「石垣島サンゴ礁守り隊2013」企業ツアーの受け入れを実施
2013/07/26
2013年7月6日~7日、沖縄県の石垣島白保にあるWWFサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」では、住友生命保険相互会社のヒューマニー活動「石垣島サンゴ礁守り隊2013」の受け入れを行ないました。ご参加いただいた皆さんには、世界最大級ともいわれるアオサンゴ群落の広がる白保の海での観察会をはじめ、サンゴ礁の保全ボランティア活動などにご参加いただきました。
2012年に続き2度目となる従業員ツアー
2008年よりWWFサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」では、「地域住民主体のサンゴ礁保全と資源管理に向けた持続可能な地域づくりプロジェクト」の推進にあたり、住友生命保険相互会社から活動資金のご支援いただいています。
このプロジェクトでは現在、地域の住民の方々を主体とする新たな市民団体(NPO法人)を地元で立ち上げ、地域での保全活動のコーディネーターの育成や、住民による環境モニタリング調査、資源増殖への取り組み、子どもたちへの環境教育を進めていくこととしています。
また、サンゴ礁をはじめとする地域の自然環境の保全と、持続可能な地域資源の活用による地域活性化の両立を図るためにエコツーリズムの推進や地域物産の開発・販路開拓にも取り組んでいます。
今回実施された「石垣島サンゴ礁守り隊2013」は、住友生命のヒューマニー活動20周年企画の一環として開催された2012年10月のツアー続く2度目の企画です。
全国から集まった19名の同社職員およびご家族の皆さん、そして、18名の住友生命沖縄支社八重山支部の皆さんが参加したこのツアーでは、世界最大級ともいわれるアオサンゴ群落の広がる白保の海での観察会や、サンゴ礁保全のボランティア活動に取り組みました。
「石垣島サンゴ礁守り隊」の皆さんは、まず7月6日の午後に「しらほサンゴ村」のセンターに集合。白保地域の方々が新たに立ち上げたNPO法人「夏花」理事長からの開会の辞の後、「夏花」事務局長から白保の海と世界的に知られるサンゴ礁のレクチャーを受けました。
そして、「しらほサンゴ村」のスタッフから、住友生命からのご支援がどのように現地のプロジェクト活動に活かされているかを説明しました。
続いて、「しらほサンゴ村」を出て、「夏花」理事長の案内で白保の浜や街並みを散策。サンゴ礁地形や津波石で囲った白保船着き場などの説明、集落内にある神聖な場の「御嶽(ウタキ)」や伝統的な街並みの解説がありました。
赤土の流出をくいとめ、サンゴ礁を守る
その後、バスに乗って、一行は月桃(げっとう)植えの現場へ。
この月桃植えは、前回と同様、今回の「石垣島サンゴ礁守り隊2013」による、サンゴ礁保全のための主なボランティア活動の一つです。
雨の降った畑から海へと流れこむ赤土は、海の環境を悪化させ、サンゴを減少させる大きな要因の一つとなります。ショウガ科の植物でしっかりと根を張る月桃を「グリーンベルト」として畑の周囲に植えることで、赤土の流出をくい止め、サンゴ礁の海を保全するのです。
前回の月桃植え活動は、大きく育った月桃の地下茎を掘り起したものを苗として植えたのですが、月桃が繁茂するには長い時間がかかることもわかっていました。
そのため、種から育てた苗の方が早く成長するのではないかとの推測のもと、2012年秋以降、地元では種からの苗づくりに挑戦しています。
実は、この種から月桃を育てる試みは、前回の同社のツアーからスタートしました。前回、ボランティアとしてのプログラムの一つとして、月桃から種を取り出し、栽培用に種をまく取り組みを行なったのです。
この時の月桃の種は、その後、芽をだし、地元の白保中学校で育てられて、2013年3月に京都からやってきた修学旅行生たちの手によって植樹されました。
今回、ツアー参加者の皆さんが植えた月桃の苗は300本。作業には八重山支部の皆さんも合流し、小さな鍬で穴を掘って、一つ一つ、丁寧に植えつけていきました。所々に土の固い場所もあり、なかなか穴が掘れないなど悪戦苦闘しながらも、チームワークよく全ての作業を終えることができました。
また、終了後の帰途に、前回のツアーで月桃を植えた現場の確認も行ないました。残念なことに、台風によって一部の苗が流されていましたが、もちろん生き残った苗もあり、前回と今回の両方にご参加いただいた皆さんは、複雑な思いを抱きつつも、保護活動の現実として受け止めてくださいました。
その夜は、地元の物産展「白保日曜市」のおばぁたちが、自慢の腕を振るったご馳走が並ぶ交流会。
サンゴ礁と密接に関わった暮らしの文化を今に受け継ぐおばぁたちが考えたお弁当「カナッぱ弁当」は、この春、開港した新石垣空港開港記念として催された「八重山弁当グランプリ」で金賞を受賞しましたが、夕食会では、この「カナッぱ弁当」が皆さんに供されました。
他にも、月桃や糸芭蕉の葉に盛り付けられた、地元でとれる海の幸、山の幸、お惣菜が並び、地元の食材をふんだんに使ったおばぁたちの味に、皆さん大満足していました。
白保日曜市のおばぁたちによる郷土芸能や、住友生命八重山支部による八重山舞踊、しらほサンゴ村スタッフの踊りなども披露され、賑やかな夜となりました。
待ちに待ったシュノーケル観察
翌7月7日も快晴。
この日は、待ちに待ったサンゴ礁でのシュノーケル観察会です。
特に、前回のツアーでは天候に恵まれず、このシュノーケル観察会が実施できなかったため、前回に続いて参加された皆さんにとっては、待望の観察会となりました。
まずは、各自の用具を装着、手にして浜辺へ移動。白保魚湧く海保全協議会のシュノーケルガイドの皆さんの指導で浅い場所でシュノーケルの使い方を練習した後、船でシュノーケルポイントとなる深い場所まで移動しました。
船上では危険生物についてのレクチャーを受け、気持ちを少し引き締めます。そして、いよいよ世界最大級のアオサンゴ群落を擁した白保の海へ。
目の前に広がる数々の色や形をしたサンゴ、そして魚たち。また、資源増殖に取り組むシャコガイの放流現場もしっかりと確認できました。
この白保の海に、どんな自然が広がり、どのような命が息づいているのか。そしてなぜ、この海を守る取り組みを行なわねばならないのか。
企業や多くの個人のサポーターのご支援のもと、WWFが白保の皆さんと共に、長年にわたって取り組んできたサンゴの保全活動の意味と価値とを、共有していただくことができました。
2時間近くにおよんだ、この海でのシュノーケル体験。参加者の皆さん、大満足の観察会となりました。
月桃商品の製造体験とビーチクリーン
昼食で「白保日曜市」の特製メニュー、ソーキそばと沖縄風炊き込みご飯のおにぎりをいただいた後、参加者の皆さんは、月桃のグリーンベルトを促進するために開発した月桃デオドラント「sarminサーミン」の製造を体験しました。
月桃からは、その香りを利用したフローラルウォーター(芳香蒸留水)を作ることができます。「しらほサンゴ村」では、住友生命のご支援により、その設備を導入しており、実際に目の前で作ることができます。
まず、月桃の葉や茎を細かくカットし、洗浄した後、蒸留器にセット。フローラルウォーターを抽出します。
抽出が終わるまでの間に、白保海岸のビーチクリーンも実施。
ゴミを袋に集めた後の選別作業の手間を省くため、袋ごとに集める種類を定め、ペットボトル担当、漁具担当、といった役割分担の上で取り進めました。
炎天の下での清掃作業ということもあり、約30分という限られた時間での実施となりましたが、集中して取り組んだ結果、山のような漂着ゴミを回収することができました。
その中には、島外や海外などからのゴミも含まれており、地域や国境を越えてもたらされる、海の環境問題の現場を垣間見る機会となりました。
月桃の蒸留も無事に終了。参加者の皆さんには、一人ずつ、オリジナルの青いボトルにフローラルウォーターを詰めて、今回のボランティアの記念にお持ち帰りいただきました。
地域主体の「里海」づくりを進めるために
わずか二日間でしたが、ツアー参加者の皆さんには、ボランティア活動を含め、とても濃密で多彩な体験をしていただきました。
サンゴ礁の保全、と一言でいっても、現場の活動が持つ側面はさまざまです。
この海と共に生きてきた、地域の人たちの暮らしと知恵。それを活かしたこれからの未来に向けた取り組みは、白保の海の保全にとどまらない、世界各地で求められている人と共存した海の姿、いわゆる「里海」の確かなモデルでもあります。
今回のツアーでかかわり、また参加いただいた、地元の直売市である「白保日曜市」をはじめ、月桃を使った赤土の流出防止、またその派生製品であるフローラルウォーターの生産なども、そうした取り組みの一つの形に他なりません。
WWFにとっても、こうした活動をご支援いただいている会社の関係者の方々に、実際の現場を見、体験していただけたことは、貴重な機会となりました。
とりわけ、わずか1年にも満たない間に二度のツアーの両方に参加し、現地に足を運んでくださった方が多数いらしたことには、WWFスタッフも感謝の気持ちでいっぱいでした。
前回から今回までの間に、白保地区ではNPO法人「夏花」が設立されるなど、保全活動にも新たな展開が見えています。白保のサンゴ礁の保全と持続可能な地域づくりに取り組む、このNPO法人の皆さんにとっても、全国各地から多くの職員の皆さんが白保の保全活動に参加してくださったことは、本当に心強いことです。
今後もWWFサンゴ礁保護研究センター「しらほサンゴ村」では、活動をご支援いただいている企業の皆さまとも連携しながら、NPO法人「夏花」への支援を通じた地域コミュニティによる海とサンゴ礁の保全のためのモデルである「"里海"づくり」に取り組んでゆきます。