総合資源エネルギー調査会省エネルギー部会中間取りまとめ(案)に対する意見
2012/02/24
意見書 2012年2月24日
経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部
省エネルギー対策課 パブリックコメント担当 御中
WWFジャパン(公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン)
気候変動・エネルギーグループ(担当:山岸 尚之)
該当箇所(どの部分についての意見か、該当箇所が分かるように明記して下さい。)
p. 17、「(4)我が国の省エネ目標の設定について:基本問題委員会において、今後の省エネについては明確な目標を立てて取り組むべきとの意見があった。」
・意見内容
省エネルギーに関する全体目標を中長期(2020年〜2050年)について掲げるべきである。目標の形式としては、原単位(最終エネルギー消費/GDP等)だけでなく、総量(最終エネルギー消費そのもの)についても掲げるべきである。
たとえば、WWFジャパンが2011年7月に発表した『脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案 <中間報告 省エネルギー>』での計算に沿えば、以下のようになる。このような数字を目標として採用することも検討するべきである。
2020 | 2030 | 2040 | 2050 | |
---|---|---|---|---|
最終エネルギー消費総量 (2008年比) | -20%(-20.5%) | -30% (-32.7%) | -40% (-41.7%) | -50% (-50.6%) |
最終エネルギー消費/GDP (2008年比; GDPは2000年価格で計算) | -30% (-34.1%) | -50% (-49.9%) | -60% (-59.9%) | -70% (-68.4%) |
- ※括弧内はWWFシナリオでの計算数値。原単位についてはGDP成長率の想定によって大幅に変わることに留意すべき。
・理由(可能であれば、根拠となる出典等を添付又は併記して下さい。)
WWFジャパンの『脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案 <中間報告 省エネルギー>』は、以下のURLから閲覧・ダウンロードできる。
以下は、同シナリオにおける2050年までの最終エネルギー消費のイメージ図である。
- ※同シナリオでは、BAUとして日本エネルギー経済研究所の「アジア/世界エネルギーアウトルック2010」のレファレンスケースを使用している。
該当箇所(どの部分についての意見か、該当箇所が分かるように明記して下さい。)
p. 13、「(3)住宅・建築物の省エネ基準適合義務化について」、2つ目の○ 「○このため、2020 年までに全ての新築住宅・建築物について省エネルギー基準への適合を段階的に義務化することとし、2020 年までの具体的な工程(対象、時期、水準)を省エネ法改正にあわせて明確化する。」
・意見内容
新築住宅・建築物についての省エネルギー基準の義務化は、2020年よりも早期に、遅くとも2015年までに行うべきである。また、現行の平成11年基準は、少なくとも欧州基準並に強化されるべきである。
該当箇所以降の本文において、「仮に平成11 年基準を2020 年に義務化するとしても、国際水準には追いつくことができない」との認識が示されている通り、2020年までの「段階的」な義務化では、現状の遅れを取り戻すことはできない。
また、国際的な基準に追いつけないということより重要な点として、このような緩やかな義務化では、中長期での省エネルギー全体の遅れにつながり、それがひいてはCO2排出量削減の遅れにもつながるということである。結果として、2020年や2050年へ向けての野心的な温室効果ガス排出量削減目標の選択肢を狭めることになる。
・理由(可能であれば、根拠となる出典等を添付又は併記して下さい。)
WWFジャパンの『脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案 <中間報告 省エネルギー>』では、2050年までに新築・既存の住宅・建築物全てが、少なくとも平成11年基準を満たすと想定している。
平成11年基準は本来強化されるべきであるが、その前提をおいただけでも、住宅部門については、少なくとも暖房総需要を2010年時点の36%(つまり64%減)にすることができる。
該当箇所(どの部分についての意見か、該当箇所が分かるように明記して下さい。)
p. 15、「なお、化学産業や鉄鋼産業などのエネルギー多消費産業は、これまでも省エネ努力を続けてきており、既に世界最高のエネルギー水準に達している。これまで相当の投資をしている上に、さらに国際競争に打ち勝っていかなければならない状況である。」
・意見内容
エネルギー多消費産業が1970年代のオイルショック以降に大きな省エネ努力をしてきたことを認めるとしても、今後も更なる努力が必要であることを明記するべきである。
また、エネルギー多消費産業を含む産業部門全体について、「工場のトップランナー規制」もしくは「一定規模以上の工場が満たすべき性能基準」を設定するべきである。
・理由(可能であれば、根拠となる出典等を添付又は併記して下さい。)
1970年代のオイルショック以降の努力によって、エネルギー多消費産業がエネルギー効率水準を高めてきたことは事実である。しかし、以下の近年の2つの傾向も考慮しなければならない。1)一部の産業では、新興国における工場の新設が多いことから、最新鋭の高効率設備は新興国に建設されているケースも多いこと、2)効率の経年変化を見れば、産業全体としての効率改善の度合いは90年代以降鈍っており、逆に他国に追いつかれる傾向にあること。これらの傾向を踏まえれば、今後10〜20年後に、日本が現在の地位を保っていると想定するのは危険であり、引き続き省エネルギーが重要な分野であるとするならば、今、規制を入れなければならない。
本来であれば、排出量取引制度や炭素税の導入によって、省エネルギーやCO2削減を促すべきであるが、もしそれが現時点では難しいとするならば、せめて工場ごとのトップランナー規制や、工場が満たすべき性能基準を業種ごとに設定するべきである。
該当箇所(どの部分についての意見か、該当箇所が分かるように明記して下さい。)
p. 19、「(3)規制の在り方の見直しについて」
・意見内容
定期報告の内容の簡素化は、今後よりきめ細やかな省エネ対策を講じることが必要になってくる流れに逆行するものであり、行うべきではない。特に、現状の事業「所」毎のエネルギー消費量等の報告を事業「者」“のみ”に変更するのは改悪である。
・理由(可能であれば、根拠となる出典等を添付又は併記して下さい。)
現行の省エネルギー法で集めているエネルギー消費量のデータは、今後の省エネルギー対策を強化していくための基礎データとしても極めて重要な材料である。その情報を体系的に収集する仕組みを、今この時点で停止することには全く合理性がない。