【WWFジャパン声明】最後の交渉となるINC-5.2において、野心的な条約を求める大半の国の意見を反映し、条約をまとめることを求める


プラスチック汚染を根絶するための国際条約文書制定に向けた最後の機会となる第5回政府間交渉委員会再開会合 (INC-5.2) が、2025年8月5日から8月14日にかけてスイス・ジュネーブで開催される。

WWFジャパン声明ポイントは以下の通り:

  • 地球上の全ての生命への深刻なリスクとなるプラスチック汚染の解決に向け、最も有害なプラスチック製品と化学物質の国際的な禁止措置、非毒性の循環型経済を実現するための国際的な製品設計要件、開発途上国における効果的な実施を担保する財政的・技術的支援、および条約を継続強化するメカニズムを含む、野心的条約が不可欠となる。
  • 安易に野心を下げた内容で条約に合意してしまえば、問題の解決は極めて困難となり、地球の汚染が悪化し続ける未来へと突き進むことになる。大半を占める国々の意見を反映させた形で野心的な条約文書をまとめるために、多数決を含む利用可能なすべての手続き上の手段を活用すべきである。
  • これまで中間的な立場をとってきた日本のような国が、INC-5.2においてどのように動くのかが条約の方向性を左右する。日本政府には自らの野心を下げて調整役に徹するのではなく、明確に野心的な条約を支持し他国に働きかけていくことを求める。

2024年末にまとめることを目指していた国際プラスチック条約の交渉はINC-5.2へと延期されたが、今も毎日3万トンものプラスチックが海洋に流れ込んでいる。WWFがバーミンガム大学と共同で策定した新たな報告書によると、マイクロプラスチックとナノプラスチック(MnP)およびプラスチック添加剤が、内分泌かく乱やホルモン関連がん(乳がんや精巣がんなど)、生殖機能障害や不妊症、慢性呼吸器疾患など、様々な生物学的影響に関係していることが示されている。そして将来の被害を最小限に抑えるために、たとえ絶対的な科学的確実性が不足していても特定されたリスクに基づき行動を起こすという、予防原則の必要性を指摘している。

WWFは、地球規模のプラスチック汚染に効果的に対処できる野心的な条約とするためには最低限、1.最も有害なプラスチック製品と化学物質の国際的な禁止措置、2.非毒性の循環型経済を実現するための国際的な製品設計要件、3.開発途上国における効果的な実施を確保するための財政的・技術的支援、および4.条約を強化し適応させるためのメカニズム、を条約文書に含める必要があると考えている。そして、既に大半の国がそれを支持している。

また、野心的な条約は各国の状況を踏まえつつ国境を越えた一貫性を推進し、プラスチック汚染に効果的に対処するために最もコストの低い選択肢を提供することから、日本を含む世界300以上の企業を中心とした組織が参加する国際プラスチック条約企業連合からも支持されている。

これまでの交渉会合では、全会一致による合意を目指したが、一部の産油国が義務的措置を無くすなど条約の野心を下げる強硬な主張を繰り返したことで、野心的な条約を求める国々との溝は埋まらなかった。しかし、野心を下げた一部の国の主張を取り入れて問題解決には程遠い内容で条約に合意してしまえば、地球の汚染が悪化し続ける未来へと突き進むことになる。ついてはWWFは、INC-5.2において大半の国が支持する野心的な内容で条約文書をまとめるために、多数決のような利用可能なすべての手続き上の手段を用いることを呼びかけている。

なおこれまで日本政府は、大量消費国・排出国を含むできるだけ多くの国が参加できる条約に合意することを重視し、野心的な条約を目指す国々とは立場を異にしてきた。しかし、野心の低い国にあわせた内容の条約では、プラスチック汚染の解決は先送りされ、日本政府の目指す2040年までの追加的なプラスチック汚染の根絶も不可能となる。日本政府のようにこれまで立場を明らかにしてこなかった国がどのように動くかで条約の方向性が決まると考えられることから、日本政府には、最後の交渉となるINC-5.2 で、明確に野心的な条約を目指す立場へと転換し、他国に働きかけていくことを求める。

以上

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