生物多様性国家戦略の閣議決定を受けて、WWFコメント


公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン(東京都港区、会長:末吉竹二郎、以下WWFジャパン)は、政府が「生物多様性国家戦略2023-2030」を閣議決定したことを受け、以下のコメントを発表しました。

参考:「生物多様性国家戦略2023-2030」の閣議決定について(環境省)

WWFジャパン担当者のコメント
より大局的に、より具体的に「ネイチャーポジティブ」を浸透させよ

WWFジャパン自然保護室長(気候エネルギー・海洋水産・生物多様性・金融)山岸 尚之

WWFジャパン
自然保護室長(気候エネルギー・海洋水産・生物多様性・金融)
山岸 尚之

日本政府が、昆明・モントリオール生物多様性枠組採択後、タイムリーに本国家戦略を策定した点、2030年に向けた「ネイチャーポジティブ」を、明確に国家の目標として閣議決定される文書の中で位置づけた点、そして、それに連なる形で、30by30など、個別分野での具体的な数値目標も定める努力がされた点は歓迎したい。

他方で、本国家戦略で定められている15の状態目標および25の行動目標のほとんどが、国内にフォーカスを当てたものであり、日本および日本企業が取引を通じて海外に対して与えている影響・フットプリントに着目した目標が少なく、具体性に乏しい。「日本の」生物多様性国家戦略である以上、足元である日本国内における生物多様性に重点が置かれるのは当然だが、それだけでは日本が持ちうる影響の半分でしかない。

また、WWFはこれまでにも、自然由来のコモディティ森林リスク産品の調達、水産物調達、陸水生態系に関わる産品の調達、さらには希少野生動植物の適正な流通管理について、様々な場面で提言を行ってきた。中でも、企業のサプライチェーンでのトレーサビリティ確保や調達方針の策定などを強く求めてきた。本国家戦略でも関連分野の重要性は言及されているものの、具体的な目標に乏しい。

30by30のような野心的な目標を単なる数字上の達成だけでなく、実質的な生物多様性回復に貢献するものとして達成していくために、今後は環境省の政策としての「ネイチャーポジティブ」だけではなく、より大局的に省庁横断でこの「ネイチャーポジティブ」が達成されるように、国内の開発行為、都市計画、農林水産業、自然由来のコモディティ取引、希少野生動植物の適正な流通管理などのあらゆる面にネイチャーポジティブの概念が反映されていくことを期待したい。

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