目撃者の証言:突然荒れ始めるサンゴの海


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アジア(インドネシア):リフィ・ハムダニさん

インドネシアの東カリマンタンで、ダイビングのガイドをしているリフィ・ハムダニさんは、最近海の天気が読みにくくなってきた、といいます。突然訪れる波の荒れは、海水を濁らせ、ダイビングが楽しめなくするばかりか、ガイドやツアー客の命を危険にさらすおそれもあります。リフィさんは、だんだん水中ツアーの運航が難しくなってきています。

インドネシアの海からの証言

私はリフィ・ハムダニといいます。31歳です。インドネシアの東カリマンタンにあるデラワン島(Derawan Island)に住み、2002年から、マラチュア・パラダイス・リゾート(Maratua Paradise Resort)のダイビングガイドとして働いています。最近ここでは、天気が予測しにくくなり、水中ツアーの運航が難しくなってきています。

リフィ・ハムダニさん
(c)WWF-Indonesia / Marco Astan

変わりやすく予測不可能な天候

サンガラキ(Sangalaki)、デラワン(Derawan)、マラチュア(Maratua)、カカバン(Kakaban)といった島々の周辺には、20ほどのダイビングスポットがあります。

私の観察では最近、こうした場所の天候が安定せず、予測が難しくなりました。例年、7月中旬から9月中旬にかけて、うねりが強くなる(うねりとは、季節風などのために遠くから伝播する波のこと)時期がやってきます。ところが、今はそれが変わりつつあります。2010年は、大きく強いうねりがいつもより早い時期から発生し、他の月にも発生するようになりました。

天候が変わりやすく、予測不可能なので、私たちのところに来てくれた観光客の要望に応えられないことがあります。
たとえば、あるダイビングスポットで、数日間は雨が降ったり、強い海流が発生したりしないだろう、と予測したにもかかわらず、雨や強い海流が起こって水中の視界が浅くなり、観光客がダイビングをすることが難しくなってしまう、ということがありました。
そういう場合、私たちは別のスポットを探さなければなりません。
計画通りにいかないと、水の透明度が高く、海流がそれほど強くない場所を新たに探すために、船の燃料を余分に使わなければならなくなります。この結果、運営コストがかさんでしまいます。

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リフィがダイビングガイドとして働いているマラテュア・パラダイス・リゾート

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突然変わる天気

さらに、天気が突然変わるようになり、私たちのようなガイドと観光客のリスクが高くなっています。
例えば、ダイビングしはじめた時は天気がよかったのに、まだ水中にいる時や、ボートに戻ろうとした時に、突然天気が悪くなるケースです。

幸いにも、これまでのところ、特に大きな損害は被っていません。
しかし、このまま天気が突然変わるようなことが続き、天候が安定せず、予測不可能な状態が続くと、水中ツアーは非常に大きな損失を被ることになるでしょう。

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ダイビングスポットの海

WWFインターナショナル/ホームページ掲載日:2010年6月12日
Climate Witness: Rifi Hamdani, Indonesia

科学的根拠

ヘル・サントソ(Heru Santoso)博士 TroFCCA(熱帯林と気候変動適応)研究 インドネシア

この目撃情報は、気候に関するものと考えられる3つの自然現象を伝えている。土地の侵食の進行、高波、天候不順である。たとえば、土地の侵食の進行は土地利用の誤りによるものであるとすることもできるし、より大きな高波は地域的な地盤沈下が継続していることによるものとすることもできるなど、気候に関係のない要因もこれらの現象を引き起こす元となっているということはできるだろう。しかし、3つの異なるすべての地点で、人々はうねりの強さが増していること、また今まででは考えられない天気の変化で彼らの村の生活環境が維持できない出来事が増えてきていることを観察している。

この特定の地域で観測された現象が、気候変動に関係するかどうかを報告する科学文献は非常に少ない。この地域はスラウェシ海・スールー海に面していて、大西洋からインド洋にかけての海流の通り道になっている。ベラウ地域(Berau area)で大きくなっている高潮は、ラニーニャ現象の期間中大西洋で海面が上昇することと関係があるかもしれない。ラニーニャ現象は近年、以前より際立つようになってきており、地球温暖化がこの気候メカニズムの程度を大きくしているのではないかと思われる。(三村、2007年)

同じ理由で、天候不順や、突然変わる天気も顕著になってきている。通常、2つの地域間で気圧が大きく異なる場合に強風が発生し、その強風の速度に伴って天気が変わる。著しい暖気、特に暖まりやすい地上のエリアでは、気候が暖かくなるにつれてこの強い気圧の差が急激に作り出されやすくなる。地上を覆っていた森林がなくなったり、著しく減少したりした場合に、地面はより暖まりやすくなる。普段は東インドネシアから東寄りの風が吹くが、南寄りの定期的な強い風が吹かなくなる月(これを「未亡人月('widow month')」という)には、北方向のアジアに向かう季節貿易風が吹く。地球温暖化や局地的に気温が上昇することは、地域単位か、より狭い範囲のエネルギー集中の分布を変えてしまうおそれがあり、また大気循環の規模や範囲も変えてしまう可能性がある。

したがって、地球温暖化により、目撃情報で報告されたような自然現象が再現する傾向が増えてきていると思われる。しかし、この地域で、他の気候の変化に比べて、地球温暖化が気候メカニズムをより極端にさせていることは、極めて立証しやすい。例えば、ラニーニャ現象の期間中は、東からの海流が温かい水を西に送り、通常、雨が多く降る。このメカニズムで説明できる、ベラウ地域(Berau area)の高潮は、この現象期間中の降雨データ、理想的には長期の観測データによっても立証される。

全ての記事は「温暖化の目撃者・科学的根拠諮問委員会」の科学者によって審査されています。

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