目撃者の証言:吹く季節が変わった恵みの風


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アジア(マレーシア):クリス・コンさん

マレーシアのサバ州でカニ漁を営んでいるクリス・コンさん。モンスーン(季節風)の吹く季節が、海の恵みであるワタリガニのシーズンです。しかし最近、気候が変わってモンスーンの時期がずれ、しかも短くなりました。雨期の雨は激しくなり、海には陸から土砂やプランテーションの肥料などが流れ込んでいるといいます。コンさんは、減り続けているカニの水揚げに、頭を痛めています。

マレーシアの海からの証言

私はクリストファー・コンといいます。56歳です。生まれは、マレーシアのラブアン島。2000年からは、サバ州にあるクダットという町に住んでいます。クリス・シーフードというカニ漁会社のオーナーをしていて、漁船を持っており、西南モンスーン(季節風)の季節に、タイワンガザミというワタリガニの一種(Portunus pelagicus)を獲って生活しています。

クリス・コンさん
(C)Christopher Kong

干ばつと洪水

私の事業は、モンスーンの時期だけにやってくるこのカニだけが頼り。ですので、季節について注意深く観察するようになりました。

タイワンガザミが強い風と海流に乗って南シナ海からクダットにやってくるのは、毎年8月中頃から11月にかけて。モンスーンが吹く頃です。十分に成長した大きさのカニは、この時期にしかみられません。

ところが、最近の乾季に、全くといっていいほど雨が降らないようになり、干ばつ状態となって、クダット地域では水不足が起きるようになりました。暑い日も多くなっており、私は以前よりもエアコンを頻繁に使用するようになっていることに気づきました。

逆に、モンスーンの時期になると、風が強く、雨が以前に増してとても強く激しく降るようになりました。
2008年の11月から12月にかけてのモンスーンには激しい雨が降り、クダットで洪水が起こりました。この時には、隣のサラワク州のミリ(Miri)という町でも洪水が起こり、多くの人が亡くなりました。

モンスーンの期間の長さが短くなったことに、私が気づき始めたのは、4年ほど前のことでした。モンスーンの始まりが遅くなったのです。これまで12月は漁が暇になる時期でしたが、今では1月中旬から2月が暇になっています。

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マレーシアの海

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侵食が続くバクバク・ビーチ

原因はモンスーンの変化?獲れなくなったカニ

2005年以前、モンスーンは8月中頃から11月にくるのが普通で、それぞれの仕掛けにタイワンガザミが200~300グラムほどかかり、豊漁でした。

ところが2006年、モンスーンは11月から12月の間だけとなり、1つの仕掛けに100グラムほどしか入らなくなりました。そして、2007年になると、モンスーンは11月中の3週間で終わってしまい、収穫はわずか30グラムになってしまいました。

クダットのマルドゥ湾では、毎日漁船が小さな網を使ってエビのトロール漁をしていますから、クダットの海にカニがいるのであれば、一年中トロール網にかかるはずですが、全くかかりません。

カニの漁獲量が減少しているのは、獲りすぎではなく、西南モンスーンの季節が変化し、不規則で短くなっているからだと私は信じています。
モンスーンの時期が変わって期間が短くなったために、以前のようにたくさんのカニが南シナ海からクダットまで来なくなったのです。

私のカニ事業は漁獲高減少により影響を受けています。漁獲量が少ないだけでなく、漁獲量の予測が困難なので、需要を満たすことが出来なくなり、2008年12月には米国市場へ輸出しているフィリップス社の工場とのカニ販売契約を解消することになりました。

また、沿岸に寄せる潮も、だんだん高くなってきています。
タンジュン・アゴン(Tanjung Agong)地域のバクバク・ビーチは、幹線道路から9メートルほど離れていましたが、この10年で道路のすぐ横にまできてしまいました。2.2メートルほどだった最高水位は2006年から上昇を始め、今では2.4メートルになっています。

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魚を水揚げするセンヘン(Seng Heng)桟橋。1990年代に桟橋が建設されたときには、海水は桟橋より低かったのですが、最近では、海水に浸かることが多いといいます。沿岸の家も壊され流されています。

将来の持続可能性

タイワンガザミなどの漁とは別に、クダットやサバでは林産品の収穫がとても早いことに気づきました。油ヤシのプランテーション(植林地)には、あまりにも多くの行為が認められすぎています。

そして、サバ州の川や海は、こうしたプランテーションから流れ出す、化学肥料や除草剤で汚染されています。
雨が激しく降ると、マルドゥ湾の海水は流出した堆積物と侵食で茶色く濁るほどです。

政府は、持続可能性を確保するために林業や漁業を規制するべきです。
木は成長するには30~40年かかりますが、自然の海の資源はわずか1~2年で回復します。

トロール網の大きさなどを適正に規制し、幼魚を捕らないようにすれば、漁業はそれほどひどい状態にはならないはずです。
魚を捕るためにダイナマイトやシアンを使ったりする破壊的な漁法も禁止されるべきだと思います。

WWFインターナショナル/ホームページ掲載日:2009年3月27日
Climate Witness: Chris Kong, Malaysia

科学的根拠

ポポ ウォン博士(Dr Poh Poh Wong)、シンガポール国立大学(National University of Singapore)地理学部

クリスさんの南西モンスーンの異常に関する観察は、南西モンスーンのやってくる時期が遅れたり、干ばつが発生したりなどマレーシアとサバにおける気候変動の検出可能かつ測定可能な兆候と一致しています。
タイワンサガミの収穫量の減少に関する観察は、気候変動が産卵や死亡率、増加などの個体群動態学に影響を及ぼす可能性を示すため、とても興味深いことです。しかしながら、この地域では、この減少の傾向を証明するような研究はなく、この収穫量の減少は、マルドゥ湾に流れ込む殺虫剤、肥料、堆積物などによる汚染が深刻化したものとも考えられます。また、センヘン桟橋の洪水は、0.2mの海面上昇よりも、地盤沈下が原因である可能性が高いと考えられます。

参考文献

全ての記事は「温暖化の目撃者・科学的根拠諮問委員会」の科学者によって審査されています。

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