わいるどアカデミー+(ぷらす)第2回を実施しました!


WWFをご支援いただいている皆さまに、活動内容や成果を担当職員から直接報告し、またスタッフと会員との交流を目的とした「わいるどアカデミー+(ぷらす)」の第2回目を、2012年11月29日、WWFジャパンの東京事務所で実施しました。「わいるどアカデミー+(ぷらす)」とは、会報の人気コーナー「わいるどアカデミー」にちなむもの。第2回のテーマは、ブータンで始まったばかりの海外支援プロジェクトです。雨模様のあいにくの天候にもかかわらず、30名のサポーターの方にご参加いただきました。

海外オフィスの担当者が講師に!

海外のフィールドであるブータンの自然と、その保全をテーマにした今回の「わいるどアカデミー+(ぷらす)」では、プロジェクトの立ち上げに直接関わったWWFアメリカのシュバッシュ・ロハニを講師に迎え、開催いたしました。

シュバッシュは現在WWFアメリカにスタッフとして所属しますが、カトマンズ出身のネパール人。東京大学に留学し、環境科学の修士号を取得した経歴を持ちます。日本や日本人に大変親近感を持つシュバッシュは、まず最初に日本語で自己紹介。
その後、現地のフィールドの様子、またそこに息づくさまざまな自然や、それを守るための取り組みについて、サポーターの皆さまにお話ししました。

ヒマラヤという地域に親近感や憧れを抱く日本人は少なくないでしょう。ネパール出身のシュバッシュから説明に耳を傾けた参加者の皆さんは、一気にアジア大陸の自然環境に惹き入れられた様子でした。

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WWFアメリカのシュバッシュ・ロハニ

東ヒマラヤ・プログラムの一部としてのブータン

お話はまず、ブータンが位置する東ヒマラヤの自然環境の紹介から始まりました。
WWFアメリカは、ネパール、インド、中国そしてブータンにまたがる広大な東ヒマラヤのランドスケープ(景観)を保全するため、数十年にわたって活動を継続してきました。

現在、ブータンでの活動は、国土の全域が含まれるこの東ヒマラヤ・ランドスケープでの、東ヒマラヤ・プロジェクトの一部として位置付けられています。

といっても、ブータンの国土は、九州とほぼ同じ大きさ。東ヒマラヤの活動がいかに大きなスケールのものかが、改めてわかります。

そして、まだ活動が手薄なエリアが多く残されたブータンでのプロジェクトに対し、2012年、日本からの支援を開始することになりました。

世界の屋根と称されるヒマラヤの南麓には、山岳から草原まで、それぞれまったく特徴の異なる景観が広がります。高地の山岳地帯にはユキヒョウ、低地の草原にはトラやインドサイ、アジアゾウといった多種多様な野生生物が生息。

また、人々の暮らしに目を向けると、チベット仏教を土台とする、独自の祭事や伝統文化が引き継がれています。

しかし、その自然と文化も、気候変動(地球温暖化)のような地球環境問題の影響と、無縁ではありません。むしろ東ヒマラヤは、世界でその影響を真っ先に、直接受けている地域の一つになっています。

過去50年の間に氷河が大きく後退し、一方で氷河湖が形成されてきたこと。そして、その湖が決壊して引き起こす大洪水や、野生生物の密猟などにより、動植物と人々のくらしが脅かされていることについても、シュバッシュは語りました。

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ベンガルトラ

国土の半分以上が保護区!豊かなブータンの自然環境を紹介

続いてシュバッシュは、ブータンで展開しているプロジェクトについてお話ししました。
このプロジェクトは、2012年に日本のサポーターの皆さまから寄付をお寄せいただき、それが活かされることになっているプロジェクトです。

ブータンが国の豊かさを計測するため「国民総幸福度」という新しい指標を採用していることは、若い国王夫妻が2011年に来日したこともあり、日本人にもよく知られるところとなっていますが、その父である前国王のリーダーシップのもと、ブータンでは国土の実に52%が保護地域に指定され、自然環境の保全も、国民が幸福かどうかを判定する基準になっています。

ブータンには、200種の哺乳類、700種以上の鳥類そして7,000種以上の植物が生息していること、そして、あらゆる生物の命を尊重することは仏教の教義からも抵抗なく国民に受け入れられているというシュバッシュの説明に、参加者の皆さんはよく納得された様子でした。

さらに、最近2カ月の間に、調査用の赤外線自動カメラに捉えられたトラやウンピョウ、シカといったさまざまな野生生物の画像も紹介され、目をみはって画像に見入っていました。

ブータンでのプロジェクトは、東ヒマラヤの景観を保全するプロジェクトの経験をもとに、活動を実施してゆきます。たとえば、ネパールのテライ・アークという地域では、劣化した森林を10年で回復させた、という成果を収めていますが、そうした事例も参考にしながら、今後のプロジェクトを進めてゆくのです。

シュバッシュが実際に現場映像を魅せながら説明した、その劇的な森林の変化を確認した参加者の皆さんは、大きくうなずいていました。

さらに、野生生物の保護についても、過去にインドサイが絶滅した国立公園に、インドの他の保護区で捕獲したサイを再導入、繁殖にも成功した事例を引き、そうした取り組みを視野に入れた展開を目指していることを示しました。

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調査用の赤外線自動カメラに捉えられたトラ

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インドサイ

環境保全活動には、常に国をまたがる連携が必須

今回、ブータンでWWFジャパンを通じて日本から支援を行なう活動は、多国間マナス保護区構想(マナス・プロジェクト:TraMCA)と呼ばれるもので、ブータンとインドの国境地域を主要なフィールドとして展開してゆく予定です。

このマナス・プロジェクトの対象地域は、国境にあたるマナス川を越えて広がっていますが、ブータン側とインド側とで、保護区の管理状況がまったく異なることについても、まざまざと示す画像を紹介しました。

総じて、インド側では開発が進んで森が消失する傾向にあり、ブータン側にはまだ豊かな森が多く残されています。しかし、ブータン側の保護管理体制も、いまだ十分な形にはなっていません。

実は、この地域に生息するトラの頭数は、約30年で激減してきました。
しかし、シュバッシュは、ブータンに残る手つかずの自然をトラのすみかとして今後も確保し、インド国境のマナス川流域の湿地や川沿いを、その採食場として保全すれば、2022年までにトラの生息数を2倍に回復することが、現実的に可能であると説明。国を越えた保全活動がいかに重要かを力説しました。

マナス・プロジェクトでは、違法行為を取り締まる監視官(レンジャー)への支援が、特に重要な取り組みになります。日本からの支援も、レンジャーのトレーニングや、彼らが携帯するGPS機器(衛星による位置特定システム)の提供、そしてパトロールをするレンジャーの詰め所(ガードポスト)の整備などに使われる予定です。

また、インド側から保護区内への不法侵入者の取り締まりにも、注力する必要があります。
これは、実際の水際で日々の取り締まりを徹底することはもちろん、関係する国同士の間で、プロジェクト責任者や政府の関係省庁が共通理解を持ち、協力と合意を進めてゆかなければ、解決が難しい問題です。

そこで、こうした国際間のワークショップも、マナス・プロジェクトの中で、取り組まれてゆく計画になっています。 

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ブータン側とインド側とで、保護区の管理状況

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手つかずの自然が残るマナス

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違法行為を取り締まる監視官(レンジャー)

ぜひ継続的な支援を!参加者からの声

今回ご紹介したブータンでのプロジェクトは、一部スタートしているものの、実際にはその大部分がこれから始まろうとしている新しいプロジェクトです。

そして、第2回「わいるどアカデミー+(ぷらす)」にご参加くださった皆さんには、そのプロジェクトの構想について、いち早く説明をお聞きいただくことになりました。

現地からスタッフを迎えての説明会になったということもあり、現地での取り締まり活動の具体的な方法についてご質問をいただいたり、また、実際にご自身が支援したプロジェクトについて、寄付金の使い途がわかって嬉しかったという声、ぜひ継続的な支援を望む、といった声も聞かれました。

さらに、会場で販売した、マナス・プロジェクトへの寄付付き「ウンピョウマグカップ」についても、当日11個ものマグカップを、ご購入いただいたほか、13,000円を超える募金もいただき、ブータンの環境保全を願う皆さまの温かい思いを、改めて知ることができました。

今後の取り組みの中で、皆さまの思いにしっかりと応えられるように、WWFも国内外を問わず、スタッフが力を合わせて、活動を進めてゆきます。

年末にさしかかろうというお忙しい中、第2回「わいるどアカデミー+(ぷらす)」にご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。

事務局では、皆さまにお寄せいただいたご意見ももとに、2013年も「わいるどアカデミー+(ぷらす)」の実施を検討してゆきます。

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