国際プラスチック条約 INC-4 に向けたユース共同声明


私たちは、日本を拠点に活動するユース団体・学生団体です。プラスチックに汚染された海岸での清掃活動や気候変動対策への提言活動、子どもたちへの環境教育などを通じ、日本を含む世界全体で、大量生産を前提とした社会経済を、必要かつ安全でかつ労働環境にも配慮したもののみを生産してしっかりと循環させるサーキュラーエコノミーへと変えるためのシステムを構築しなければいけないという問題意識を持っています。
プラスチックは、私たちに欠かせない資源であると同時に汚染源でもあります。現状の 対策を続けた場合、2050 年に海洋のプラスチックの量(質量ベース)が、魚の量を超えると試算されています。そして、世界共通の法的拘束力のあるルールを構築することでしか、海洋を含むプラスチックの問題を解決することができないと考えています。野心的な国際条約の下でサーキュラーエコノミーに転換することにより、新たな市場創造と環境負荷の低減とを両立させ、プラスチック汚染のない地球を将来に残すことが不可欠です。
そこで、国際プラスチック条約の第 4 回政府間交渉委員会(INC-4)の開催に際し、日本政府に対し、以下の5つの分野において世界共通の法的拘束力のあるルールを条約に盛り込むことを要請します。

  • プラスチックの総量削減
  • 問題のあるプラスチックの禁止・段階的禁止
  • リユース・リサイクルを可能とし、マイクロプラスチック流出を抑制する製品設計
  • 拡大生産者責任(EPR)
  • 漁具のライフサイクルにおけるゴーストギア対策

<プラスチックの総量削減>
プラスチックの大量生産・大量廃棄を前提としていては、適正に管理されずに流出するプラスチックの量はこれからも増え続けます。そして、生産量を増やすことに伴い、発生する温室効果ガスの量も増え続け、やがては地球温暖化の主要な要因となることが懸念されます。条約にプラスチックの総量を減らすための措置を盛り込むべきです。

<問題のあるプラスチックの禁止・段階的禁止>
流出したプラスチックにより生態系に甚大な影響が出ているだけでなく、マイクロプラスチックが人体に吸収されていることが顕在化し、健康への深刻な影響が懸念されています。使い捨てプラスチックなどの流出や被害のリスクの高いプラスチックを特定し、技術的に可能なものから禁止や段階的禁止を義務付けるべきです。

<リユース・リサイクルを可能とし、マイクロプラスチック発生を抑制する製品設計>
現在世界でリサイクルされるプラスチックは 9%に過ぎず、たとえリサイクルを強化してもそれだけではサーキュラーエコノミーは実現できません。また、製品の廃棄前にも大量のマイクロプラスチックが流出しています。リサイクルに加え、より環境負荷を抑えられるリユースも併せて推進し、さらにマイクロプラスチックの流出を抑えるためには、設計段階での対応(エコデザイン)が最も重要となります。この製品設計を国際的に統一することを、それを推進するための社会インフラ構築と併せて条約に義務として盛り込むべきです。

<拡大生産者責任(EPR)>
生産者が販売後の製品の適切なリユース・リサイクルに責任を持つような制度がなければ、大量生産を前提とした社会経済構造は変わりません。また、高所得国で生産されたプラスチック製品や廃棄物が、低所得国に輸出されることにより、低所得国に過大な廃棄物処理負担や汚染をもたらしています。この不均衡を是正するためにも、生産者企業に相応の負担を求める必要があります。さらにエコデザインをより実効性のあるものにするためにも、条約において各国に EPR の導入を義務付けるべきです。

<漁具のライフサイクルにおけるゴーストギア対策>
流出した漁具はゴーストギアと呼ばれ、長い間海洋生物を捕獲し続ける最も危険なプラスチックとなります。これを防ぐために、漁具の廃棄物の適正管理に加え、循環可能な製品設計や漁具マーキングなど、漁具ライフサイクルを通じた対策を、条約で法的拘束力のある措置とすべきです。

INC で重要な役割を担う日本政府に、私たちは、上記に基づく野心的な国際プラスチック条約を採択させることを要望します。新たな野心的な条約の下で、プラスチックのサーキュラーエコノミーを推進するための、企業や政府、消費者といった各主体の責任の所在の明確化や、消費者を巻き込んでいくための環境教育を広い世代に行なっていくことも期待しています。

国際プラスチック条約 ユース共同声明 参画団体(五十音順)
岐阜大学環境サークル G-amet(読み:ガーメット)
青年環境 NGO Climate Youth Japan
Green Sophia(読み:グリーンソフィア)
特定非営利活動法人 国際ボランティア学生協会(IVUSA)(読み:イビューサ)
実行力ある国際プラスチック条約を求めるユースイニシアチブ(GPTY) (読み:ジプティ)
日本若者協議会(JYC)

事務局
公益財団法人 世界自然保護基金ジャパン(WWF ジャパン)
一般社団法人 グリーンピース・ジャパン

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