「幻のサイを絶滅から守ろう!」プロジェクト報告会を行いました
2015/04/09
2015年3月14日、東京・モンベル渋谷店にて、「"幻のサイ"を絶滅から守ろう!」緊急プロジェクトの報告会を行いました。2013年、ボルネオ島東カリマンタンで20年ぶりに生存が確認されたスマトラサイの保護活動に携わるWWFインドネシアスタッフが来日し、73名のWWFジャパンサポーターおよび一般の方々を迎えて、現地の様子を直接ご紹介しました。
インドネシアより担当者が来日!
2014年10月末よりWWFジャパンがご支援を呼びかけている「幻のサイを絶滅から守ろう!」緊急プロジェクト。
世界有数の熱帯林に覆われたボルネオ島のインドネシア領で、2013年、この地域ではすでに絶滅したと考えられていた スマトラサイの生存が20年ぶりに確認されました。
一度は"幻"とされたスマトラサイを密猟から守るため、 WWFジャパンは緊急プロジェクトを開始。
これまで、延べ1,800名から総額1,000万円を超えるご支援をお寄せいただきました。
そしてこの度、WWFインドネシアの担当マネージャー、アリフ・ダタ・クスマの来日が実現!
WWFジャパンの担当者とともに、ボルネオ島の現場でいま、皆さまのご支援によってどんな活動が進んでいるのか、密猟の発生はくいとめられているのか、直接ご報告する機会となりました。
当初、定員を50名としていましたが、告知開始からわずか2日で満員の反響。急きょ、株式会社モンベル様のご厚意により広い会場をご提供いただき、73名のサポーターおよび一般の方々にご参加いただきました。
この地域では姿を消したとされていた「幻のサイ」を20年ぶりに捉えた貴重な映像。

モンベル渋谷店サロンは満席となりました
「幻のサイ」を絶滅から守るために
ダタはまず、「日本のサポーターの皆さんに直接お会いできて本当に嬉しいです。ボルネオ島から遠く離れた皆さまが、スマトラサイやサイの生息する森のことを考えてくださることに心から感謝します。」と述べました。
続いて写真を交えながら、現地での活動の様子をご紹介しました。
20年もの間、人目に触れることなくスマトラサイが生息していた地は、まさに密林。
当然、アクセスも簡単にはいかず、森にベースキャンプを設置し、数週間がかりで調査やパトロールを続ける日々です。
調査の対象となる森は、なんと東京都の半分以上の広さ。広大な熱帯林をひたすら歩き、足跡や食痕などのわずかな痕跡を頼りに、スマトラサイの行動範囲を特定していきます。
調査の途中で、WWFのチームではない誰かが、過去に使用していたベースキャンプの残骸に出会うこともあったそうです。彼によればこれは、ハンターのものだとのこと。
ただし、ハンターといってもスマトラサイを狙っているわけではなく、燃やすといい香りのする木(沈香と呼ばれます)を採取するグループのもの。

来日したWWFインドネシアのダタ(右)と、WWFジャパンの橋本務太(左)

調査の様子。雨季のため、
自分たちで即席いかだをくんで目的地を目指す
とはいえ、スマトラサイの棲む森に入り込んで行われている人々の活動を把握することは、パトロールをするうえで非常に重要です。
このように、現場を知るインドネシアスタッフならではの話を交えて現地の様子をご説明しました。

長期にわたる調査のなかで、食事は楽しみのひとつ。

沈香を採取するグループが残したベースキャンプの残骸
森林破壊に脅かされるスマトラサイの生息域
WWFジャパンのプロジェクト担当である森林グループ長の橋本務太からは、スマトラサイの生息を脅かす危機のひとつであり、ボルネオ島全体が現在、共通して直面している森林破壊の問題についてご説明しました。
かつて手つかずの原生林が島全体を覆っていたボルネオ島は、過去半世紀のあいだに実に50%もの森が消失したとされます。
原因は、木材伐採や石炭の採掘、あるいは紙や植物油の原料となるアカシアやアブラヤシのプランテーションのための開発など。
森林破壊の勢いは近年も衰えることなく、スマトラサイの生息エリアも例外ではありません。
実際、過去1年半の調査では、企業や地域住民による開発の圧力により、スマトラサイの痕跡が認められる地点が、徐々に森の奥へ移動していることが確認されています。
さらに、現在の生息域は、企業が木材伐採を行なったり、石炭の採掘許可が出ている地域と重なっているという、看過できない状況があります。
こうした現状を受け、来場された皆さまから最も関心が高かったのは、インドネシア政府や現地企業、あるいは地域住民の動向でした。

紙やパーム油の原料となるアカシアやアブラヤシの農園のために、天然林が大規模に皆伐される

石炭採掘のためにも、森が破壊されている
質疑応答では、「インドネシア政府の保護政策はどのようなものか?」「WWFが企業や地域住民に対して行っている対策は?」など、複数のご質問が飛び交いました。
インドネシアでは、多くの森林の所有権は国に帰属し、企業は政府からライセンスとして伐採権や採掘権が与えられるものとされています。
しかし実際は、それぞれの森林では、以前から住んでいた人々による慣習的な利用も行われているため、政府は企業に対し、操業の際には地域住民の同意を得るよう促しています。
WWFはそうした状況下で、企業に対しては持続可能な森の利用を促すとともに、地域住民への配慮を欠かさないよう、働きかけています。
また、地域の人々に対しては、森林伐採以外の代替収入源を提案したり、企業からの補償金に頼らずとも生計がたてられる暮らしづくりを支援していることを、ご説明しました。
寄せられた参加者からのエール
最後に、2014年12月に東京・世田谷区にある二子玉川ライズ・ショッピングセンターで実施されたイベント「WWF絶滅危惧種パネル展」で集まった、メッセージカードの贈呈式が行われました。
これは、インドネシアで保護活動に携わる現地スタッフを応援するため、パネル展に来場したお客さまに、スマトラサイの絵とメッセージを書いていただいたものです。
約100枚のメッセージカードは、WWFジャパンのスタッフと着ぐるみのパンダくんの手で直接ダタに渡されました。心温まるメッセージを寄せてくださった皆さまに、心より御礼申し上げます。
本イベントの参加者からは、次のような感想が寄せられました。
「森の奥深くまで調査に行く一方で、その森林自体が想像以上に縮小していて驚きました。」
「今現在の活動の様子を知ることができ、同時に保護が一筋縄ではいかない時間のかかるものであることもよくわかりました。この機会に感謝しています。」

2014年12月に二子玉川ライズ・ショッピングセンターで行なわれたイベントでメッセージを書く来場者

メッセージ贈呈の様子
「現場の方の話が聞けて、より身近にこの問題を感じられるようになりました」
「現場最前線の活動状況がリアルに伝わってきて、非常に興味深かった」
「サポートしている活動を報告していただけると、支援しがいがあります」
実際にこのプロジェクトにご寄付いただいたという方も多数ご来場いただき、ダイレクトにご報告する機会を喜んでいただけたようでした。また、来場者の15%が学生さんと、若い世代のご参加も目立ちました。質疑応答で積極的にご質問いただいたり、終了後もダタに直接応援の気持ちを伝えたいと、列をつくって話を聞いていらっしゃいました。
ボルネオ島からはるばる来日したダタにとっても、日本のサポーターの皆さまと顔をあわせてお話させていただけたことが、大きな喜びであり、励ましとなったようです。
また会場では、多数の方に募金に協力いただきました。貴重なご支援は、スマトラサイ保護のための活動に、大切に活用させていただきます。
スマトラサイの保護をめぐっては、まだまだ予断を許さない状況が続いています。皆さまからの暖かいエールを胸に、今後も活動にまい進してまいりますので、引き続きの応援をどうぞよろしくお願いいたします。
ご参加いただいた皆さまをはじめ、会場をご提供くださった株式会社モンベル様、メッセージを集めるイベントにご協力いただいた二子玉川ライズ・ショッピングセンター様、記録映像にご協力いただいた株式会社UBrainTV様に改めて御礼申し上げます。ありがとうございました!
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制作協力:UBrainTV