自然エネルギー100%は割に合う!「自然エネシナリオ・費用算定編」発表


2013年3月28日、WWFジャパンは、レポート『脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案<費用算定編>』の発表会を東京・有楽町の「東京国際フォーラム」にて開催しました。2050年までに日本で自然エネルギー100%を実現するために必要となる費用を試算したものです。その結果、2030年ごろには、節約されるエネルギー費用のほうが大きくなり、2050年には投資額の約半分のリターンが期待できることが示されました。

自然エネルギー100%は「割に合う」

WWFは、地球温暖化を防ぐ活動の一つとして、自然エネルギーの普及に取り組んでいます。大幅な省エネルギーを進めてエネルギーの無駄をなくし、原子力発電をできるだけ早期に廃止し、それでも必要となるエネルギーは自然エネルギーでまかなっていく、というのが、WWFの基本的な方向性です。

WWFジャパンが提案するエネルギーシナリオ。2050年までに省エネによってエネルギー消費量を半減させ、必要なエネルギーは自然エネルギー100%でまかなっていくという方向性を示している。

しかし、残念ながら日本における自然エネルギーの導入はまだ緒についたばかりです。そこでWWFジャパンは、システム技術研究所に委託研究を行ない、2011年7月に『脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案<第一部・省エネルギー>』を発表。現在すでにある省エネ技術を急速に普及させれば、2050年までには、日本のエネルギー需要を半減させられることを示しました。

WWFシナリオでは、LED照明への切り替え、電気自動車や燃料電池車への移行など、代表的な技術を急速に普及させていくことで、2050年には生活の質を落とさずに約50%の削減が可能であることを示している。

また、同年11月には『第二部・100%自然エネルギー』編を発表し、2050年には、日本のエネルギー需要のほぼ100%を、自然エネルギーでまかなえる可能性があること、それは「我慢の省エネ」を強いるような耐乏生活ではなく、快適で安全な生活であることを示しています。

今回発表した報告書は第三部にあたるもので、「2050年までに自然エネルギー100%」を実現するために必要となる費用が試算されています。具体的には、省エネルギーを進めるためにかかる費用(設備投資+運転費用)を、産業部門、家庭部門、業務部門、運輸部門について算定。また、自然エネルギーを拡大していった際にかかる費用(設備投資+運転費用)を、太陽光発電、風力発電(陸上および洋上)、地熱発電、水力発電、太陽熱、バイオマスについて算定しました。

その結果、省エネルギーおよび自然エネルギーに関して必要な追加的投資(=設備投資)(*)は、2010年から2050年までの40年間の累計で442兆円となるものの、結果的に節約されるエネルギー費用(=運転費用)が673兆円となるため、正味では232兆円が利益として返ってくることがわかりました。

つまり、省エネルギーと自然エネルギーへの投資の総費用は、年間GDPの1.6%程度に収まること、そして、省エネルギーと自然エネルギーの普及が進めば、エネルギーにかかる費用が削減されていくため、2030年ごろには、節約できる金額が、投資費用を上回るようになり、2050年には、正味では大きな便益となることなどが示されたといえます。

  • ※本レポートの試算では、エネルギー・経済がこのままのなりゆきのままでいくシナリオ(BAUシナリオ)と比較して、どれくらい追加的な費用が必要かを試算している。

省エネルギーと自然エネルギーの投資の総費用は、GDP比で1.6%程度におさまる。省エネルギーと自然エネルギーの普及によってエネルギー費用が削減され、2030年ごろには節約額が投資費用を上回り、2050年ごろには正味では大きな便益となる。

自然エネルギー普及の最大の課題は「費用」ではない

この<費用算定>編の発表会には、企業、マスコミ、大学などから約90名の方々がご参加くださり、会場はほぼ満席となりました。第一部<省エネルギー>編、第二部<100%自然エネルギー>編に続き、今回の<費用算定>編の研究を手がけたシステム技術研究所の槌屋治紀所長は、会場に向けて次のようなメッセージを発信していました。

「自然エネルギー100%というと、何か絵空事のように思う人もいるかもしれません。しかし、世界では、もう自然エネルギー中心で暮らしていく可能性を示す研究結果があちこちで出始めていることを見ても、決して非現実的なことではないのです。今までは、地下から石油や石炭、天然ガス、核物質などを掘り出す「エネルギー狩猟型文明」でした。でも、人類は、食料に関しては狩猟採集の生活から農耕中心の生活へとシフトしました。エネルギーについても、自然エネルギーを永続的に利用できるようにする「エネルギー耕作型文明」への転換が起きているのです」。

また、今回の<費用算定>編へのコメンテーターとして参加された地球環境戦略研究機関の西岡秀三研究顧問は、「将来、地球の平均気温の上昇幅を何度に抑えるにせよ、これまで上昇しつづけてきた二酸化炭素(CO2)の排出量を、今後は下げていかなければならないという大転換の時期に私たちはいます。ならば発想も転換して、今こうだから将来はこうなるだろう、ではなくて、将来こうするには何が課題なのか、と考えるようになるべきです」と話しました。

WWFジャパンの山岸尚之は、「省エネルギーに投資すれば、エネルギー消費は減っていきますから、将来的にエネルギーコストが下がるのは、ある意味で当たり前だといえます。ではなぜそれが「空論」と言われてしまうのか。省エネルギーや自然エネルギーへの投資が進まないのは、費用の問題ではなく、他の社会的・制度的な障害があることを、今回の報告書は示していると思います。短期的な視点ではなく、長期的な視点でエネルギーを考え、必要な投資が迅速に行なわれるような政策や仕組みの導入を、WWFとして働きかけていきたい」と述べました。

WWFジャパンでは、今回、発表したレポートを、なぜ将来的に大きな便益を生む可能性のある省エネルギーや自然エネルギーへの投資が進まないのか、日本の社会が抱えている課題を考えるツールとして提示していくと同時に、「自然エネルギー100%」の実現のために必要な提言を、これからも続けていきます。

脱炭素社会に向けたエネルギーシナリオ提案

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