森林保全と紙利用


コピー用紙、ノート、パンフレット、雑誌、ティッシュにトイレットペーパー... 用途も豊富で、日々のビジネスや暮らしに欠かせない多種多様な紙製品は、多くの人にとって身近で「紙を使わない日はない」そういっても決して過言ではないでしょう。 しかし、紙はそもそも木の繊維を原料につくられるもの。世界には、今も紙を生産するための破壊的な林業で、自然の森がなくなっている地域があります。もし、いつも使っている紙製品が森林破壊に関わっているとしたら? 森を守りながら紙の利用を続けるにはどうすればいいのでしょうか?

日本の紙利用の現状

日本の紙生産量と使用量は、ともに世界第3位。国民一人当たりの紙利用量を見ても、世界平均の4倍です。

しかも、日本が生産している紙は原料となるチップの70%ほどが、海外の森に頼ってつくられています。

多くの紙を使う日本には、世界の環境や地域社会に配慮した紙利用を進める責任があるはずです。

「環境に良い紙」と聞くと再生紙を思い浮かべる人も多いでしょう。早くから、日本では使い終わった紙のリサイクルに取り組み、古紙回収率は約80%、古紙利用率も60%を越え、まさに世界トップクラスにあります。

紙に限らず、大切な資源をリサイクルして繰り返して使うことは、とても大切なことです。

比べて、木を原料とするバージンパルプを使用した紙は、「環境に良くない」と感じる人もいるかもしれません。

ところが、再生紙ももとをたどれば原料は木材であるうえ、紙は何度もリサイクルを繰り返すと繊維がもろくなり強度が低くなるため、リサイクルできる回数には限りがあります。

加えて、紙製品に求める質や用途によっては、再生紙よりもバージンパルプを使用するほうが適するものもあります。

回収した古紙から再生紙をつくるには、いったん古紙に水を加えてドロドロに溶かし、ホチキスの針やクリップなどの異物を取り除き、さらに印刷に使ったインクを落としたり、漂白したりを繰り返してから紙を抄きなおします。

この過程では、再生紙を高品質に仕上げようとすればするほど、たくさんのエネルギーと薬品が必要になります。

こうしたことから、将来にわたってビジネスや暮らしに必要な紙を使い続けるためには、一定量のバージンパルプの利用は必要です。

しかしバージンパルプを使用するのであれば、やはり、森や生き物、そして周辺に暮らす人々に悪影響を与えて生産されたのではなく、きちんとした環境や社会への配慮のもとでつくられていることを確認しなければなりません。

関連サイト

たくさんの緑、多種多様な木が混在している、典型的な熱帯林。生物多様性の宝庫。(インドネシアスマトラ島)

「植林木=環境に配慮」ではない!?

「この紙は植林木でつくりました」そんな表示のある紙製品を見かけることも多くあります。

これならば、なんとなく環境に良いというイメージを持つ人も少なくないのではないでしょうか?

ところが実際には、「植林木」と呼ばれる紙をつくるための木を植えるために自然の森を破壊し、野生生物や地域の人々の暮らしを脅かしているケースもあります。

日本は、オーストラリアや南米など世界中から紙をつくるための木の原料や、コピー用紙などの紙製品を輸入していますが、日本に多くの紙製品を輸出する国のひとつがインドネシアです。

日本に輸入されるコピー用紙の約80%がインドネシアから輸入されています。

しかし、インドネシアでは1980年代から紙をつくるために自然の森が破壊されたり、もしくは紙をつくるための植林木を植えるために、広大な面積の自然の森が破壊されたりする問題が今も続いています。

紙をつくるための植林木は、5~6年で伐採できるアカシアなどのとても成長の速い木で、植林地はそうした単一の樹種ばかりを植えた、自然の森の環境とは全く異なる環境になります。

トラ、ゾウ、オランウータンなど、絶滅の危機にある野生生物のすみかである熱帯林を破壊してつくられる植林木の森は、豊かな生物多様性を激しく損なうばかりでなく、伝統的に森に住み、水や食料などを得てきた先住民族や、もしくは森の周辺にすむ人々の暮らしも脅かします。

実際に、製紙会社や原料調達を行なう伐採企業と、森の恵みを利用してきた地域住民との間では、争いが起きています。

関連情報

製紙用の植林地として使用するために自然の森が大規模に伐採された跡地。(インドネシアスマトラ島)

自然林皆伐後につくられる植林地(手前)、奥に広がるのが自然林。製紙原料用の広葉樹は5~7年で収穫される早生樹で、自然の森の環境とは異なる。(インドネシアスマトラ島)

スマトラ島中部にある製紙工場と木材置き場。ここから日本を含め、世界中に紙製品が輸出される

森林認証制度、FSCとは? 森を守るマーク

こうした紙をめぐる問題が起きている中、どのようにすれば環境や社会に配慮してつくられた紙製品を確認し、選ぶことができるでしょうか?

店頭に並ぶ紙製品を見たり触ったりしても、それを区別することはできません。

そこでWWFは、森を守りながら利用を続けられるよう、また消費者がそうした森から生産された製品を選ぶことを可能にするため、FSC(R)(Forest Stewardship Council(R):森林管理協議会)の森林認証制度の普及に取り組んできました。

1993年に発足したFSC は、木材を生産する森林と、その森林から切り出された木材の流通や加工の過程を認証する制度を管理する国際的な機関で、その認証は森林の環境保全に貢献し、地域社会の利益にかない、経済的にも継続可能な形で生産された森や製品に与えられます。

消費者はFSCのマークが入った製品を選択することで、世界の森林保全を間接的に応援できる仕組みになっています。

この森林認証制度は、定められた基準を満たしていると思う事業者が自由にFSCマークを付けられるのではなく、「認証機関」と呼ばれる客観的な立場にある第三者の審査員によって審査を受け、基準を満たしていることが確認された場合のみ、マークを付けることができる制度になっています。

つまり製紙会社などが、「私たちはきちんと環境に配慮しています」と一方的に主張するだけでは、FSCのマークは付けられないのです。

関連情報

関連サイト

FSC認証林の例。FSCでは、環境・社会的価値を調査し、その価値を守りながら植林地を経営することが定められている。そのため自然林と植林地がモザイク状に広がって見えることがある

自然林の環境への配慮は、多くの野生生物の保全にもつながる。

広まる「持続可能な紙利用」

森林に限らず、資源の持続可能な利用に関する生産者の関心や責任意識、または消費者やNGOからの持続可能な製品を求める声は、これまでになく高まっています。

そうした中、日々のビジネスや暮らしに欠かせない紙の利用を、より環境や社会に配慮されたものにしようと、具体的な取組みを見せる企業も徐々に増えています。

その一例が、2013年11月に発足した「持続可能な紙利用のためのコンソーシアム」です。

このコンソーシアムは、紙の利用について先進的な取組みを行なう日本の企業7社が、環境や地域社会に配慮した紙の利用が社会全体で拡大、浸透することを目指すものです。

一企業や一組織の力は限られていますが、異なる専門性を持つ組織が協働することで、単体の企業や組織にはない影響力を持つことが可能となり、また最終消費者に近い企業がこうした取組みに参加することで、一般消費者への普及啓発にもつながることが期待されます。

WWFジャパンも、生産者も消費者もともに協力して、社会全体を「持続可能」なものにしてゆけるよう働きかけを継続していきます。

関連情報

FSC認証を受けた木材製品

人と自然が調和して
生きられる未来を目指して

WWFは世界約100か国で活動している
環境保全団体です。

PAGE TOP