体的な最低比率目標を明確に設定すべきである。
- 使い捨て社会からの脱却を実現するには、事業者や業界団体の自主的努力だけに委ねることには限界がある。リユースの推進においては、これまでリターナブルびんなど、特定の分野で様々な努力がなされてきたが、プラスチック汚染対策としては、その他の食品・日用品など使い捨て容器包装全般で対策を進めることが重要である。政府は、こうした容器包装を多く排出する事業者に対し、リユースの義務化を含めた対策を検討するべきである。その際、技術的・ 運用的に最も実現可能なセクターから段階的にリユース容器への移行を進めることも考えられる。
- 政府としてリユースへの支援を優先的かつ強力に行うべきである。具体的には、リユースに積極的に取り組む事業者に対する税制優遇措置や、設備投資への補助金支援など、経済的なインセンティブが働く仕組みを構築することが望ましい。
- 新たなリユースの仕組みを社会に定着させるため、政府が主導して事業者・地方自治体と連携し、回収・洗浄・配送を担う共通の社会インフラを整備すべきである。その際、これまでリターナブル瓶やイベント等でリユース推進に取り組んできた事業者・団体が築いてきた既存インフラについても、事業者・団体のニーズに応じて、強力に支援すべきである。
- 環境負荷を最小限に抑え、かつ効率的な循環の仕組みを構築するため、リユース容器デザインや衛生管理レベルの共通化、環境負荷低減効果の可視化、消費者が識別しやすい「リユースロゴ」の策定など、各種標準化にも政府が主導して取り組むべきである。
(注1)リユースの仕組みは、同じ用途で容器を繰り返し使用するための仕組みである。エレンマッカーサー財団が整理する4つのリユースモデル(家庭で補充する方式、店舗等で補充する方式、家庭から使用済み容器を回収する方式、店舗等で使用済み容器を返却する方式)が代表的である。
減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク メンバー団体(五⼗⾳順)
特定非営利活動法人 OWS
国際環境NGOグリーンピース・ジャパン
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)
一般社団法人JEAN
全国川ごみネットワーク
特定非営利活動法人 ダイオキシン環境ホルモン対策国民会議
一般財団法人 地球・人間環境フォーラム
公益財団法⼈⽇本⾃然保護協会
公益財団法⼈⽇本野⿃の会
特定非営利活動法人 日本消費者連盟
NPO法人パートナーシップオフィス
特定非営利活動法人プラスチックフリージャパン
容器包装の3Rを進める全国ネットワーク
⼀般社団法⼈リアル・コンサベーション
賛同団体(五十音順)
特定非営利活動法人アーキペラゴ
アースレンジャー地球環境アカデミー
国際環境青年NGO A SEED JAPAN(プラ見直しラボ)
SDGs木曽川地産地消を楽しむ会
認定NPO法人環境市民
環境問題を考える会
環境を考える相模原の会
木曽川河畔の文化的景観を守る会
木曽川中流域を愛する会
KISOGAWA RINRI PROJECT
小山の環境を考える市民の会
環境・国際研究会
さがみはら環境問題研究会
22世紀奈佐の浜プロジェクト委員会
特定非営利活動法人プロジェクト保津川
減らそうプラスチックの会
山梨マイクロプラスチック削減プロジェクト
リユース食器ネットワーク
ワーカーズ・ごみ問題研究会
*NGO共同提言の全文PDFはこちらからご覧になれます。



