ブータン南麓・奇跡の谷 会員ツアーに行ってきました!


2012年に始まり、多くの日本のサポーターの皆さまにも支援いただいている、ヒマラヤのふもとブータンでのTraMCA(国境を越えたマナス保全地域)プロジェクト。その現地を訪れるWWFジャパン会員ツアーを、2014年2月21日~3月2日に実施しました。これは、ご支援いただいているサポーターの皆さまに、実際に会費や寄付金が役立てられている現場を見ていただくと共に、今後のエコツアーの発展に役立つ知見をプロジェクトにもたらすための企画として実施されました。

往路 北の玄関口・パロから一気に南下

2014年2月21日深夜、ツアー参加者14名が羽田空港に集合しました。いずれも、日本国内でWWFの活動をご支援くださっている、WWFサポーターの皆さんです。タイ・バンコクでの乗り継ぎを経て22日、ブータンのパロ国際空港に到着しました。

パロの標高は2,250m、かなりの高度ですが、大変な寒さに見舞われていた日本と比較すると晴天で風もなく、暖かいとさえいえる気候です。

この空港から約2時間をかけ首都ティンプーに到着した一行は、まず、ブータン国立動物園に向かいました。

ヒマラヤに生息する、さまざまな哺乳類が飼育されているこの動物園の目玉は、何といっても国獣のターキンです。独特な頭部と、ウシとカモシカの中間のようなずんぐりした身体つきのターキンを初めて目にした参加者の皆さんは、しきりにカメラをのぞいては歓声をあげていました。

多くのWWFスタッフの出迎えを受けた一行は、最高責任者のデチェン・ドルジより、WWFがブータンで最も長い歴史をもつ環境保全NGOであることや、国土の50%を占める保護区すべての保全に関わっていること、また、まもなく全国的規模でのトラの生息数調査が初めて実施されることなど、具体的な活動の説明を受けました。

WWFブータンが長く信頼された団体であることや、環境保全活動にかける熱意に、皆さん強い感銘を受けたようでした。

翌日早朝、一行はティンプーをバスで出発。冷涼な空気の中、標高3,150mのドチュラ峠に到着し、高山の景観を楽しみました。そして、この峠からロイヤル・マナス国立公園の管理拠点である町ゲレフまで一気に南下、その標高差は約3,000mにものぼりました。

快晴だとヒマラヤ連山も臨める、ドチュラ峠

日本の風景を連想させる段々畑

これからの利用が期待されるエコ・ロッジ

この東ヒマラヤの山麓は、南下するに従い、北部のまばらな針葉樹から、亜熱帯へと、森林はまったく異なる姿を見せるようになります。半日のドライブで冬から初夏の季節を体感した一行は、ブータンの豊かな自然を実感していました。

途中一行は、現地の保全プロジェクトが、エコツアーの拠点にする目的で作ったエコ・ロッジを訪れました。同行したロイヤル・マナス国立公園のマネージャーであるジグミ・ワンチュクは、このエコ・ロッジがアメリカと日本のWWFの支援も受けて建築されたこと、観光収入の25%が地元住民の収益になり、エコツアーが地域住民の安定した生活に貢献することを説明しました。

旅のハイライト ロイヤル・マナス国立公園でゾウ乗りを体験!

2月24日の夕刻、ロイヤル・マナス国立公園に到着した一行は、翌日早朝より、ツアーのハイライトであるゾウ乗りに挑戦しました。

このゾウは、野生のアジアゾウではなく、ゾウ使いが飼い慣らしたゾウたちです。東南アジアではこうしたゾウが、歴史的に農耕や土木事業などで使われてきました。

このロイヤル・マナス国立公園でも、ゾウたちは普段から活躍しています。 その仕事の一つが、密猟や不法侵入を取り締まるためのパトロール。1~数週間をかけ、レンジャーを乗せて保護区を巡回します。 今回は隣接するインド側のマナス国立公園から借りてきたゾウを合わせ、合計7頭のゾウで、約2.5時間のゾウ乗りを体験しました。

小1時間で到着したマナス川は、乾期のため川床が露出しており、トラの足跡がはっきり刻まれていました。

この、ロイヤル・マナス国立公園は、900種の植物や430種の鳥類など、多様な動植物に恵まれた場所です。ゾウ乗り体験中にも鳥類を確認することができ、その豊かさを実感できました。

また、午後には、穏やかなマナス川の流れの中、約1.5時間のラフティングを楽しみました。

勢ぞろいしたゾウパトロール隊

マナス川のカワウソ

こうしたさまざまなアクティビティを試してもらうことも、今後、現地で一般向けのエコツアーのプログラムを形成してゆく上で欠かせない、今回のツアーの役割と貢献の一つです。 マナスでの2日目の夜には、国立公園スタッフによる歓迎会が催されました。

満点の星空の下、キャンプファイヤーで幕を開けた歓迎会では、レンジャーのリーダーであるツェリン・ドルジが、ロイヤル・マナス国立公園の歴史や概要を説明。また、この公園がひろくブータンの北部と南部にまたがるため、生物の多様性に富んでいることを、調査用の自動カメラで捉えた数々の野生生物の画像とともに紹介しました。

次にツアーの一行より、日本のWWFサポーターの方が、「現地のレンジャーの皆さんに」と送ってくださった千羽鶴を贈呈。レンジャーの献身的な活躍に感謝するとともに、安全と健康を祈りました。

続いて、ブータンの正装「ゴ」に身を包んだ7名のレンジャーが、伝統的な踊りを披露。最後には、ツアー参加者も加わった大きな踊りの輪が、キャンプファイヤーをとり囲みました。

初日のWWFブータン事務局の訪問で歓迎を受けた一行は、再びここで、ブータンの皆さんの温かい気持ちに触れることになりました。

マナスから再び北へ

名残惜しいマナスを後に一行は、再びゲレフに向けて出発しました。 途中一行は、ブータンの農業振興に大きな貢献をした日本人、故・西岡京治氏の旧居と、同氏が架けた吊り橋を見学しました。

ツアー参加者の多くが、西岡氏をご存じで、これがきっかけでツアーに参加された方もいらっしゃいます。

日本とブータンの関係作りの端緒を開いたともいえる西岡氏の功績について、ツアーガイドから説明された一行は、感慨深げに見学していました。

水力発電所の開発現場

また、大規模な水力発電所の建設現場も目の当たりにしました。自然に恵まれてはいるものの、経済的にはまだ発展途上にあるブータンには、外貨を獲得する手段が必要です。

その中で、一番の輸出品が、インドを輸出先とした水力発電による電力なのです。今回、ツアーで周辺を往復した新しい発電所は、2016年もしくは2017年に完成予定とのこと。この発電所の工事はまだまだ続きます。

さらに、険しい山肌にへばりつくように作られた道路も、各所で拡張工事が進行中でした。 ウシがのどかに畑を耕作する風景の見られる一方で、社会基盤の大規模な開発工事が進んでいること。

これが今後どのようにブータンの人々のくらしや考え方、自然環境に影響を及ぼすか。多くの参加者が持たれた疑問かもしれません。自然環境にできるだけ負荷を与えない持続可能な発展は多くの国が共通して抱える課題ですが、ここブータンも例外ではありません。

電線のないオグロヅルの村フォブジカ

旅もいよいよ終盤です。 一行はゲレフから再び北上。2月27日は、山あいの村、フォブジカを訪れました。

標高約3,300m、氷河の浸食によって形成されたフォブジカの谷は、オグロヅルの貴重な飛来地です。WWFジャパンも2000~2001年に、オグロヅル調査のための機材提供などを通じて、取り組みを支援した経緯のあるこの村では、オグロヅルの安全のため、電線を地下に敷設しています。

温かな薪ストーブを囲んでのこの日のディナーでは、1989年からフォブジカでのオグロヅル保護を手掛けているRSPN(Royal Society for Protection of the Nature)のサンダより、2013年冬期に飛来したオグロヅル約550羽のうち422羽がフォブジカに飛来していること、人工的な湿地のえさ場を作ることでヒョウなどの捕食者からオグロヅルを守っていることなどを、説明しました。

翌日の早朝、一行は、肌を刺すような寒さの中、オグロヅルの観察に向かいました。平和にえさをついばむオグロヅルをまぢかに見た皆さんは、寒さも忘れ歓声をあげていました。

午後、壮麗なプナカ・ゾン(城)の見学を経て再び首都ティンプーへ。WWFブータンの主催するディナーで最後の交流を行いました。

オグロヅルがすぐそこに

寺寺院と行政機能を兼ねるプナカ・ゾン

思い出深いツアーを終えて

首都ティンプーからロイヤル・マナス国立公園まで、山道を実質6日で往復した今回のツアーは、移動に多くの時間を費やす、ハードな日程で実施されました。

復路では、予告と異なる時間に工事が行なわれていたため道路が閉鎖され、また分乗したバスのうち1台が故障するなど、思わぬ事態に直面しましたが、大事には至りませんでした。

最後まで明るくエネルギッシュな参加者のご協力と、WWFブータンおよびロイヤルマナス国立公園のレンジャーの温かい歓待で、良い思い出の残るものになりました。 ご参加いただいた方のコメントを、抜粋してお伝えします。

国立公園でのキャンプファイヤー

WWFの保護活動の現場をみることができ、ブータンの自然や社会に触れることができました。スタッフのみなさんの見えないところでのご努力のおかげと思います。自分自身の専門分野でブータンとどのように関わっていけるか、自分なりに考えたいと思います。

WWFの活動、支援がどのようにされているのか、現地を視察し、自分の肌で感じることはとても重要なことだと思います。これからもぜひエコツアーを企画してください

参加者の貴重な意見もふまえてWWFブータンは、今後、現地住民の生活の安定に貢献できるような、エコツアーのプログラムを継続的に実施してゆくための検討に入ります。

ロイヤル・マナス国立公園での取り組みはここからが本番と言ってもよいでしょう。WWFジャパンとWWFブータンは、これからも多くのサポーターとともに、豊かな生物多様性を誇るロイヤル・マナス国立公園を中心とするTraMCAプロジェクトを支えてゆきます。

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