日本企業6社が「太平洋クロマグロ保全の誓い」を発表


太平洋の海洋生態系において食物連鎖の頂点に立つクロマグロ。日本をはじめ沿岸諸国にとっては、重要な漁業資源でもあります。しかし、過剰な漁獲が続いた結果、資源量が過去最低の水準と言われるまで減少。深刻な枯渇の危機が懸念されています。そうした中、水産物の流通にかかわる日本企業6社が、太平洋クロマグロの保全と持続可能な利用を支持する声明を発表しました。太平洋クロマグロの主要な生産国であり、消費国でもある日本での、関係企業によるこうした意思表示は、今後の資源管理に向けた国際交渉を後押しする力としても注目されます。

太平洋クロマグロの危機と国際交渉の行き詰まり

現在の太平洋クロマグロの資源量は、過去最低の水準とされており、漁業が開始される前と比較して、わずかに2.6%しか残っていないとされています。

この状況を改善するため、2つの国際的な漁業管理機関、「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」と、「全米熱帯マグロ類委員会(IATTC)」では、太平洋クロマグロの漁獲に携わる関係各国の代表が集まり、多年にわたってその資源管理の改善をめざしてきました。

しかし、現状ではこの政府レベルでの交渉は成果を出せていません。

太平洋クロマグロの長期的な資源管理方針を策定することと、その基準値の設定や、漁獲証明制度の導入といった、改善案についての議論を進めることについては、WCPFC、IATTCのいずれでも合意されていますが、それをいつ、どのような形で実現するかについては、いまだ具体的に取り決められていません。

こういった状況が続けば、過去最低水準にある太平洋クロマグロの着実な資源回復は期待できません。

日本企業による「太平洋クロマグロ保全の誓い」

そうした中、太平洋クロマグロの主要な漁獲国・消費国である日本の水産物取り扱い企業6社が、2016年11月30日、「太平洋クロマグロ保全の誓い」を発表。

企業が共同し、自ら適切な資源管理を支持する意思を表明しました。

この意思表明には、水産業者や商社、卸売り業者、そして小売店など、さまざまな業態の関係企業が参加。

漁業者などが中心となってこうした資源管理を訴える例は過去にもありますが、今回のようにマグロの生産現場と消費者をつなぐサプライチェーン上で、それぞれ役割を担う日本企業が、持続可能な漁業管理を共同で求め、自発的に声明を発するのはおそらく初めてのことです。

また同時に、各国政府の政策とは異なった立場から持続可能なマグロ漁の実現を求めるこの声明は難航する政府レベルでの交渉を後押しする、画期的な取り組みといえるでしょう。

過去には、一時、枯渇が懸念されるほど資源量が減少していた地中海のクロマグロについて、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)が厳しい資源管理を推進し、漁業に関係する企業もこの方針を守る取り組みを行なった結果、現在ではその資源量が回復しつつある例があります。

太平洋でも、資源を獲り尽くさないよう配慮した「予防原則」に則り、長期的な資源回復計画を策定するなど、適切な保全措置が早急に導入され、マグロを実際に扱う企業の協力が実現できれば、太平洋クロマグロについても今後の回復が期待されます。

WWFは、今回の「太平洋クロマグロ保全の誓い」が、2016年12月5日から9日まで、フィジーで開催されるWCPFCの第13回 年次会合での交渉にも、良い兆しをもたらすものとして、各社の取り組みを評価するとともに、今後の取り組みにも大きく期待を寄せています。

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