企業との地球温暖化防止


地球温暖化の原因となっている、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスは、さまざまな企業活動によっても多く排出されています。WWFは、温暖化対策に意欲的に取り組んでいる世界の企業と協力して、産業界における着実な排出削減を進める活動を行なっています。

企業がになう温暖化対策の重要性

CO2などの温室効果ガスは、企業活動のさまざまな側面から排出されています。

日本でも現在、国内のCO2排出量のうち、約8割が企業・公共部門から排出されています。

このことは、企業が地球温暖化の防止に大きな責任を負っているというだけでなく、温暖化問題の解決において、鍵となる役割を果たすことができる可能性を示しています。

パリ協定が発効した今、温暖化問題への取り組みは、企業にとってもプラスになる側面を多く含んでいます。

CO2の削減は、そのままその企業が使用しているエネルギーやそのためのコストを、どう効率化するか、という課題でもあるためです。

世界の企業の間では、企業活動を支えるエネルギーの在り方を見直すことで、新たなビジネスチャンスにつなげてゆく試みが進んでいます。

ライフサイクル全体を通じたCO2の削減

企業が自社の温暖化対策の中で、最初に取り組むべきは、製品の生産や加工過程など、自社の事業活動(GHGプロトコル(※)におけるScope 1および2)に伴う排出の削減です。

そして、Scope 1および2における取り組みが一定のレベルに達した時点で、「自社が関わるけれども、自社の事業範囲ではない部分」、つまり、自社の事業範囲の上流および下流(Scope 3)から生じる排出量を把握し、ライフサイクルを通じた削減活動へとつなげていくことが重要となります。

  • ※GHGプロトコルとは、WRI(World Resources Institute)とWBCSD(World Business Council for Sustainable Development)が開発した、企業および組織における温室効果ガスの算定・報告・検証に関わる国際スタンダード

ビジネスの事業範囲と関係する範囲

たとえば、Aという製品を製造している製造事業者であれば、通常、その製造を行っている工場や、それに直接かかわる自社の作業をしている自社関連工場・オフィスなどが自社の範囲=「Scope 1および2」になります。

しかし、そのAという製品を作るためには、原材料や部品が必要ですし、できた後には、それを出荷・販売することになります。

それらのプロセスは、自社だけで完結しているとは限りません。他社から原材料を買ったり、製品の販売は卸売・小売業者が担うケースが一般的であるためです。

そうした「原材料を作り、運ぶ」過程や「製品を販売する/使われる」過程からの排出量も、自社が「関連する」排出量であることは確かです。これが、Scope 3です。

このように、自社で製造した製品を輸送・配送する際に生じる排出や、調達した部品がサプライヤーの工場で製造される際に生じる排出などがScope 3の事例として挙げられます。

また、販売した製品がユーザーによって使用される際に生じる排出も概して規模が大きく、省エネ製品の普及などを通じ、その部分からの排出を減らす努力は社会全体からの排出削減にも貢献します。

ただし、こうしたScope 3の排出量は、算定に不確実性を伴う部分があることに加え、削減できた場合であっても、自社のみの貢献と言い切ることが難しい面もあります。

したがって、企業の温暖化対策は、まずは自社の事業範囲内で、省エネルギーや再生可能エネルギーの活用を通じて排出量を着実に減らしつつ、その上で、自社が「関係する」範囲での排出量の削減(サプライチェーンや機器を通じた削減)にも力を注ぐことが重要です。

コスト低減とブランドの向上

こうした積極的な省エネの推進や再生可能エネルギーの活用などを通じた一連の取り組みは、企業にとって、エネルギーコストの低減にもつながるものです。

また、新たに省エネ製品の開発・普及など、ライフサイクルを通じた削減活動へと発展させることにより、社会的な責任を果たすとともに、環境配慮企業としてブランド力を高めることにも貢献するといえるでしょう。

関連情報

 

Science Based Targetsイニシアティブ(SBTi)

SBTiは、WWF、CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)、世界資源研究所(WRI)、国連グローバル・コンパクトによる共同イニシアティブです。企業に対し、気候変動による世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べ、最大でも1.5度に抑えるという目標に向けて、科学的知見と整合した削減目標を設定することを推進しています。たとえば2050年といった長期的視点に基づいた、企業の温室効果ガスの削減に関するビジョンや目標を設定することを重視・推奨しています。また、この目標設定を支援するためのガイダンスやツールなども策定。すでに世界で約300の企業が、SBTiのもとで意欲的な削減目標を設定することにコミットしています。

企業の温暖化対策ランキング

政府レベルでの温暖化対策に停滞感が見られる中、WWFでは企業の取り組みを後押しするため、「企業の温暖化対策ランキング」プロジェクトを2014年から実施しています。WWFジャパンの定めた基準をもとに、各企業の発行する環境報告書やCSR報告書などで公開されている情報に基づき、各社の取り組みレベルを点数化し、ランキングとともに報告書として発行しています。

評価に用いる指標においては、取り組みの実効性を最大限に重視しています。たとえば、「2 度」目標と整合した長期的な視点の下で取り組みを進めているか、ライフサイクル全体を見据えた取り組みを行っているか、再生可能エネルギーの活用に積極的であるか、といった視点です。報告書は、業種別に発行しており、これまでに『電気機器』、『輸送用機器』、『食料品』などの業種について発表しています。

各業界の報告書はこちら

クライメート・セイバーズ・プログラム

WWFでは、温暖化防止に積極的な姿勢を示している世界の企業と協力して、温室効果ガスの総量削減目標の達成と、事業活動の発展とを両立させるクライメート・セイバーズ・プログラムを展開し、産業界全体にもポジティブな影響を与えています。メンバー企業は、パリ協定が目指す「世界の平均気温の上昇を1.5度に抑える」という目標と整合した削減目標を掲げます。

プログラムが発足した1999年から2011年までに、メンバー企業による排出抑制量はCO2換算で累積1億トンとなりました。

カーボンオフセットとゴールド・スタンダード

京都議定書の第1約束期間では、多くの企業が削減目標達成のための手段として排出クレジットを購入し「カーボンオフセット」を行なうなど、企業による排出クレジットの利用が定着してきました。

社会的責任を果たしていることをアピールするため、途上国などにおいて行なわれるCO2の排出削減プロジェクトに自ら投資し、その削減分によってオフセットを行うケースも見られます。

意欲的な企業の中には、自らの排出削減を徹底した上で、なお残った排出を削減クレジットを購入してオフセット(相殺)することで、実質的な排出をゼロにする「カーボンニュートラル」を行なっているケースもあります。

WWFは、企業が排出をオフセットする際には、真の排出削減をもたらし、プロジェクト実施国における持続可能な開発に貢献するプロジェクトから創出された削減クレジットを選ぶことが不可欠であると考えています。

そのための基準として、「ゴールド・スタンダード」という認証基準に合致した削減クレジットの利用を推奨しています。

WindMade(ウィンドメイド)

近年、再生可能エネルギーを積極的に活用する企業が増えています。一方で、再生可能エネルギーを用いてつくられた製品を望む消費者も増えています。

しかし、消費者にとっては、どの企業がより積極的に再生可能エネルギーを活用しているかが分かり難い状況になっています。「WindMade」は、そのような企業と消費者の橋渡し役となるために生まれた認証制度です。

企業は、「WindMade」の認証ラベルを取得することにより、持続可能な再生可能エネルギーを積極的に調達している証とすることができ、消費者は認証を取得した企業の製品やサービスを選択することが可能となります。この両面を促進することで、再生可能エネルギーの普及拡大を図り、温暖化防止に貢献することが「WindMade」の目的です。

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