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森林保全と持続可能な紙利用

この記事のポイント
オフィスで使われるコピー用紙、学びに欠かせない本やノート、家庭でも必需品のティッシュにトイレットペーパー。近年では、プラスチックの代替品としても注目され、ビジネスや暮らしに欠かせない多種多様な紙製品は、「使わない日はない」といっても過言ではありません。しかし、紙はそもそも木の繊維からつくられるもの。世界的には、長年にわたり紙生産が森林破壊の主要因の一つとなっている地域もあります。WWFは、日常生活に不可欠な紙製品の生産が、持続可能性に十分配慮したかたちで生産され、またできる限り環境負荷の少ない消費のあり方が普及するよう取り組んでいます。

世界3位の紙生産国、日本 紙はどこからくる?

日本の紙生産量は、中国・米国についで世界第3位。国民一人当たりの消費量も、年間201kgと世界平均56kgを大きく上回ります。

1位の中国は、国ごとの生産量でこそ2位の米国を大きく上回り世界のトップとなっていますが、国民一人当たりの消費量は約80kgと日本の半分以下です。

暮らしを支える大量の紙製品。その原料はどこから来ているのでしょうか。

まずは古紙、つまりいったん使った紙のリサイクルです。

早くから、日本では使い終わった紙の回収、再利用に取り組み、古紙回収率は約80%、古紙利用率も65%を超え、まさに世界トップクラスにあります。ただし古紙も繊維の劣化などの理由で永遠にリサイクルし続けることは難しく、さらに古紙ももとをたどれば、最初の原料は木です。

次がバージンパルプとも呼ばれる木からの原料です。

日本国内で生産される紙の原料となる木質チップの7割以上が、ベトナムやオーストラリア、南米など海外の森林資源に由来し、これに加え、原料ではなく紙製品として輸入されるものも多くあります。

世界的な法規制の強化や製紙関連業界の取り組みにより、持続可能性に配慮した森林管理が拡大する動きもある一方で、依然として紙の原料となる植林木のプランテーション(大規模植林地)造成のための森林破壊やそこに暮らす住民との社会紛争が問題視される地域もあります。

この意味では、プラスチックの代替品としても注目される紙が、必ずしも地球環境に優しいとは言い切れません。

ウッドチップと呼ばれる製紙原料。
© WWF-US / Zachary Bako

ウッドチップと呼ばれる製紙原料。

世界トップクラスの古紙回収率の日本。ただし、古紙も永遠にリサイクルが可能なわけではなく、一定量のバージンパルプの利用も必要となる。<br><br>
© WWF-US / Zachary Bako

世界トップクラスの古紙回収率の日本。ただし、古紙も永遠にリサイクルが可能なわけではなく、一定量のバージンパルプの利用も必要となる。

「この紙は植林木でつくりました」はエコ?

紙製品や紙パッケージなどで「この紙は植林木でつくりました」そんな表示のある紙製品を見かけることもあります。

この表現に、自然の森の木を切って使うよりは環境に優しいというイメージを持つ人もいるでしょう。

ところが、日本に多くの紙製品を輸出する国のひとつ、インドネシアでは、長年にわたり、紙の原料となる木を「植林するために、豊かな熱帯の森が広く失われてきました。

こうした地域では、今では絶滅危惧種となってしまったトラやゾウに象徴される森の生態系が損なわれただけでなく、先住民族や地域住民の権利侵害も報告されています。

2020年に発表された国連食糧農業機関(FAO)によれば、2015年から2020年の間に消失した森林は1000万ヘクタール、これは東京都の約45倍もの広さです。この一方で、植林や自然再生により増加した森林があることも報告されています。

しかし産業用に植林された人工林は、特に自然の森との比較では大きく環境が異なり、また一般的に消失した森林とそこに存在した生態系をもとの状態に戻すには長い年月がかかります。こうした理由から、安易に森林の減少面積と増加面積を相殺することは、本来直視すべき森林減少の現実を過少に評価することにつながりかねません。

また森林が失われる要因は地域によりさまざま異なりますが、製紙原料の生産がその要因の一つとなっている地域があることも事実であり、日本企業や日本の消費とも無関係ではありません。

2019年に、日本に輸入されたコピー用紙の63%は、このような問題が起きているインドネシア産でした。
材料を輸入して日本国内で製造された紙の分も含めると、インドネシア由来のコピー用紙の割合は23%となり、市場全体では4枚から5枚に1枚がインドネシア産ということになります。
またティッシュやトイレットペーパー類でも、輸入量の24%がインドネシア産。さらにインドネシアの最大の木材輸出国である、中国から日本への輸入比率は61%で、近年増加の傾向にあります。

インドネシアの泥炭湿地林。枯れた植物の死骸が、水中で分解されずに泥炭となって蓄積され、その上に森林が形成される(インドネシアスマトラ島)。
©WWF-Indonesia / Koko Yulianto

インドネシアの泥炭湿地林。枯れた植物の死骸が、水中で分解されずに泥炭となって蓄積され、その上に森林が形成される(インドネシアスマトラ島)。

多種多様な木が混在する自然の熱帯林。こうした森は、ゾウやトラ、オランウータンなど今では絶滅危惧種となった豊かな生態系を象徴する動物たちの命をはぐくむ(インドネシア、スマトラ島)。
©WWF-Indonesia

多種多様な木が混在する自然の熱帯林。こうした森は、ゾウやトラ、オランウータンなど今では絶滅危惧種となった豊かな生態系を象徴する動物たちの命をはぐくむ(インドネシア、スマトラ島)。

森を守るマーク FSC®について

このように紙生産をめぐる環境・人権問題が起きているなか、利用する側はどのように環境や社会に配慮してつくられた紙製品かどうかを確認し、選ぶことができるでしょうか。

残念ながら店頭に並ぶ紙製品を見たり触ったりしても、それを区別することはできません。

そこでWWFは、豊かな自然の森や生き物を守りながらも、暮らしを支える森林資源を利用し続けることができるよう、また消費者が環境や人権に配慮されて生産された製品を選択することを可能にするため、森林認証制度、FSC®(Forest Stewardship Council®:森林管理協議会)の普及に取り組んでいます。

1994年に設立されたFSC は、責任ある森林管理を世界に普及させることを目的に設立された国際的な非営利団体です。環境保全の点から見て適切で、社会的な利益にかない、経済的にも継続可能。そんな責任ある森林管理の原則や基準を定めています。

このFSCの原則や基準を満たす森林から生産された木材やリサイクル材など、森林資源の適切な使用につながる原材料のみを使用した製品にFSCマークが付けられます。

つまり消費者はFSCのマークが入った製品を選択することで、世界の森林保全や適切な森林管理に真摯に取り組む事業者を応援できる仕組みになっています。

FSC認証林。FSCでは、環境・社会的価値を調査し、その価値を守りながら森林を管理・経営することが定められている。そのため自然林と植林地がモザイク状に広がって見えることがある。
©Joāo Rabelo/王子ホールディングス

FSC認証林。FSCでは、環境・社会的価値を調査し、その価値を守りながら森林を管理・経営することが定められている。そのため自然林と植林地がモザイク状に広がって見えることがある。

日本で最も大きなFSC認証林を管理している山梨県。国内認証面積の3分の1(14万3千ヘクタール)にもなる県有林から生産された木材はFSC認証林として販売される。国産のFSC認証材を原料にしたストローも誕生した。
©NPO法人マイプラ対策室

日本で最も大きなFSC認証林を管理している山梨県。国内認証面積の3分の1(14万3千ヘクタール)にもなる県有林から生産された木材はFSC認証林として販売される。国産のFSC認証材を原料にしたストローも誕生した。

拡大する持続可能な利用 「当たり前」を目指して

深刻さを増す気候変動の影響から呼ばれるようになった気候危機、持続可能性(サステナビリティ)、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境-Environment、社会-Social、企業統治-Governance)。

今、このような言葉が、環境保全や国際協調の意味合いにとどまらず、企業の経済的な持続可能性や投融資の判断指標としても大きな注目を集めています。

これに伴い、学校などの教育の場を通じて、世界の自然資源や認証制度について学び、関心を持つ若い世代も増えてきました。

森林に限らず、身の回りの物の環境・社会的な負荷についての生産者や消費者の意識は高まり、とりわけ日々のビジネスや暮らしに欠かせない紙の利用を、より良いものにしようと具体的な取組みを見せる企業も増えています。

実際にスーパーやコンビニ、ファストフード店やコーヒーショップなど、一般の消費者が手にする機会の多い紙製品や容器包装、ショッピングバックにおいてFSCの採用は急激に進んでいます。

この動きは、SDGsへの貢献を掲げる2021年に開催予定の大規模な国際イベント、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の調達に向けても加速したと考えられます。

ただ、それでも、日本における消費者のFSCの認知度はまだ十分に高いとは言えません。
2017年にFSCが行なった調査では、国内での認知度は18%に留まっています。

特にFSCのような第三者認証制度の普及が早かった英国やドイツでは80%を超えていることから、日本での普及の余地はまだ大きいといえます。

WWFは今後も、企業や行政などのステークホルダーと協働し、持続可能な消費のあり方が、より「当たり前のこと」として社会に定着するよう活動を継続します。

 

地球から、森がなくなってしまう前に。

森のない世界では、野生動物も人も、暮らしていくことはできません。私たちと一緒に、できることを、今日からはじめてみませんか?

今日、森林破壊を止めるためにできること

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