油汚染から水鳥を救う リハビリテーター講習に参加して


先日、以前から個人的に関心のあった、野生動物の『油汚染リハビリテーター』の講習を受講しました。

これは、北海道札幌市内で、野生動物リハビリテーター協会の主催で行なわれたもので、特に海洋での油汚染により保護された水鳥の救護・野生復帰をお手伝いするためのものです。

油汚染とは、船の事故で燃料や積み荷の石油が流れ出し、周辺の海域を汚染する海の環境問題。

講習の資料より。油の付いた状態がいかに酷いがわかります。

水鳥の身体にこの油が付くと、羽毛の間に空気を溜めることができなくなるため、水に浮いたり、体温を維持できなくなります。

また、羽をクチバシで整える時に飲み込んだりすると、肝臓などの内臓が疾患を起こします。

まさに生死にかかわる脅威です。

講習では、まずこうした油の毒性や鳥の体への影響や、油汚染現場での救護体制について講義を受けた後、鳥の洗浄実習に取り組みました。

まず、オオハクチョウの羽に実際の事故で流れ出た油(C重油)を付着させ、中性洗剤と毛の柔らかい歯ブラシ・綿棒を用いてこれを洗浄。

擦るというよりは、泡に油を吸わせるようにして少しずつ油を取り除いて行くのですが、これがなかなかきれいになりません。

さらに、洗浄作業は鳥にとっても相当な負担になるため、実際の現場では、1羽の洗浄時間は1日30分と決められているそうです。

こうしたところにも、救護の大切な心得があることを教えてもらいました。

小刻みに歯ブラシを震わせて泡で汚れを吸い取り、また新しい泡を付ける、それを20分ほどひたすら繰り返しましたが、出来上がりは次の写真の通り。

まるでペンキのようなドロドロとしたC重油が如何に洗浄しにくいものであるかがよく分かりました。

この油汚染、過去の大規模なタンカー事故などでは、10万羽単位で水鳥が死んでしまった、悲惨な事例もある上、多年にわたって被害と影響を海の環境に及ぼし続けます。

事故が起きた後の迅速な救護も重要ですが、まずは事故が起こらないようにすること。

加えて、原油の多くを輸入に依存する日本にとって、例え海外で起きた油汚染事故であったとしても、決して他人ごとではないのだと強く認識させられた講習会でした。(IT担当 谷野)

スペインでの油汚染で救護されるカツオドリ。油汚染の影響は、魚やエビなどの甲殻類、海岸の土壌生物など、生態系全体におよびます。

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