目撃者の証言:島の暮らしを波が襲う


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アジア(インド):ジャミラ・ビビさん

インドのガンジス川河口の島でくらすジャミラ・ビビさんは、自宅の裏の海から突然押し寄せた洪水に見舞われ、暮らしと財産の多くを失いました。昔はなかったはずの高潮、そして堤防の決壊。どうすれば、この被害を止められるのか。ビビさんたち、島に生きる人々の苦悩が続いています。

ガンジス川河口に浮かぶ島からの証言

私の名前はジャミラ・ビビといいます。インドのラージナガール島で生まれました。30年ほど前に結婚して、夫が住むモスニ島に引っ越し、この島の西部で生活を始めました。夫は養殖用のエビを獲る仕事をしています。エビは近くの海で簡単に採ることができ、かつてはよい値段で売れました。

ジャミラ・ビビさん
(C)Arjun Mana/WWF-India

夫はずっと家族を一人で養ってきましたが、今では病気のためにあまり働くことができなくなり、日雇い労働者である息子の収入に頼っています。

私の家の後ろには古い堤防があるのですが、普段の潮の満ち引きで、これが間単に崩れてしまうとは思いもよりませんでした。突然堤防が決壊し、家屋や家畜、大切なものすべてを一瞬にして失った時のことは、今でもはっきり覚えています。

パニックと恐怖の一瞬

その日、私は庭に座って採れたエビを選定をしながら、数をかぞえていました。すると突然堤防が決壊し、海水がものすごい速さで流れ込んできたのです。水は、私たちの持ち物のほとんど全てを押し流してしまいました。私は息子の手をつかんでいるのがやっとで、娘はそばにある木につかまっていました。だいぶ時間が経ってから、ボートでやってきた近所の人たちに幸い救助され、その後15日間、私たち家族は臨時の避難所で生活しました。

堤防が決壊し、洪水になるたびに、島はいつもこのような状態になります。自分と家族を守ることで頭がいっぱいになり、その時のことを思い出し、状況を説明することはできません。
村は混乱しパニックに陥り、人や動物が水の中でもがいています。突然、何の予告もなしに全てが海水に飲み込まれようとしているときに、何をしたらよいのか、何にすがればよいのか、私たちは全く見当がつきません。
でも、確かなのは、一番被害を受けるのが、堤防の近くに住んでいる私たちのような人間だということです。

家の裏の堤防が決壊して海水が陸地に流れ込み、財産のほとんどを失ったジャミラ・ビビさん。今も日々の暮らしが脅かされている。
(C)Arjun Mana/WWF-India

高くなる波

この何年かで海面は上昇し、気温も上がりました。潮が満ちてくると波がとても高くなります。洪水の水位も高くなるため、とても危険です。サイクロンがきて雨が激しく降ると、この島の多くの村が大きな被害を受けます。
私は変化していく気候をここ数十年にわたって見てきましたが、なぜそうなるのか、どう対処すれば良いのか全くわかりません。

義父は、かつてはこの地域の海岸には、マングローブの森があり、鳥もたくさんいたと言います。しかし今では、森はほとんどが破壊されてなくなってしまい、鳥もほとんど姿を見せなくなりました。

世界最大の規模を誇るスンダーバンズのマングローブ林。絶滅が心配されるトラの最大の生息地でもある。ビビさんの島のように、伐採によって、森が危機にさらされていたり、消滅した地域も少なくない。
(C)Gerald S.CUBITT/WWF-Canon

事前に異常気象に備える手段がない

このような災害があっても、政府が援助してくれたことはありません。経済的な支援を受けたこともありません。私たちの家が海に流されてしまったとき、あるのは雨露をしのぐ屋根のある臨時避難所だけなのです。

どうしたら、このような海からの被害を止めることが出来るのでしょうか。
堤防が決壊することが事前に分かるならば避難できます。無学な私には、この島での暮らしを救う手だてを考えることはできませんが、堤防をもっと頑丈なものにして、海岸に木を植えれば、被害はもっと小さくできるのではないかと思っています。

WWFインターナショナル/ホームページ掲載日:2008年8月25日
Climate Witness:Jamila Bibi, India

科学的根拠

A.S.ウンニクリシュナン(A.S.Unnikrishnan)博士 インド国立海洋学研究所(National Institute of Oceanography) 海洋物理学部(Physical Oceanography Division)

インドのガンジス川河口に位置するスンダーバンズ(サンダルバンズ)地域は、地理的に、海面上昇や暴風雨の影響を受けやすい場所です。北部の沿岸地域は、ベンガル湾(Bay of Bengal)で発生する多くのサイクロンに襲われます。
ジャミラ・ビビさんが全てを失ったときは、サイクロン通過による非常に高い高潮があった可能性が高いと考えられます。
また、このガンジス川の河口デルタでは、地球温暖化による海面上昇に加え、地盤沈下も起きています。

ビビさんが目撃した影響は、海面上昇に関する最新の観察と深く関連しています。
Unnikrishnan, A.S. and Shankar, D. (2007). Are sea-level trends along the north Indian Ocean coasts consistent with global estimates? Global and Planetary Change, 57, 301-307.

全ての記事は「温暖化の目撃者・科学的根拠諮問委員会」の科学者によって審査されています。

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